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異世界落ちこぼれロボット学科  作者: 左リュウ
第三章 最終決戦編
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第一話 終結と集結

 海賊の撤退と共に、太陽祭が終結した。

 街は兵たちの奮闘も虚しく、大半が崩壊している。都市中に供給されていた魔力エネルギーも今ではそれを停止させている。

 生存者たちによる街の復興も、まだショックと混乱でそれが出来ないでいた。

 なんとか城の方へと兵たちが市民を誘導していく。城の方に市民たちが誘導されていく中、廃墟と化した街の中央に生存した機体たちが集まっていた。その中にはなんとか復帰したエルナや、フレア、ギル・ノーラン、ガルフォングもいる。

 そこに。

 赤と白のカラーリングが施された太陽を司る機体が舞い降りる。

 アポロン。

 まさに伝説とも呼ぶべき機体が、今、健太郎たちの目の前に降り立つ。背部のコクピットハッチが解放され、その場にいたパイロットたち――健太郎の知らないパイロットたちもいた――が固唾をのんで見守る。

 現れたのは、紅蓮の色の髪を持つ、長身の女性だった。健太郎から見てもかなり美人だ。

 その色の髪は、あの人物を知っているのならば誰もが思い当たるものだった。

「ヘリオス様......?」

 健太郎がポツリと呟く。

「うむ。ご苦労だったな、健太郎。みんなも」

「え゛......」

 健太郎の記憶の中にあるヘリオスという幼き少女はこんな女性的な姿ではなかった。そもそも一度、戦闘中にヘリオスという名前を聞いた時にはあまり信じられなかった。そもそもMCDの操縦をしようにも手足が届かないのだから。

 だが目の前の女性は自らの事をヘリオスと認めた。確かにこの姿ならば余裕で手足が届くだろうが、あの幼女がどうやってこんな魅力的な女性になれるのだろうか。

 そんな健太郎の疑問を読み取ったかのように、ディオーネがヘリオスに問う。

「......ヘリオス様、もしかして呪いを?」

「うむ。あの姿だと少々操縦が難しいのでな。呪いをいくつか解いた」

 ヘリオスは自らに呪いをかけて体の成長を止めている。ならばその呪いを解けば、体は成長させることが出来るという事だ。健太郎もそれをよみとったのか、落胆しつつも魔法の凄さを改めて思い知る。

「勇者の子孫たちよ」

 ヘリオスはこの場に援軍にかけつけたという、<勇者の子孫>たちに視線を向ける。

 健太郎も思わずそちらの方へと視線を向けてしまう。勇者の子孫。ディオーネから少しだけ話を聞いていた。過去に、この世界に召喚され、歴史を変えてきた勇者たち。その子孫。

 その血を受け継ぐもの。

「このヴァン・リヒトライド、ヘリオス様のお呼びとあらば、例えどんなところでもすぐに駆けつけますよ!」

 と、健太郎とディオーネのすぐ近くにいた朱色の髪をした青年が元気よく声を出す。そんな青年を隣にいた蒼い髪をした少女がじろりと睨む。

「そんな大声を急に出すな。ヘリオス様の前で」

「うっせえなぁ」

「うるさいとはなんだうるさいとは!」

「あァ!? だぁかぁらぁ~、お前の声がうるさいっつってんだよ!」

「貴様の方がよっぽどうるさいだろ!」

 ギャーギャーといきなり喧嘩を始める二人に驚く健太郎だったが、ディオーネからあの二人が勇者の子孫であることを聞くと更に驚く。とはいえ、ヘリオスが「また始まったか」というような表情をしていたのでこれは確かにいつもの光景なのだろうが、このままだと話が進まないし、誰も止めようとしないので仕方がなく止めることにした。

「あのぉ、そろそろお互い落ち着いて、」

『今忙しい!』

「はい......」

 元の世界では自宅警備員予備軍という立場にあり、この世界に来てからの生活で確かに自分は変われたと思っていた健太郎だったが、どうやらまだこの二人の間に割って入るのはまだ経験値が足りないらしい。

 と、喧嘩をしていたヴァンが「ん?」と言うと再びぐりんと顔を健太郎の方に向ける。

「お前か? <古代魔力炉エンシェント・マナドライヴ>搭載機に乗っていたっつーのは」

「<古代魔力炉エンシェント・マナドライヴ>搭載機って......<オリオン・ベテルギウス>の事、ですか?」

 年上(だと思われる)に加えて元自宅警備員予備軍だった健太郎にこの手のちょっと不良っぽいタイプの人間はどちらかというと苦手の部類に入るので反応もそれに応じたものになってしまう。

「そうそうそんな名前の。で、お前か?」

「えーっと、俺とディオーネの二人で動かしてます」

 言うと、健太郎は逃げるようにしてディオーネの方に視線を移す。ヴァンもその視線を追ってディオーネを視界に捉えた。

「二人、ねぇ。そのもう一人っつーのは......あれか。なんだ、女、か、よ......」

 それまで軽快に動いていたヴァンの口が止まり、そしてあんぐりとその大きな口を開ける。

「あ、あれ......じゃなくて、あのお方ですか?」

「? そ、そーですけど」

「お、お名前、は?」

「は?」

「あの方のお名前は?」

「で、ディオーネですけど......」

「ディオーネさん、か......」

 ぽーっとヴァンの瞳がディオーネに釘付けになっているのを見て健太郎はすぐに悟る。

 ――ああ、惚れたな。

 確かにディオーネは普段一緒にいる健太郎の目から見てもかなり可愛い。文句なしの美少女だ。学園にも密かにディオーネが好きだという男子は山ほどいる。実はファンクラブがあったりもしている。一目ぼれという男子など山ほどいるだろう。

 そんなヴァンが黙り、場がようやく静まったところで。

「っ!?」

 上空から何かが飛来してくるのが見えた。

 健太郎はまだこの時、知る由もなかったが上空から飛来する純白の機体は<オリオン・リゲル>と呼ばれる<古代魔力炉エンシェント・マナドライヴ>搭載機三号機である。

 それを知っているエルナは思わず目を見開き、「ライトさん?」と呟く。

 ライト・アバンズ。

 エルナの故郷であるノスタルジアのMCD研究所に所属していたテストパイロットである。

 アポロンのすぐ傍に、オリオン・リゲルは着陸し、背部のコクピットハッチを開ける。中から出てきたのはエルナの予想通り、ライト・アバンズだった。

「なんだぁ? アレは」

「資料を見ていないのか。あれも<古代魔力炉エンシェント・マナドライヴ>搭載機だ」

「へぇー。でもなんでその搭載機がここに来てるんだ?」

「私が呼んだのだ」

 と、ヘリオスが言う。

「これから行うことの為に、戦力がいるからな」

 その言葉にヴァンの表情が変わる。真剣な、戦いに身を置く者の表情かおに。

「っつーことは、やっぱりあれですか」

「そうだ。今しかない」

「?」

 二人の間にかわされる言葉の意味を理解しかねる健太郎は、何がなんだかわからない。今はただ、戦闘の時の疲れがどっと押し寄せていた。

「ここに集まってもらった皆に、参加してほしい作戦がある」

「作戦?」

 健太郎の言葉にヘリオスが頷く。

「デミウルゴスはダイダロスの手によって封印を解かれたとはいえ、まだ不完全だ。今ならまだ、私の<アポロン>で叩ける」

 その言葉の意味する事を、健太郎は理解した。

 ここにいる者たちに参加してほしい作戦。

 それは。


「このまま我らで撃墜チームを組み、デミウルゴスを追う。そしてやつを――破壊する」


 

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