第六話 ルナ・ドーパントさんは元々子供向けであるライダー作品のスピンオフエターナルのダークな雰囲気を和らげてくれた実はかなり重要な役割を果たしたキャラ
シャバドゥビタッチヘンシーン♪の中毒性は異常
もうずっとTwitterで呟いてます。
シャバドゥビタッチヘーンシーン♪
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シャバドゥビタッチヘーンシーン♪
左足の間接部が硬化した《オリオン・ベテルギウス》は地上を走行するにあたっての機動力が半減していた(スラスターを使えば動けない事もない)。更に右腕もパージしている為に使えない。攻撃力は半減していた。
「覚悟はいいかしら」
「......よくないので、ち、ちょ~っとだけ待ってくれませんか?」
「無・理♪」
《カトル・シャウラ》が地面を蹴って、《オリオン・ベテルギウス》にへと駆け出した。尻尾以外の武装で遠距離射撃武器を持ち合わせていない。故に、トドメを刺す時にはこうして近接戦闘を仕掛ける必要がある。《ニードルテイル》では決定力に欠けるからだ。
だが、近接戦に特化するために機動力を上げた《カトル・シャウラ》にとって機動力を半減させれた《オリオン・ベテルギウス》に一撃を与えるなど、造作もない事だ。コートの効果の発揮出来ない間接部にレイピアを突き刺す。鋭い一撃が空気を切り裂き、《オリオン・ベテルギウス》に迫る。
「ッ......!」
ガキッ、と僅に機体を反らし、レイピアの尖端が左腕の装甲に激突する。しかし、《オーロラコート》から放たれた《極光布》によりその一撃は防がれる。この機体に、完全な回避は必要ない。弱点部分さえ避ければ大抵の攻撃は完全にシャットアウトする。合成獣型クラスの魔獣の一撃を防ぎきった事からそれは明らかで、その防御力はエルナは間近で見た為によく知っている。
だが、同時に、この《極光布》によって消費されるエネルギー量に魔力融合炉が精製するエネルギー量が追いつかない事も知っている。故に、例え防がれたとしても攻撃をくりかえしていけばいずれ精製される魔力量が追い付かなくなり、ガス欠を起こす。
「うりゃあああああ!」
「ぐっ......!」
ギリギリで致命傷を回避していく中で、健太郎はある一つの疑問が浮かんだ。
何故、エルナは先程、左足の間接部に《ニードルテイル》による毒針を撃ち込んだ際に《融解》させる針を撃ち込まなかったのか。もし《融解》の針を撃ち込んでいたならば決着はついていたかもしれない。だが、それをしなかった。
つまり。
(撃たなかった、のではなくて、撃てなかった、のか?)
あの尻尾という武器の構造上、恐らく自分で自由に毒を選択して撃つ事は出来ないのだろう。予め搭載されていた針を順番に放つしかない。
故に魔獣に終われていた際にも無闇に針を撃てなかった。あの一撃は確実に当てなければならなかった。
(とりあえずは、今のこの状況をなんとかしなきゃならないな......)
恐らく仕掛けられている毒針は各一種類しか装填されていない。これはデータ取りの模擬戦なので、色々な種類の毒針を使えなければデータ取りの意味がない。
他に何があるのかは分からなかったが、《融解》の心配はもうない。
「よしっ......!」
「......けんたろー」
「頼む」
「分かった」
刻印による影響か。
健太郎とディオーネにはもう互いに何をすべきか分かっていた。
まずは、左側にある《アームドポケット》からダガーを出現させ、左腕の装甲の袖に装着。そのまま左ストレートを繰り出す。だがその一撃は《カトル・シャウラ》の左手によりあっさりと捉えられた。左腕を捕まれたまま、《カトル・シャウラ》は右手に装備していたレイピアで切り落とそうと振りかぶった。
(今だ!)
その瞬間、健太郎はサブ射撃コマンドによりダガーアンカーを射出。アンカーの先端に装着されていたダガーがそのまま伸び、《カトル・シャウラ》の頭部へと飛ぶ。
「くぅ!?」
しかし、その不意をついた一撃に対してエルナは瞬時に反応し、右手の操作を中断して《カトル・シャウラ》の頭部を右にへと傾ける。放たれたダガーアンカーは空を切り、奇襲は失敗した。
「残念だったわね」
「ッ......!」
奇襲が失敗した事により、健太郎の顔に浮かんだのは悔しさに滲んだ表情でも、絶望でもなく――――、
「こ、こ、だぁ――――ッ!」
――――希望だった。
途端に、《オリオン・ベテルギウス》の生きていた右膝からワイヤーアンカーが射出される。一度見た腕からのアンカーならともかく完全にノーマークだった膝からの一撃には対応しきれなかった。無防備な右手のレイピアはいとも簡単に弾かれ、宙を舞う。
「くっ......!?」
更にアンカーは《カトル・シャウラ》の右腕に巻き付き、それを確認したと同時にスラスターを全開にして後退する。そのパワーに右腕が釣られるようにして《カトル・シャウラ》はその機体を引き寄せられる。ここにきて、機動力を上げるための《カトル・シャウラ》の軽量化が裏目に出た。軽いが故に引き寄せられる。
「おおおおおおおおおッ!」
ぐんっ、と引き寄せられてきた《カトル・シャウラ》に対して、右足での蹴りを放つ。体勢を大きく崩された上に引き寄せられる衝撃でまともに尻尾のガードすら許されない状況で、《オリオン・ベテルギウス》の放った蹴りによる一撃はクリーンヒットした。
その瞬間にアンカーを分離。反動を受けないようにバックステップで離脱する。
「きゃあああああ!?」
軽量化をしていたが故に装甲も薄い。一撃の蹴りだけで、《カトル・シャウラ》の胸部は陥没していた。そのまま地面に叩きつけられるように転がりかけたが、その高い運動性能ですぐに体勢を立て直す。
「うっ?」
だが、目の前には既にバックステップの反動を利用して《カトル・シャウラ》に迫り来る《オリオン・ベテルギウス》の姿があった。このまま逃げる気はない。むしろ、カウンターのチャンスでもある。左手の防御魔法を展開し、《ニードルテイル》によるカウンターを狙う。
と、その時。
――――模擬戦の終了を知らせるアラームが鳴り響き、両機共に動きを止めた。
□□□
「健太郎」
「な、なんでしょーかチーフ......」
「今回のは模擬戦だったんだよな?」
「はい......」
「それがどうしてこんなにも機体がボロボロになっているのかな?」
「さあー(棒)」
シラをきる健太郎と、にっこり笑顔のまま怒気を迸らせているテスカの目の前には、横たわっている《オリオン・ベテルギウス》の姿があった。
しかし、右腕はパージされており、更に左足に関しては間接部が硬化液により固まってしまっている。これにより方膝をつく待機状態がとれなくなっている。
テスカも、模擬戦に協力するからにはある程度のダメージは覚悟していた。だが、まさかここまでの被害を被るとは思ってもみなかった。
幸い、研究所の方で修復に力を貸してくれるらしいが、全てを任せっきりにするわけにもいかない。
「ま、愚痴ってても仕方がねえか。これが俺達の仕事なんだしなぁ......けどよ、今回の場合は太陽際までの限界時間の事もある。もうあんま無茶やんなよ」
頭をかきながら修理作業に向かおうとするテスカ。その後ろ姿を、健太郎は申し訳ないと思いながら見送った。
「ダメージ度合いで言えばこっちもそれなりにやられたんだけどねー」
テスカの背中を見送る健太郎の側に現れたのはエルナだ。
「凄かったよ。模擬戦って事忘れてつい熱くなっちゃった。こんなこと、初めてかも」
「あー......そこは俺も。ディオーネの方はどうかわからないけど」
これは少し嘘だ。何故なら、刻印によってディオーネの感情もほんの僅かにだが健太郎に流れ込んできたのを感じた。健太郎からすればその時のディオーネ感情は間違いなくあの模擬戦に――健太郎の言葉で表現すらなら――熱くなっていた。
「お互い、今回は痛み分けって事でいいのかな?」
「そういう事でいいんじゃないか」
今はただの模擬戦で済んではいるが、太陽際本番では敵同士となる。間違いなく強敵となる相手だと健太郎は思った。
「さあて、今日はもう帰って休もうかな。疲れちゃった」
と、エルナが歩きだす。その時ふと、健太郎は今日、クロードがこっそりエルナの泊まっている研究所の宿泊施設に潜入すると言っていた事を思い出した。実際、クロードは同じ志を持った仲間たちのアシストにより見事、模擬戦前のドサクサに紛れて潜入したはずだ。それを健太郎も見ていたのだが、エルナの歩き出した方向とクロードの潜入しに行った方向がまったくの逆だった。
「あれ? 宿泊施設ってそっち?」
「宿泊施設? ああ、寮の事? うん。こっちだけど」
「そっちって男子寮じゃないのか?」
「違うわよ。ああでも確か、寮の改装工事がつい最近終わって、構造の関係から男子寮と女子寮の建物が入れ換わったんだって。おかげで広々として綺麗な部屋を使わせてもらってるわ」
「そ、そうなんだ......」
その瞬間、現男子寮の方向から、
アッ――――!
という声が聞こえてきたのと、後に健太郎がエルナから聞いた話しだと男子寮の寮長がガチムチのオネエ系である事は一切関係がないだろう。
□□□
学園内も太陽際に向けてかなり活気だって盛り上がってきた。太陽際は学生達にとっての腕試しの場でもあり、また、学生達以外の参加者達にとっては名を売るための場でもある。
原石を見つける為の場所。
それが、太陽際の一面でもある。
《MCD部門》、《露天部門》どちらにも有名な国王軍関係者や有名な商人も見学にくる。学生達にとってはある意味、将来に関係する《かもしれない》のだ。
第零科のミーティングルームで健太郎は露天部門班のメンバーと共に作業に勤しんでいた。重要な戦力であるクロードがここ数日使い物にならなくなっているので、作業が詰まりつつあるのだ。
「......嫌いじゃないわ嫌いじゃないわ嫌いじゃないわ嫌いじゃないわ嫌いじゃないわ嫌いじゃないわ嫌いじゃないわ嫌いじゃないわ嫌いじゃないわ嫌いじゃないわ嫌いじゃないわ嫌いじゃないわ嫌いじゃないわ嫌いじゃないわ嫌いじゃないわ嫌いじゃないわ......」
クロードが使い物にならず、ミーティングルームの隅っこで体育座りをしているのを尻目に、露天部門班のメンバーが小声で情報交換しあう。
「......クロードさんに一体、何があったんだ」
「......どうやらデータ取り模擬戦の日に恐ろしい物を《視た》らしい」
「確か、《解析眼 《アナリシス・アイ》 》だっけ? あの視ただけで女子のスリーサイズその他諸々が解るとかいうやつ」
「......噂によると潜入した先にガチムチのオネエがいたとか」
「え? それを《解析眼》で視た、という事は......」
「......」
「......」
「......」
「「「おえっ......」」」
「......嫌いじゃないわ嫌いじゃないわ嫌いじゃないわ嫌いじゃないわ嫌いじゃないわ嫌いじゃないわ嫌いじゃないわ嫌いじゃないわ嫌いじゃないわ。誰このイケメン誰このイケメン......うふふふふ。あははははは......このオネエ凄いよぉ」
(((つーか、一応オネエでも女の子判定してるんだな......)))
健太郎も必死に吐き気と戦いながら、黙々と作業を進める。既に大体のプランは出来ている。だが、それを形にするのに手間取っている。
「うわー。何か知らないけど見たことないけど面白そうなの作ってるわね。太陽際は今まで何度か家族と見にきた事あるけど、これはアイデア賞狙えるんじゃない?」
「......いや、つーかさ......」
「何よ」
「なんでお前が第零科にいんの?」
「......けんたろー、エルナは昨日からもう第零科の生徒になった」
「あ、そうなんだ。知らなかった」
「アンタ、昨日はここに籠りっきりで出てこなかったから挨拶が遅れちゃったのよ」
「そうかー。そりゃ悪かった。HAHAHA!」
「あははははは」
「......」
「――――ってちょっと待て! なんで第零科!?」
「別にいいじゃない。理由なんて些細な問題よ」
「些細な問題じゃなくね!?」
ケロリとした顔をしてエルナは軽くため息をつく。
「いや、そうはいうけど、学内の評判の割に第零科ってかなりレベル高いわよ。腕はあるけど問題児、っていうだけで技術レベルはかなりのものだし、中々面白そうだと思ったのよ。色々と勉強になるだろうし、何より自由にやれて時間に融通が効く所がいいわね。私は一応、研究所の方にもいかなきゃならないし」
「......因みに、お勉強の方は?」
「余裕」
「......さいですか」
とりあえず、健太郎はエルナの第零科入りを細々と心のなかで祝いながらも、「貴重な労働力確保」と脳内メモ帳にメモした。
□□□
首都アポロンを遠くから眺めている、一隻の帆船の姿があった。場所はから離れた海岸上。感知魔法範囲外の場所に、その帆船は在った。
その帆船の船体は紫を基調としており、装備も国王軍の物にひけをとらない。MCD発進デッキを二つずつ備えており、後方には巨大なコンテナ船が接続されている。今はステルス機能によりその身を隠しており、それは、人々から《海賊》と呼ばれる者達の船だった。操舵室には複数の人間が集まっており、それらは皆が海賊だ。
その者達は、偵察に出した仲間からの情報報告を受けていた。
「どうやら太陽際は予定通り行われるみたいだな」
五十代ぐらいの大柄の男が、報告書を片手にそう呟いた。この男こそが、この海賊達のキャプテンであるマクベアである。
「へい。そのようで。それと協力者からの情報によりますと、どうやら、あの例の小娘の機体が先日、研究所に運びこまれたとか」
「だ、そうだが?」
マクベアが向けた視線の先にいたのは、二十歳ぐらいの青年だった。金色の長髪を後ろで雑に束ねており、荒々しい格好をしたその青年はマクベアの方に向き直ると、
「で? それが何か俺に関係あるのか?」
「よくいう」
「ハッ。あの機体をあそこから盗み出せた時点でもうあんなやつらどうでもいい。それで、だ......今回の仕事は俺を楽しませてくれるんだろうな?」
ギロリ、と向けられた鋭い視線に物怖じともせず、ただ淡々と、それでいて冷静にマクベアは答える。
「ああ。上手くいけば、な」
「頼むぜ? たかだか偵察部隊を潰す事なんざぁ、ただの暇潰しにもなりゃしねえ」
「《お前達》には期待してるさ。......《カルネージ》」
海賊達の誇る戦闘部隊、《カルネージ》。
その魔の手は確かに、太陽際に向けて迫りつつあった。
――――太陽際まで残り、二ヶ月。
超クラヒーにサガとデルタ参戦おめでとう




