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異世界落ちこぼれロボット学科  作者: 左リュウ
第二章 太陽祭編
18/38

第九話 強奪イベントはロボ物の定番

更新が遅れてごめんなさい。



これにも深い事情があるんです。



友達に勧められて見てみた∀ガンダムが予想以上に面白くて一気見してたからなんです。



決して悪気があったわけでは(以下略)



 太陽祭第一予選を勝ち抜いたからといって、そこで終わる分けではない。第一予選という名の通り、まだこの予選は一つ目でしかない。

 次に行われるのは二つ目、第二予選が始まる。


「チェック急げよ! 二時間後にはもう本番が始まるんだからな!」


 第零科のガレージでは、《オリオン・ベテルギウス》の追加装甲(コート)の換装作業が行われていた。漆黒の装甲が取り払われ、素体の上から新たなる追加装甲(コート)を装備させる。

 新たなる装備、《インバネスコート》とは丈の長いコートにケープを被せた物であり、袖有りと袖なしの物が存在するが、《オリオン・ベテルギウス》に装備された物に関しては前者である。

 MCD追加装甲用に適切化されたインバネスコートを装備されただけでなく、このコート専用の武装である小型遠隔操作情報収集用武装、《キッズドール》も六基登載している。尚、このコートでも《極光布(オーロラクロス)》は発動可能であり、このコート特有の能力も有している。

 しかし、この装備の性質上、三つのコートの中で最も調整に手間がかかる。

 特に小型遠隔操作情報収集用武装、《キッズドール》はかなり調整に手間がかかり、尚且つデリケートである為に開発時だけでなく開発後の調整にも手間がかかるのだ。

 第一予選は一日で全て終わり、次の第二予選は第一予選の二時間後に行われる。それまでに予選を突破したチームは第二予選に向けての機体調整を行わなければならない。

 第零科の場合は追加装甲(コート)の換装、そして頭部パーツの換装である。

 それ自体の作業は他のチームの機体と比べると比較的速く終了した。そもそもこの追加装甲(コート)の換装システムは戦場における様々な用途に対して柔軟に対応する為の物であり、素早い換装行動が求められる事を前提に開発されているようなので、換装は短時間で済ませるのがデフォルトになっているのだ。

 残るは機体チェックのみとなった。

 コックピットにて、健太郎とディオーネは機体チェックを行っていた。そんな二人に通信が入り、ホロディスプレイが展開する。通信の相手はエルナだった。


「第一予選突破おめでとう」

「そっちこそ、楽々突破したみたいじゃねーか」

「当然よ」


 第一予選では、エルナは余裕の一位でゴールした。元々機動力に優れていた《カトル・シャウラ》は、その性能を存分に発揮した故の一位だ(勿論、機動力を底上げする為に調整はなされていたが)。


「で、わざわざ何の要件だ? そっちだって忙しいはずだろ?」

「別に? 第一予選突破おめでとうっていいにきただけよ」


 エルナは視線をディオーネの方にへと移し、


「ディオーネ、ダイダロス=デミウルゴスって人、知ってる?」

「......貴族出身の研究者の?」

「そう、デミウルゴ家の跡取りの研究者の。私の元々いた研究所の研究者何だけど、あの人について何か知らないかと思ってね」


 ダイダロス=デミウルゴという聞き慣れない名前を聞き、つい健太郎は口を挟む。


「ん? 元々そっちにいたのならお前の方が詳しいんじゃないのか?」

「いや。こっちに来る前はここの街の研究所にいたらしいのよね」

「......確か、ヘリオス様が《カトル・シャウラ》開発の為に派遣した研究者のはず。その人がどうしたの?」

「ん。いや、例のあの事件に何か進展はないか、って連絡があったからね。元々ここにいたならディオーネと知り合いの可能性があるし、それなら連係もとった方が、って進展はありませんっていう報告と一緒に提案したのよ。そしたら向こうは「私の事なんか知らないんじゃないかな」って言ってたんだけどあの人、謙虚な所があるからね。嘘つきだし。ディオーネに面識はあるか確認をいれようかと思ったのよ」

「実際に会った事はない。だけどかなり凄い研究者だと有名。私が知っているのはこの程度だから連係は今すぐには取りにくい」


 例のあの事件、というのが何か健太郎には分からない。だが、それが何か今の時点で薄々分かりつつあった。

 恐らく強奪されたという《カトル・シャウラ》二号機がそれに関係している。健太郎が勘づいたのをエルナも悟ったのか、エルナはため息をつきながら、「調べたの?」と問い、健太郎も素直に「まあな」と答えた。

 だが健太郎からその返答を聞いた途端に、エルナの目が大きく見開かれた。《カトル・シャウラ》強奪事件については全体的な情報の封鎖が行われており、調べようにも手がかりは極僅かしか残されていないはずだ。あの時にディオーネと事件について少し会話をしたが、詳細を調べられる程ではない。


「何処まで知っているのかしら?」

「......事件の詳細ぐらいは」


 しかし恐らく健太郎は、その僅かな情報とエルナとディオーネの会話や発した言葉の端からヒントを得て、大まかな答えを得るまでに辿り着いたのだ。

 あの僅かな情報のみで事件の大まかな事を掴む。この情報収集能力を持つ者は恐らく国でもそうはいない。


(こいつ......ただ腕の良いパイロットというだけじゃない?)


 以前の健太郎ならばこんな芸当は出来なかっただろう。しかし、《オリオン》の新たなる装備を使いこなすにはこのパイロットの情報収集能力は必須の物で、これまで健太郎は太陽祭に向けての準備、魔術の訓練と並行して情報収集能力の向上に努めていた。


「一体どんな魔術を使ったのかしら。こんな短期間でそこまでの情報収集能力を身に付けるなんて」

「......努力?」

「そう。それはご立派な事ね」


 再びため息をつくエルナ。


「そうね、それじゃあ詳しく話しておこうかしら。あんまり言いふらしちゃいけないことになってるんだけど、もう調べちゃったみたいだし、そうと分かればアンタにも情報収集は手伝ってもらうわよ」


 そういうと、エルナは事件の事を語り始めた。




 □□□




 事件があったのは丁度三ヶ月前の事だ。

 その頃は第零科も《オリオン・ベテルギウス》が完成してすぐの事だった。

 遺跡から発掘された三基の古代魔力融合炉(エンシェント・マナドライヴ)の内、一つは第零科のディオーネの手に。そして残りの二基は別の場所に送られたが、残りの二基の内、一つが元々エルナのいた《ノスタルジア》の研究所に送られていた。

 そして第零科が完成させた《オリオン・ベテルギウス》の設計データを元に《オリオン》シリーズの二号機の開発が始まっていた。

 そんな《ノスタルジア》の研究所には三人のテストパイロットが存在する。

 一人はエルナ・ヴェノーラ。

 もう一人はライト・アバンズという青年。

 そして最後の一人が、つい最近この研究所に派遣されたヴァイス・サターンという青年だった。

 歳が同じという事もあってか、ライトとヴァイスの二人はすぐに仲良くなり、話をするのをよく見かけた。

 エルナもそれなりにヴァイスとはうまくやっていたが、次第にエルナはヴァイスに《憧れ》の感情を抱くようになった。

 エルナは《カトル・シャウラ》一号機、ヴァイスは《カトル・シャウラ》二号機を任され、ライトは《オリオン・リゲル》の正式パイロットになった。

 《カトル・シャウラ》の一号機と二号機はこの時点で装備に関しても機体に関しても違いはなく(ただの区別の為の便宜上のナンバリングであるが、後に改良によって違いを出す予定だった)それ故にテストにおいてはパイロットの腕によってその差が現れる。


 そしてその《差》を、エルナは目の当たりにした。


 幼き頃より《天才》と称されてきたが、ヴァイスに関してはそんな自分よりも遥かに実力は上だ。テストパイロットでありながら実践でも通用し、また、実践を想定された操作技術。

 幾度か模擬戦を行ったが、勝てる所か《良い所》まですらいけた試しがない。

 そんなヴァイスをエルナは尊敬し、目標とした。

 

 そんなある日。


 それは、起こった。


 夜。

 支度を済ませて、家族に見送られながら向かったいつもの研究所。

 昼に一度来たが、一旦家に戻って夕食を食べてから戻ってきたその研究所は、


「......ッ!?」


 エルナが辿り着いた瞬間に爆発を起こし、紅蓮の炎に焼かれようとしていた。爆発が起こったのはMCD格納庫。そこにはテスト機体が、ヴァイスの駆る《カトル・シャウラ》二号機がある。幸いにも、《オリオン・リゲル》に関しては研究所とは別の場所で組み立てと調整を行っていたので今はまだ心配はない。

 

「一体、なんっ......」

「エルナさん!」


 驚きを隠せずにいると、研究所から逃げてきた複数の研究者達の内の一人がエルナを見つけ、駆けつけた。その研究者に向かってエルナは問いかける。


「一体何があったんですか!?」

「わ、分かりません。急に爆発が起こったと思ったらどうやら、し、襲撃されたようなんです!」

「襲撃!?」

「あれは......あのマークは......!」


 ドクロマークにデフォルメされた《RB》の文字。

 その《RB》の由来は《Robbery Beast》。

 海賊《Robbery Beast》。

 その船が、空を飛ぶ船が、研究所の真上に浮遊していた。街の監視、感知システムが機能しなかったということはシステム範囲外の上空から降りてきたのか――――もしくは、強力なステルスシステムを有しているのかのどちらかだ。

 そしてその船......否、戦艦から複数のMCDが降下してくるのが見えた。

 どれも日々MCD開発に邁進する研究所のテストパイロットとして勤めているエルナすらも見たことがない機体だった。

 それらは次々に銃撃を行い、周囲を制圧しようと動いている。


「ッ......!!」


 エルナは研究所の中にへと駆け出した。


「え、エルナさん!? 何を!?」

「まだ私の《カトル・シャウラ》の保管してある場所は手をつけられていません!」


 その一言で、研究者にもこれからエルナのしようとしていることが分かった。


「やめてくださいエルナさん! 無茶だ! 戻って!」


 そんなことは分かっている。

 模擬戦と実践を同じと考えるような愚かな考えは持ち合わせてはいないつもりだ。


 だが、自分には力があるというのにそれを今、使わないでどうするのか。


 そんな言葉がふと頭を過り、そしてエルナの体を動かし、加速し、足を前に進ませた。

 中には逃げる研究者達がエルナがやってきた出口に向かって駆け出していた。その流れに逆らうようにしてエルナは足を進める。

 そして、エルナは二号機とは別に保管されていた一号機のあるガレージの側にある研究室に人影を見つけた。この研究所の開発チームのチーフ、ノベルティ・ドバンという一人の男性だ。

 ノベルティは研究室のコンピュータを操作しており、逃げる気配は一向にない。


「ノベルティさん!」

「エルナか!? 早く逃げるんだ! ここもいつまで保つか分からんぞ!」

「ノベルティさんも何をしてるんですか! 何故、逃げないんですか!?」

「私は研究データを別の場所に転送しているんだ! 海賊共にここのデータをくれてやるわけにはいかん!」


 ここにある研究データは研究員達の努力の結晶だ。データを得るまでに辛いことも沢山あったし、思い出も詰まっている。

 それだけでなく、ここのデータが海賊の手に渡るとどのように悪用されるか分からない。


「......でもっ!」


 逃げる方が先だ、と言いたかった。だがノベルティは一番研究熱心だった事は知っているし、彼がこの国の為に、皆が笑って暮らせる為にMCDの研究をしていた事も知っている。だからこそ、対魔獣用の《カトル・シャウラ》を開発したのだ。


「......! 分かりました。ここは......私が護ります」

「エルナ......!? お前、まさか......!」

「ノベルティさんはデータの転送作業を急いでください!」

「いかんエルナ! 戻れ!」


 またも呼び止められるも、エルナは止まらなかった。ただひたすら、走った。

 少しでも何かを、誰かを護る為に。

 ここは自分の、大切な場所だから。





「あった......!」


 ガレージ内に保管されてあった《カトル・シャウラ》一号機は幸いにもまだ残ってあった。だが、二号機が収められているガレージの方角は紅蓮の炎によって侵略されている。

 エルナはさっとコックピットに乗り込み、機体を起動させる。


魔力融合炉(マナドライヴ)起動。魔力精製率正常値。機体駆動系異常なし。エネルギー充填完了。システムオールグリーン。カトル・シャウラ一号機、起動! いける......!」


 瞬間。

 《カトル・シャウラ》の両眼がビカッ! と光り、機体が駆動音を立てながらズシン、と一歩踏み出し、大地を揺らした。

 側に置いてあったレイピアを掴みとり、そして《カトル・シャウラ》二号機のあるガレージに向かって跳躍した。




 ガレージは既に大半が破壊されていた。最早殆ど跡形もなくなってはいたが、《カトル・シャウラ》二号機は残されていた。


「よかった......」


 と、そこで、紅蓮の炎に焼かれているガレージ内に立つ一人の青年の姿を見かけた。


 その青年は金色の長髪を後ろで束ねていた。

 その青年は空中の海賊船を眺めていた。

 その青年は笑っていた。


 その青年は、ヴァイス・サターンといった。


「ヴァイ、ス、さん......!?」


 エルナの《カトル・シャウラ》に気づいたのか、ヴァイスはぐるりと《カトル・シャウラ》の方を向き、そのメインカメラを見た。

 そして、ぐにゃり、と。

 狂ったように、微笑んだ。


「......ッ!?」


 その狂気のような微笑みは、エルナが今まで見たことのないような物であり、ぞくり、と、背筋に何か冷たいものが駆け抜けたかのような感覚がした。

 だが、対するヴァイスは、


「よぉ、エルナ」


 何気なしに、いつもと同じ、普通の会話を、日常会話を、世間話をするかのように話しかけた。

 エルナは拡張マイクを起動させる。


「ヴァイス、さん。そこで何をしているんですか!? 早く、逃げないと......! 殺されちゃいますよ!?」

「殺されねぇよ」


 ヴァイスはただ、そういった。

 エルナはそれがどういう意味なのか、分からなかった。


「!? なに、を? 言ってるんですか?」

「当然だろーが。だって俺は海賊で、わざわざあの機体を盗りに来たんだぜ? テストパイロットとしてここの研究所に潜り込んだのもその為だ」

「なっ――――!?」


 何を言っているのか分からなかった。だが、あのヴァイスの狂ったような笑顔を見た瞬間、今の言葉も真実だと、自然とそう思えてきた。


「じゃぁなエルナ。ライトにもよろしくいっといてくれよ」


 そう言うとヴァイスは《カトル・シャウラ》二号機の方にへと歩んでいく。

 止めなければならない。

 止めなければ、大変な事になる。

 エルナはとっさに動こうとしたが、それを、上空から飛来した二機のMCDが遮る。

 カリナス・カノープス。

 だが機体カラーは黒い。それに国の物と比べると細部が微妙に異なる。だがそんなことはエルナには関係がなかった。


「どけぇ――――ッッッ!!!」


 瞬時に、一瞬で相手二機の懐に飛び込んでから右手のレイピアで片方の頭部を貫通させ、そして更にもう片方の近接戦用ブレードは左手の魔力盾(マジックシールド)で防ぎ、同時に刃を掴む。そのまま無理矢理引き抜き、相手の機体を蹴り飛ばす。

 そして奪い取った剣を掴み直し、体勢を整えて向かってくる二機を――――、


「ああああああああッッ!」


 切り裂く。

 それぞれ頭部、腕部を切り裂かれた二機は行動を停止させた。


「お見事」


 突如通信が開いた。

 相手は――――、


「ヴァイス、さん......!」


 《カトル・シャウラ》二号機に乗り込んだヴァイスだ。


「流石天才と呼ばれているだけの事はあるなァ」

「貴方は......アンタは! 初めから! 本当に! この為だけに......こんな......こんな酷い事をするためだけに研究所(ここ)に来たっていうの!? 私達を騙したっていうの!?」


 叫ぶエルナの瞳には、カトル・シャウラと紅蓮の炎に包まれる研究所がうつっていた。


「あァ。そうだ」

「......ッ!」


 ヴァイスの言葉が、容赦なくエルナを切り裂く。


 信じていた。

 仲間だと。


 信じていた。

 目標になってくれると。


 信じていた。


 それなのに。

 裏切った。

 エルナだけではない。ライトも、ノベルティも、研究所の皆を。

 全てをこの紅蓮の炎で焼こうとしたのだ。


「なら......」


 エルナは《カトル・シャウラ》のもつレイピアと剣を構えた。そして操縦捍をぎゅっと握り締める。


「――――私がアンタを止めるッッッ!」


 加速。

 一気にカトル・シャウラの得意な近接戦範囲に飛び込み、疾風の如き速さで相手の頭部に対してレイピアをつき出す。それを頭部を右に傾けるだけでアッサリとかわされるが、そこで止まらない。

 敵から奪った左手のブレードを振るう。だが、それは光の壁......厳密には、《カトル・シャウラ》二号機の左手に搭載されたエルナの乗る一号機と同じ魔力盾(マジックシールド)による物だ。

 両手の攻撃は防がれた。

 だが、まだ武器は残っている。

 《カトル・シャウラ》特有の、《尾》という武器が。

 体を使いながら尾を一気に振るう。現在の尾の先端部には相手の機体にこちらのエネルギーを送り、エネルギーを逆流させて機能を封じる効果のある《毒》が装填されている。

 あくまでも機体の一部分にしか効果はないが、それでも効果はある。

 もしこれが、相手が通常の機体ならば、効果はあったかもしれない。しかし、この場合、相手が悪かった、というべきだろう。

 何故ならば、相手はエルナと同じ機体を使っており、そしてエルナと同様......いや、エルナ以上に機体の事を知り尽くしている。

 故に、現在の状況に追い詰められたエルナが次に取るべき選択肢も読まれており、それに対する対処法も、《読まれている》。

 一号機が振るった尾を二号機がいとも簡単に右手で掴む。そのまま全ての選択肢、そして攻撃を封じられた。


「最後にいィ事を教えといてやるよエルナ」

「ッ!? 何がっ......!」

魔力盾(シールド)っつーのはなぁ、ただ防ぐための物じゃァ、ないんだよォォォォォ!!!」


 瞬間、二号機の左手の魔力盾(マジックシールド)が円形の(シールド)から、剣へと形を変える。

 円形に固定されていた魔力エネルギーの形を変える事で、盾を剣にへと形態変化させた。その事はなんとかエルナにも理解出来たが、円形の(シールド)という形を変え、無理矢理、(ソード)という形にへと変化させる。

 それだけのエネルギー制御を行う驚異的な技量、そして発想。理論的には可能だが、実際に盾を剣にへと変化させるなどという発想は少なくともエルナには思い付かなかった。

 高密度に圧縮された魔力エネルギーは、いとも簡単に敵から奪ったブレードを切断。同時に、カトル・シャウラ一号機の左腕を切断する。

 そこから跳躍し、一号機を飛び越え、背後に回ったかと思うと、左手を振るい、今度は右手を切断。更に連続して尾を切り裂く。


「そん、な......!」


 両腕、そして尾を切り裂かれたカトル・シャウラはズズン、という鈍い音を響かせて地に膝をついた。


 ――――勝てない。


 そう思った瞬間だった。ヴァイスから通信が開く。


「つまんねぇなぁ。この程度かよ。もうどーでもいいわ」


 心底つまらなさそうな声を発するヴァイスに、エルナは何も言えない。


「――――んじゃ、死ねよ」


 二号機のもつレイピアが、一号機のコックピットに迫る。


 ......ああ、私、死ぬんだ。


 そんな事をぼんやりと考えていると。


「――――ん?」


 上空から降り注いだ銃弾の雨が二号機を襲う。それをいち早く察知したヴァイスは左手のソードをシールドに再変換させる。

 シールドによって銃弾は全て防がれたが、動きが止まった事を利用して一つの機体がスラスターを全開にしながら二号機に迫っていた。


「《オリオン・リゲル》? ハッ! ライトの野郎か!」

「ヴァイスッ!」


 《オリオン・リゲル》。まだ機体の多くの部分がフレームを露出させており、辛うじて右腕と左脚部に純白の《オーロラコート》を装備しているぐらいという有り様だ。

 だがそれでも、空中で残弾が零になったライフルを捨てると、エルナと同じく奪ったのだろう、カリナス・カノープスのブレードを構えながらブーストし、落下していた。

 降下しながら剣を振るい、二号機のシールドと激突する。ブレードとシールドの間にスパークが迸り、周囲を光で照らす。


「どうやらテメエの所に差し向けたやつらは全滅ってトコか?」

「ヴァイス! お前は、本当に......!」

「ライトォ! お前となら少しは楽しめそうだ!」

「お前は、この状況でもそんな事を!」


 ブレードに極光魔力オーロラマナを散布させ、切断力を上昇させようとしたライトだが、ヴァイスの方が行動は早かった。瞬時にシールドをソードに変化させ、極光魔力オーロラマナを展開する前にブレードを切断する。

 

「くっ!?」

「甘ェなァ!」


 そのまま二号機は後退、同時に左手のソードを再び変化させたかと思うと、左手から光の弾が乱射される。形を変えるだけでなく、そのエネルギーを放出したのだ。

 咄嗟にライトは極光布オーロラクロスを拡大展開させ、迫り来る光の弾の嵐から背後のカトル・シャウラ一号機を護る為に自らを盾にする。


「――――!?」


 エルナは光の狭間で、二号機が跳躍し、海賊船から垂れ流されたMCD回収用ワイヤーを掴んでいるのが見えた。


「あばよ! ひゃはっ! ひゃはははははははははははははははははは!」


「ッ......!!」


 エルナはただ、拳を握り締めて去ってゆく二号機を見上げる事しか出来なかった。




 □□□




「結果的に、私達は騙されたのよ。あの男に、ね」


 健太郎はエルナに対して何も言えなかった。かけてやる言葉が見つからなかった。

 それに、一度、模擬戦をやったからこそエルナの実力は分かる。そんなエルナを簡単に倒し、完敗させたそのヴァイスというパイロットの事もある。


「あいつらは次々と海賊行為を繰り返している。奴等がもしこの太陽祭の機体を狙ってるとしたら......、」


 エルナは健太郎とディオーネを交互に見る。


「アンタ達の機体は、確実に狙われるわ。そしてこれだけは言える。もしアンタ達がアイツと戦えば確実に――――負ける」


 エルナのその重い言葉に、健太郎はただ息を呑んだ。




 そしてその一時間半後。



 太陽祭MCD部門、第二予選が始まる。



∀って見た目で敬遠してたけど見てみるとかなり面白いし、∀自体も動けばかっこ可愛い



エクシアたんと∀たんはかっこ可愛い。



エクシアたんは一途な幼馴染み。

∀たんは胸にうっかり核ミサイル隠してるのに戦ったりうっかり地球を滅ぼしちゃうドジッ娘キャラ。





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