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エピローグ 2 彼女にとっての特殊環境保全省     了


「うー……ごめんね。何て言うか、クラブって言うか、部活って言うか、同好会って言うか、サークルって言うか? そう言うのに入っちゃったのよ。実は……。だからね、放課後とかも一緒に遊べなくなっちゃう日とかもあるかも……」


 昨日昼休みに早退した事や、また夕方に降った豪雨に当てられてるんじゃないかという事を心配してくれていた千佳ちゃんと沙世ちゃん。


 私は何度も何度も二人に謝り、そして、本当はクラブでも部活でも同好会でもサークルでも無いのだけれど、如何せん説明しようの無い事なので、私は千佳ちゃんと沙世ちゃんに『特境省』絡みの事をそう説明するしか無かった。


 それでも、千佳ちゃんと沙世ちゃんは私のそれに了解の意を示してくれた。


「うーん、そっかぁ。でも、仕様が無いよね。私、ハルちゃんには好きな事して欲しいもん」と千佳ちゃん。


「へぇ、何かと思ったらそういう事か。うん、私も良いと思うよ。ハルにも積極性が出て来たって事だよ。高校女子の三年間は早いからねぇ、一年生の内にそう言うのを見付けられたのは凄く良い事だと思う」と沙世ちゃん。


 二人とも大人だなぁと、私はそんな風に二人を思った。


 もし立場が逆で、千佳ちゃんや沙世ちゃんが放課後に一緒に帰れなくなったり遊べなくなったりしたら、きっと私は悲しくて泣くかも知れない……。


「うん……、ごめんね? なんにも無い日があったらちゃんと二人に教えるから」


「あははっ、それじゃあ次のなんにも無い日はお茶会だね」


「……? 何でお茶会?」


 千佳ちゃんが言ったのに私は問うと、「『なんでも無い日』は『お茶会』って、相場は決まってるんだよ」と、それには沙世ちゃんが答えてくれる。


 二人の中の決まり事だろうか?


 良くは分からなかったけど、それが何だか可笑しくて、私は自然と口から笑い声が漏れてしまった。千佳ちゃんと沙世ちゃんも、私と同じ様に可笑しそうに笑ってくれた。


 それが登校して来たばかりの朝の時間帯。


 そして今は、打って変わって既に放課後。


「そんじゃ、もう出れるかい? 安西さん?」


 隣の席の奧海くんは私の支度を待ってからそう言う。


「うん、もう大丈夫。行きましょう」


 私がそう返事をすると、奧海くんは薄く笑ってから、私の前を歩き出した。


 昨日の一件以来、私は奧海くんに恋をしたかも知れない。


 良く良く考えたら、『特境省』に入るのも、それが理由かも知れない。


 全く以って不純な動機だ。


 だけど、今はその不純な動機でも構わない。


 いつの日にか、ちゃんと私も彼を守れる様になれるかも知れないと思うと、そして彼以外にも、他の誰かを『夏』を用いて守れる様になれるかも知れないと思うと、自然と顔はほころんでしまう。


「あぁ、そうだ」


 前を歩く奧海くんはそう言ってこちらを振り向く。


「今日もミスタードーナツ寄ってくから」


 そう言って、奧海くんは私に笑い掛けた。


 その笑顔は、きっと私にとっての今後の活力になるだろう。


「うん!」


 私は奧海くんの笑顔にそう言って、同じく笑顔を返した。






 ――因みにと言ってはなんだけど、それから三日後。キャッシュディスペンサーでお金を引き出そうと思い銀行に立ち寄ったところ、私の預金口座に全く身に覚えの無いお金が百五十万円程振り込まれていた。





 そこから更に三日後、そのお金が『特境省』の名義で振り込まれている事が分かった……。





 …………。







 …………怖くて使える訳が無かった。





  






                                   了











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