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太陽のギルド  作者: 三水 歩
光の欠片
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闇の中で

     闇の中で


 暗い。


 どこまでも続く闇。


 先の見えない暗闇。


 何も見えない。


 なのに、私は光を探している。


 こんな絶望の中で、私は光を求めている。


 希望があると信じている。


 いつか射すであろう、か細い光を。











 「不安?」


 白髪の子供が、私に話しかける。私は頭を上げ、声のする方を睨む。


 「睨まないでよ。君がそんなふうに壁につながれているのはボクのせいじゃないんだから。それどころか、こうして君が正気を失わないように、毎日おしゃべりしに来てるんだから。感謝してもいいんだよ?」


 少女とも少年ともつかない白髪の子供は、屈託のない笑顔で笑う。




 それが不気味で仕方なかった。

 どうして笑っていられるのか不思議でならなかった。

 こんなかび臭い牢屋の目の前で。

 こんな暗くて辛気臭い場所で。




 死体で築かれた山の上に座りながら。




 とにかく不気味で、場違いで。

 なんで子供がここにいる。

 そんなことを尋ねても、答えてはくれない。もう何度この子供に逃げるよう促し、助けを乞い、理由を尋ね、怒鳴り散らしても。この子供ははぐらかしてばかりで決して答えてくれない。


 そして今日。

 この惨劇だ。

 私を捕まえていた人間達を、わけのわからない力で皆殺しにした後、この子はずっと私の側にいる。

 何かを見ている。

 私の何かを。


 「さてと……素質があると思ったんだけどね。どうにも発動条件が分からないな」

 「……」

 「どうしたもんかな。自分の命の危機にも反応しない。心を守るためにも発動しない。ねえ、どうしたら君の『カルマ』を見ることができるんだい?」


 また『カルマ』か。

 私はうんざりしながら考える。

 何度考えても、そんな魔法は聞いたことはないし、そんな異能があるなんて私は知らない。

 そう、知らない。

 何度も言っているのに。

 この子供は耳を貸さない。


 「もしかして、君の『カルマ』……自分自身のためには発動できないのかな?」

 「……」

 「うーん無視か。嫌われてるねボク。まあいいか」


 その子は死体の山から下りると、牢の前をグルグルと歩きはじめる。


 「自分がトリガーじゃない。となると、おそらく大切な人の危機に発動するタイプなんだろうけど……君にはそんな人いないし……まあできればボクが君の大切な人になれればと思ったんだけどね……三年やそこらじゃ、そうもいかないか。そもそも、人に嫌われやすい性質だし」


 三年。そんなに経つのか。ここに放り込まれてから。すっかり時間の感覚なんて忘れてしまっていた。

 捕まってから、毎日この子供のわけのわからない話を聞かされてきたのか。我ながらよく我慢できたものだと思う。


 「よし、わかった」


 子供は立ち止まり、こちらを見てにっこりと笑う。


 「環境を変えれば、君自身にも変化があるかもしれない。そうしたら、何かの拍子に『カルマ』が発動するかもしれない」

 「……?」

 

 何を言っているんだろう? 環境の変化?

 少年はより一層笑みを深くすると、私にこう告げる。


 「君をここから出してあげるよ。まあ、ここより環境が良いとは限らないけどね」


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