闇の中の姫君
闇の中、いつもと同じ音が聞こえる。
―キコエナイ―
―キキタクナイ―
その音は少女を暗闇に縛り付けるように辺りに響く。
終わらない日々に絶望しながら少女はふと、幼い頃憧れたあの物語の事を思い出す。
内容はお城に幽閉されたお姫様を王子様が助け出すというありきたりなものだか、少女は自分とお姫様が似ている気がしてよく読んでいた―
そこまで思い出すと少女はふっと溜め息をつき、自分だけに聞こえる声でそっと呟く。
『私の王子様は何処にいるんだろう…』
この暗闇というお城から助け出してくれる王子様が。
そう思いつつ、少女は眠りに着いた。