表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
太陽のギルド  作者: 三水 歩
太陽のギルド
98/115

アシュナード・ルーズベルト 二

     アシュナード・ルーズベルト 二


 「……で、そんなことのためにわざわざ私の部屋に、この変な爺さんを招いたのかしら」


 「そうむくれるなよ。まともにそいつと会ったことあるのなんて、お前くらいしか思いつかなかったんだよ」


 眠そうにぬいぐるみを抱き寄せると、ウルは半開きの目で、床に座る俺を睨み付ける。


 「……乙女の睡眠時間を削りにくるとは、やはり鬼畜ね……ロリに優しくないロリコンだわ」


 「ロリコン言うな。アッシュが勘違いしたらどうする」


 「その時は誤解が『解けないように』全力を尽くすわ」


 「努力の方向性おかしくねえ!?」


 深夜にウルの部屋にアッシュを招いたのは俺だ。件の白き者に該当する人物が、ウルの話に出てきたような記憶がある。

 そんな話をしたら、アッシュが是非にと頼み込んできて、渋々了承した、というわけだ。


 もっとも、事後承諾な上にいつも早寝早起きの彼女からしてみれば、いい迷惑だったわけだけど。


 「それで……ウル殿でしたか」


 「ウルでいいわ。老人に変にかしこまった言い方されたら気持ち悪いわ」


 俺もそうだが、ウルも初対面の人間に対しての警戒心は半端ない。敵意、とまではいかなくとも、アッシュについて面白く思っていないのは確かだろう。


 「では……ウル。例の白き者について、知っている限り聞かせてくれまいか」

 「……まあ、私も大した話は出来ないけれど」


 ウルはそう前置きをすると、かつて自分の身に降りかかった不幸について話し始める。

 俺はその様子を黙って聞き、アッシュもまた、真剣な眼差しをウルに向けていた。






 「……とまあ、こんなところよ。私が知ってるのは、それだけ」


 大した話じゃなかったでしょ? と、肩をすくめながら彼女は薄く笑う。


 「……正直、驚きました。奴がこうも、大胆な活動をしていたとは……そして……」


 なんと邪悪な。アッシュは憎々し気にそう吐き捨てると、座っていた椅子から立ち上がる。


 「つらい話をさせて申し訳ない、ウル……」


 「別にいいわよ。今はみんながいるから。平気」


 ウルは俺の方を見ると、ニヤッと意地悪く笑う。


 「私専属の下僕もいることだしね。寂しくないわ」


 「なんで俺を見るんだお前。ちょっとお前も床に座った方がいいんじゃないのかオイ」


 俺のツッコミを受けて、ウルは楽しそうにケタケタと笑う。俺は呆れながら、眉間を軽く揉む。


 「……仲が良いようで」


 「ええ。仲良しよ」


 「まあ、……否定はしない」


 「ふふ……変わられましたなあ、本当に……」


 アッシュはそうつぶやくと、部屋を後にしようとして、振り返る。


 「貴重な話を、ありがとうございますソル殿。では、良い夜を」


 「うん、おやすみ」


 「じゃあね、お爺ちゃん」


 そんなやり取りと微笑を交わして、アッシュは隠し部屋から出ていく。


 小さな隠し扉を四つん這いで、ほっ、とか、はっ、とか言いながら、何とか部屋を抜け出したようだ。




 「……ソル。気付いた?」


 「ああ。流石におかしいな」


 「よね。普通こんな夜中に、子供の話を聞きたがるなんて。明日にすればいいのに、それをしなかった。……相当の常識外れか……大慌てしてるかのどっちかよ」


 「接触してる感じだと、多分後者だな」




 アッシュは、白き者、アンノウンについての情報を血眼で探している。そう考えて間違いないだろう。

 彼は、結局今まで、アンノウンを探しているということしか明かしていない。その目的も、復讐をにおわせているけど本当かどうかも怪しいものだ。


 何もかも遅すぎる。先代が死んでから、何年もしてようやく犯人捜しだなんて。




 「……別の目的があるのかもね。それこそ、あの色白イカレ小僧に接触すること自体が、目的なのかも」


 「……ジャンに、探りを入れてもらおうか。あんまり仲間を疑うようなことはしたくないけど……」


 「しょうがないわよ。だってあのお爺ちゃん、胡散臭すぎるもの」


 不覚にも、ウルと同じ感想を抱いていたことに軽く吹き出した。


 「何笑ってるのよ、気持ち悪い」


 「いや、意外と俺達って、似た者同士だなあと思って」


 「……心外だわ」


 ウルは少しむくれて見せたが、すぐに笑顔になって俺の背中をバシバシ叩く。


 「ほら、いつまでここにいるのよ。さっさと乙女の部屋から出ていきなさい。居心地がいいのは分かるけど」


 「へ、すぐ出ていくよ。じゃあ、おやすみウル」


 「うん、おやすみなさい」
















 「……お前か。噂通り、ここにいたのだな」


 「……アシュナードか。何故お前がここにいる」


 「……私の、思った通りだ。白き者は、私が睨んだ通り『そういう存在』だったよ」


 「……誰かから話を聞いたのか」


 「ああ……。彼は、白き者は間違いなく竜教団の……」


 「……あまりベラベラと喋らない方がいい。どこで誰が聞いているかわからんぞ」


 「……『神の使者』だよ」


 「……」


 「ウルの話を聞いて、私は確信したよ。太陽竜は……願いを叶えてくれる。私達には、必要な存在……」


 「……それが望んでない結果を生むと……わかっていても望むのか?」


 「無論。彼の願いを叶える力さえあれば……」


 「……」


 「私の家族も……お前の家族も……全て元通りにできるだろう? ガルド・フェンサー」


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ