第八話 例え中身は十二歳以上のBBAでも外見が幼女なら許されるどころか普通にアリ
模擬戦が終わったと同時に、第零科の面々は歓喜に包まれた。今まで学園の落ちこぼれ収容所でしかなかった第零科が正規の科に勝ったのだ。
その様子は都内全域に伝わり、第零科を知る者達にとってはかなりの衝撃的な出来事だった。
勝利した第零科には予算二年分が追加で与えられ、また普段の日々が戻ってくる事となる。
健太郎は今度はアケコンを使わずに普通の操縦を出来る事を目標に日々努力している。本人曰く、「せっかくロボットに乗るんだから操縦捍を
使いたい」との事だ。
実際に、アケコンを使った操縦は健太郎にとっては慣れた物であるが、本来の操縦法に比べると自由度は格段に落ちる。ディオーネのサポートがあれば何とかカバー出来るものの、いつまでもサポートを受けるわけにもいかない。
模擬戦に勝ったものの、特に学園生活が変わったらわけでもなく――――第零科は今も色々と言われながらも日々を過ごしていた。
とはいえ、模擬戦の後の日々は殺人的な忙しさの反動からかのんきにダラダラと過ごしていた。
そんなある日の事である。
この世界に来てからもはや健太郎のマイホームと言っても過言ではない第零科の物置小屋から出てきた健太郎は何となく第零科の敷地内をダラダラとサンポートしていると誰かが研究室にいる事に気がついた。
入ってみると、パソコンや機械だらけの部屋で一人キーワードを叩いているディオーネが見えた。
「ディオーネ?」
「けんたろー、どうしたの?」
椅子に座ったまま、くるりと健太郎の方に振り向いたその仕草に思わず健太郎はドキリとしてしまうが、それを悟られないように無難な事を聞いてみる事にした。
「えっと、何してたんだ?」
「MCDの研究と制作」
「それってもしかして、あの時の作りかけの?」
「うん」
健太郎がこの世界に召喚された日――――あの満月の日に月明かりに照らされながら鎮座していた、フレームも露出している状態で、予算の都合で開発が途中で打ち切られていたあのMCDだ。
「今回支給された《カリナス・カノープス》のデータを参考にして、元々あの機体の魔力融合炉に残されたデータに改良を加えたみた」
「へぇ......」
健太郎にとって画面に表示されているデータは一応何となく分かるものの、完全に理解は出来ない。
その後も特に会話が続かず、可愛らしく首を傾げるディオーネに一々ドキドキしながらもそれを悟られないように健太郎は無理矢理会話を続けた。
そもそも健太郎のこれまでの約十八年の人生においてこのような美少女と二人っきりになどなった事がないので会話を繋げる事ですら必死である。
「そ、そういえば、さ。ヘリオスたn......ヘリオス様って今いくつ? 七歳? 九才? それとも十歳? 個人的には十二歳未満が好ましいんだけど......」
「ヘリオス様はもう九百歳を越える」
「ェ......」
その衝撃的な出来事(健太郎にとって)に対してディオーネはさも当然のように思い出しながら淡々と事実を述べていく。
「確か今年で九百十八歳を迎える」
今の健太郎に、美少女と二人っきりという状況など、完全に頭から吹き飛んでいた。それを遥かに上回る衝撃的事実に対して頭をフル回転させる。
「あの外見で九百十八歳!? ファンタジー異世界だからってやりたい放題し過ぎだろ!」
「ヘリオス様の体は呪いを受けて成長が止まっている。だからヘリオス様は身体が成長しない。寿命も減る事がない。故に九百十八年も生きている」
「え? ちょっとまて、じゃあ何か? 見た目は幼女、中身はBBA? そりゃねぇぜとっつぁん!」
しかし、と、健太郎は一度頭のなかに永久保存したヘリオスの姿を鮮明にブルーレイ顔負けのハイビジョン映像で頭のなかに甦らせる。
(いやまて、よく考えろ。いくら歳は九百十八歳でもあのロリロリとした幼女と言うに他ならない未成熟なボディは紛れもない至宝......これは........................)
健太郎は迷いを断ちきり、ディオーネにサムズアップし、
「........................ナイス呪い!」
と、満面の笑みを見せた。
「それにしても九百十八歳の幼女か、全然アリだな。いや、むしろ最高だ。いつまでたってもあのロリボディのままなんてもはや神の域に到達していると言っても過言ではない。そもそも人間がおかしいんだ。どうして幼女は成長してしまうのか。何故、幼女はいつか成長して歳をくって年増になってしまうのか。俺達紳士はいつも《時間》という無慈悲な存在を恨み続けていた。だがヘリオスたんはそれを打ち破り、俺達紳士の理想、《永遠のロリ》にへと極限進化し、今まさに地球という名の無限のデータベースと繋が(ry」
「そういえば、けんたろーに伝えなければならない事があった」
健太郎の暴走にストップをかけたディオーネは机に置いてあった一つの開封済の封筒を健太郎に手渡した。
「......何これ」
「招待状」
端的にディオーネがそう言いはなったその封筒は、綺麗な金色のラインで装飾されており、中には一枚のガードが入っていた。
「太陽祭......?」
太陽祭とは、健太郎達のいるこのヒュペリオン王国の首都アポロンにて行われるイベントの事である。このイベントには民達も参加し、数多くの露店等で毎年多く盛り上がる。
中でも、毎年一般人の投票や審査員達の投票で上位三作品は最優秀賞、優秀賞、佳作、審査員賞などが決められ、この賞自体がヘリオスや民達から認められた名誉ある賞である。
毎年、これに出展するために数多くの人達が準備している。
更にこれは《露店部門》だけでなく、《MCD部門》がある。MCD工学部の生徒はこの太陽祭の為に毎年この時期から忙しくなる。
「へぇ......こんなのがあったんだな」
「......《MCD部門》には招待状が必要で、今年はその招待状が第零科にもまわってきた」
恐らく、今回の模擬戦での戦闘や技術力が認められたか、もしくはヘリオスが推薦してくれたかだろう。
「第零科に入って後悔はしていないけれど、私、今までずっと太陽祭に出てみたかった。出て、ヘリオス様やフレアにちゃんと認めてほしかった」
「そっか......よかったな」
「うん。健太郎にも、第零科の皆にも感謝してる」
ディオーネの始めてみるその微笑みに健太郎も思わず微笑んでしまう。
「そっか......じゃあ、えっと、俺は何も出来ないかもしれないけど......が、頑張ろうな」
「......うん、がんばろー」
次回予告的な何か
太陽祭に向けて準備に励む第零科。目標は《露店部門》、《MCD部門》の両部門制覇!
未完成だったMCDの完成に向けて動くディオーネ。そして健太郎は《露店部門》最優秀賞を狙って動く。
その秘策とは――――異世界版アーケードゲームと携帯ゲーム機の制作!?
次回から「第二章 太陽祭編」、スタートです。