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異世界落ちこぼれロボット学科  作者: 左リュウ
第二章 太陽祭編
13/38

第四話 幼女とは愛でるもの。ロリ紳士の諸君、いつも心に《YESロリータNOタッチ》!

幼女に手を出すのはただの犯罪者(クズ)


ロリ紳士と犯罪者を一緒にしないでください!(迫真)


《YESロリータNOタッチ》の精神を忘れずに(笑)


じゃないとタイーホされますから。マジで。





「そん、な......!?」


 合成獣型の魔獣が放った刃が《オリオン・ベテルギウス》の装甲に突き刺さったのを、フレアは確かに見た。その瞳に、確かにその姿が写し出されている。

 だが、何かがおかしい。

 その違和感に、やや遅れてエルナは気づく。

 そもそも、刃が装甲に突き刺さっては――――いなかった。厳密には、装甲の僅か手前の何かに突き刺さっていた。

 機体のカメラで拡大してみると、《オリオン・ベテルギウス》の黒い装甲から何か光の布のような物が放たれており、その布に刃が突き刺さっていた。

 機体自体はダメージは、無い。

 やがて振り払うように腕をなぎ払うと、バンッ! という音を立てて、魔法の刃が砕け散った。

 そしてエルナは見た。《オリオン・ベテルギウス》の周囲に、もっと厳密に言えば装甲から鮮やかな紫色に輝くオーロラが放出されていた。

 これこそが、《オリオン・ベテルギウス》の追加装甲に搭載された機能、極光布(オーロラクロス)である。

 《オリオン・ベテルギウス》に搭載された魔力融合炉(マナドライヴ)から精製される極光魔力(オーロラ・マナ)が構成する防御魔法が完全に合成獣型の刃を防いでいた。


「何、あれ......」


 エルナは思わずそのオーロラに見とれてしまったが、すぐに集中する。すると、合成獣型の狼の姿をした魔獣は、今度は尾を振るう。その尾は岩石によって覆われており、その一降りはかなりの破壊力を持つ事をエルナは知っている。

 これまでの逃走中にはその一撃が大木すらも簡単になぎ払うのを目撃している。

 だが、《オリオン・ベテルギウス》は避けなかった。右腕を盾のように構え、真横からなぎ払われた尾に対応しようとする。その間にも周囲の木々を薙ぎ倒しながら尾は強烈な勢いで迫る。

 無茶だ、とエルナは思った。

 あの一撃はたった一機だけのMCDの防御魔法で防げる物ではない。

 しかし、《オリオン・ベテルギウス》はその一撃を敢えて受ける姿勢をとる。放出されたオーロラが尾を受け止める。ズンッと重い衝撃が機体に伝わる。だが、完全に受け止めていた。


「ウソ!?」


 エルナは信じられないような光景を目の当たりにした、というような表情をしている。だがそんなエルナの反応を振り払うかのように《オリオン・ベテルギウス》はその巨大な尾を弾き飛ばす。

 その反動で魔獣は大きくよろめき、その隙に《オリオン・ベテルギウス》は加速し、地を蹴りながら魔獣に迫る。だがそれを見逃す魔獣でもなく、すかさず前足を《オリオン・ベテルギウス》に対してなぎ払う。それを跳躍して回避し、コートの右側にある《アームドポケット》と呼ばれる武器収納スペースから《ダガーブレード》を取りだし、魔獣の右目に目掛けて投擲する。


「ぅりゃあッ!」


 放たれたダガーは見事、魔獣の右目に突き刺さり、魔獣は悲鳴の咆哮が森の中に響き渡る。更に空中で体勢を変え、右足を勢いよく突き出し、脚部の追加装甲から極光布(オーロラクロス)を放出と同時に集中展開。スラスターによって加速し、空中からの急降下キックを魔獣の右目(・・)に叩きつける。突き刺さっていたダガーがキックを受けた事により更に深々と突き刺さり、紅い血が噴水のように吹き出した。

 更にそこを足場とし、再び跳躍。魔獣を飛び越した《オリオン・ベテルギウス》は空中で反転し、右腕の袖からアンカーを放出する。

 腕から伸びたワイヤーコードが魔獣の首に絡み付き、地上――――魔獣の背後に着地した《オリオン・ベテルギウス》は地面に踏ん張りながら必死で魔獣の動きを何とか止める。


「動きを、止め、た、ぞ......ッ!」


 ワイヤーコードが魔獣の首を締め付けるようにして抑えているが、それでも合成獣型魔獣一匹をたった一機のMCDでは抑えつけるのも難しい。ギギギ、と、機体の所々が悲鳴をあげていた。

 出力(パワー)を全開にして何とか持ちこたえてはいるが、このままだと腕が自壊してしまう。


「ッ! わ、分かってるわよ!」


 エルナは《オリオン・ベテルギウス》の驚異的な運動性能を見て唖然としていたが、すぐに我に返り《カトル・シャウラ》を動かす。《カトル・シャウラ》は地面を蹴り、暴れる魔獣が地面に叩きつけた前足の上を駆け登り、そして先程の《オリオン・ベテルギウス》よりも高く跳躍する。


「いっ、けぇぇぇぇぇぇッ!」


 急降下しながらレイピアを真下に突き刺す。刺さった部位は魔獣の左目だった。ついに両眼を失った魔獣は先程よりも高く吼える。目からは血飛沫が舞い上がり、《カトル・シャウラ》のボディを真っ赤に染めていた。

 突き刺したままのレイピアを支えに何とか魔獣の頭部に踏ん張ったまま、《カトル・シャウラ》の尻尾が蠢く。蠍を模した尾の先端にはニードルがあり、尾の先端――――つまりニードルの部分が、ドスッ、という僅かな音を立てて魔獣の頭部に突き刺さる。

 その直後。

 魔獣の暴れるような動きや咆哮がピタリと止んだ。


「......?」


 健太郎が何だ? と思った瞬間。魔獣はグラリと体勢を崩し、鈍い音をたてながら地面に倒れ落ちた。


「は? え?」


 先程まであれだけ暴れていた魔獣が急に動きを止めた事に対して疑問を抱く。その疑問はディオーネにもバレていたらしく、


「あの機体......《カトル・シャウラ》は尾に魔獣に対する毒を有している。恐らくさっきの一撃は魔獣に対する致死毒を魔獣に与えたんだと思う」

「そ、そうなのか......よく知ってたな」

「あの機体は元々二機あって、対魔獣用実験機として開発されていた物。でも前に強奪されて二機の内の一機が盗まれたと聞いたから気になってその強奪事件を調べた時に知った」

「よく知ってるじゃない」


 と、通信が割り込んできたのはその時だった。

 エルナである。


「取り敢えず、お礼を言わせてもらうわ。その服......もしかして、オメテオトル魔導学園の人?」

「あ、ああ」

「だったらお願いしたいんだけど......街まで案内してもらえないかしら?」

「構わない」


 答えたのはディオーネだ。


「ありがとう。私、エルナ・ヴェノーラ。よろしくね」



 □□□



 森の中を二機のMCDが歩く。魔獣については死体をそのまま放置してきた。既に都市側には既に連絡を入れてあるので、回収部隊が派遣されるだろう。実際に途中、回収部隊とすれ違った。

 森を抜け、荒野を歩き、首都アポロンにたどり着いたのは約一時間後の事だ。

 巨大な正門が開かれると、中には国王軍直属部隊の機体(カリナス・カノープス)が三機、出迎えていた。突然の事に驚く健太郎だが、エルナは知っていたかのような反応だった。


「エルナ・ヴェノーラさんですね。お待ちしておりました」

「ありがとうございます。......道中、かなりイレギュラーな事態に遭遇しましたが」

「申し訳ございません。我々にも予想外の出来事でした。速く救援に行ければよかったのですが......」

「イレギュラーな事態だというのは重々承知ですので。それに魔獣と遭遇する、ということはそういうことですから、お気になさらず」


 両者の会話(オープンチャンネルになっていたので聞こえていた)についていけなかった健太郎はシークレットチャンネルを開く。


「あ、あの、エルナ、さん?」

「エルナでいいわよ」

「じゃあ、あの、エルナ? もしかしてエルナって......貴族出身者なのか?」


 健太郎の問いにホロパネルの向こうのエルナは首を横にふる。


「ううん。私の家は割と普通の家よ。ただ、私は他の都市からの交換転入生だからじゃないの?」

「交換転入生?」

「そうよ。私、この都市のオメテオトル魔導学園に、転入することになってるから」

「て、転入生!?」

「そうよ。太陽祭もあるし、それに《カトル・シャウラ》は元々首都アポロンの研究所で考案されてた

物だったし、専属パイロットである私と一緒に実践データを直に回収する目的もあるらしいわよ。そもそもそっちからの転入生自体は前から私の元々いた都市には半年前から来てたしね。むしろ私がこの時期に来るのは遅いぐらいよ」


 後にディオーネから聞いた話だと、エルナの転入がこの時期になったのは《カトル・シャウラ》の調整に手間取った事と、強奪事件が重なった事も関係しているらしい。

 そして、《カトル・シャウラ》と、《カトル・シャウラ》を救ってくれた礼として《オリオン・ベテルギウス》は国王軍の研究所にまで運び込まれ、整備が行われている。

 途中で「あの機体はデリケートなんだ」、「俺達にも参加させろ!」という意見を《健太郎に》ぶつけたテスカ達も合流した。

 自分から希望して合流したテスカ達だが、国が誇る最高峰の研究所に立ち入ってかなり緊張気味になっていたのだが。


「か、かなり緊張するな......」

「そ、そーッスね......」


 初めて見るような最高峰の設備の中で整備する事に感動を覚えながらも、ガチガチに緊張してしまい、手元が狂いがちになりそうになっている。

 そこから少し離れた所では健太郎が手持ちぶたさに座っていた。ディオーネは機体の整備に参加している。


「健太郎よ。元気だったか?」

「ヘリオスたn......様!?」


 振り返るとそこには確かに、毎晩毎晩夢にまで見たヘリオスの姿があった。何故か今度は白衣を見にまとっている。その背後からは護衛であるフレアもついてきていた。


「げ、元気でしたッ! もうめちゃくちゃ元気でしたッ!(生ヘリオスたんハァハァ。幼女ハァハァ)」

「......何か、凄く呼吸が乱れているが......大丈夫か?」

「ハァハァ......だ、大丈夫です......くっ......(ヘリオスたんが可愛すぎて)辛いぜ......」

「あの......ご気分が優れないようでしたら医務室に案内しますが......」

「あっ、いえ。マジで大丈夫ですから。それで、あの......何か俺に用でも?」

「うむ。まあ異世界からの勇者様なのだから気になるしな。それに、あの機体の事も」


 ヘリオスはそう言うと、待機状態になっている《オリオン・ベテルギウス》の方に目を向ける。


「あの機体......いや、あの機体の魔力融合炉(マナドライヴ)がどうかしたんですか?」

「......どうして機体ではなく魔力融合炉(マナドライヴ)の方が気になると思った?」


 ヘリオスの問いに、健太郎は何気なく答える。


「いや、《カリナス・カノープス》の時に比べて、あのドライヴの調整に取り組むディオーネがやけに真剣というか......雰囲気が違うというか。それに、稼働しているときもやけにドライヴに対して注意をしているような感じがして」

「ほう。ディオーネの雰囲気を読み取ったと」

「いや、そんな対した事じゃないですよ。何となくですよ、何となく」

「いや。この短期間でディオーネのそういった微妙な変化に気づけるとは対した物だ。私でも、もうしばらくかかった」

「私でも、もう少しかかりましたからね」


 背後でフレアも過去を懐かしむようにして微笑む。


「ディオーネはな、あまり他人に自分の感情を表に示そうとしない。だから私達も最初はあの子と仲良くなるにも時間が掛かった」

「特に、あの頃のあの子は、ね......」

「あの......二人はディオーネと昔から知り合いなんですか?」

「ん。まあな。だがしかし言えるのはそこまでだ。後はあの子が自分から健太郎に伝える日が来るだろう」


 どうやらディオーネの過去には何かあるらしい。しかし、それ以上、健太郎はそれを詮索する気にはなれなかった。ヘリオスがこう言う以上は、詮索をする必要もない。


「まあその何だ、健太郎。これからもあの子と仲良くしてやってくれ」


 そんな事を言うヘリオスはまるで我が子を心配するような母親のようにも思えた(見た目はロリロリの幼女だが)。


「ヘリオス様」


 と、健太郎が返事を返す前にやってきたのはディオーネだ。


「どうかしたのですか?」

「ん、ディオーネか。うむ。《古代魔力融合炉(エンシェント・マナドライヴ)》の調子はどうだ?」


 《古代魔力融合炉(エンシェント・マナドライヴ)》とは、《オリオン・ベテルギウス》に搭載されている魔力融合炉(マナドライヴ)の事である。

 遺跡から発見された今や幻とされていた第一世代時代の魔力融合炉こそが《古代魔力融合炉(エンシェント・マナドライヴ)》である。極光布(オーロラクロス)を構成する極光魔力(オーロラ・マナ)を産み出せるのもこの古代魔力融合炉の恩恵であると言える。

 遺跡から発掘された《古代魔力融合炉(エンシェント・マナドライヴ)》は全部で三つだが、内一つはヘリオスがディオーネの才能を見込んでディオーネに託し、残りの二つは国王軍の研究所直属の別の研究所に預けられた。

 その事は健太郎も聞いている。

 しかし、


(いくらディオーネの才能が凄まじいとはいえ、普通、一学生にそんな貴重な物を託すか?)


 いくら信頼しているとはいえ、いくら複数あるとはいえ、この処置はおかしい。普通なら国王軍の研究所で研究した方が遥かに研究が進むハズなのに。

 これに関しても恐らく、詮索しない方がいいことなのだろう。


「問題ありません。ドライヴに残されたデータの解析も進んでいます」

「そうか。頼んだぞ」

「はい」


 何故、ヘリオスがディオーネに《古代魔力融合炉(エンシェント・マナドライヴ)》を託したのかは分からない。だが、ヘリオスが純粋にディオーネを信頼しているということは、分かった。

 ヘリオスが帰ろうとした所で、フレアが健太郎に声をかけた。


「健太郎さん」

「は、はい」

「ディオーネの事、よろしくお願いしますね」

「は、はいっ。ま、任せてください」


 いや、本当は逆にディオーネの世話になる方なんですけど、と心のなかで自分自身にツッコミを入れる。


「ではまた、学園で会いましょう」

「は、は......い?」


 最後のセリフにきょとんとしていると、その間にフレアはいたずらっぽい笑みを残してヘリオスと共に去っていった。

 呆然とする健太郎はディオーネに質問をする。


「あの、フレアさんって......」

「フレアはオメテオトル魔導学園の五年生。だからあの学園で会う、という発言は間違いではない」

「へ、へー......」


 ヘリオスに関しても、フレアに関しても、テスカに関してもそうだが、この世界の人間は少し外見と年齢が釣り合っていないように思えた。



 □□□



 ディオーネは再び作業に戻った為に、再び健太郎は手持ちぶたさになり、座りながらぼーっとする事しかすることがなくなってしまった。

 そんな健太郎に、再び誰かが近づいてくるのを感じた健太郎はその方向を向く。

 今度はエルナだった。


「あの、さっきはありがとね。ちゃんとお礼、言おうと思って」

「え? あ、いや、あれは俺だけの力じゃないから」


 機体制御にはディオーネもかなり協力してもらっている。健太郎もディオーネに依存する部分が大きい事は自覚している。


「あの子にお礼はさっき言ってきたわ。それにしても、あの動きは大した物よね......うん。よし、決めた」

「何が?」

「......私が機体の実践データをとりにきたのは知ってるわよね?」

「ああ、うん。それは聞いた」

「それにはMCD同士の模擬戦も含まれてるんだけど......」


 そしてエルナは少しの間考え、


「その相手、アンタ達に決めたわ」

「......はい?」







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