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不穏な影

34話 真凜side


イライラする

理由は分かっているのに

認めるのが癪で、余計に腹が立った。


神楽陸からの返信はない

既読すらつかないスマホの画面を何度も無意味に開いては閉じる


「……なんで?」

小さく呟く

理解できない

今まで、こんなこと一度もなかった


少し笑えばいい

少し甘えればいい

それだけで男なんて勝手に寄ってきて、勝手に好きになって、勝手に都合よく動く

それが当たり前だった


(なのに、なんで今回は)


指先で髪をいじる

思い通りにならない

その事実が、何よりも気に入らない


「……意味分かんないんだけど」

苛立ちを吐き捨てる

原因は一つしかない


音羽


あいつがいるからだ

あいつがいるせいで、全部狂う


「……ほんと邪魔」

吐き出す声は、自然と低くなる


あいつは昔からそうだった

何も持ってない顔して、でもなぜか全部持っていく

自分が欲しいものを、何も努力せずに横から掠め取るような、あの感じが大嫌いだった


(今回もそう)

だから、奪えばいいだけ今までと同じように

あいつのものは全部、こっちに持ってくればいい

それで全部うまくいくはずなのに——


「……なんでうまくいかないの」

思わず漏れた声は、さっきよりも少しだけ弱かった


認めたくない現実が、じわじわと侵食してくる

うまくいってない

思い通りじゃない


それだけで

こんなにも不安になるなんて思わなかった


「……はあ」

大きく息を吐く

イライラを押し殺すように立ち上がったとき

不意に違和感が引っかかった


(……あれ)

足が止まる

何かがおかしい

ほんの些細なこと

でも、無視できない


「……そういえば」

ぽつりと呟く

最後に来たの、いつだっけ


指で日付をなぞるように記憶を辿る


「……え」

一瞬で思考が止まる


数秒遅れて、理解が追いつく


「……嘘でしょ」

乾いた笑いが漏れる


「いやいや、ないでしょ」

即座に否定する。

そんな簡単に当たるわけがない


タイミングだってバラバラだったし

そもそも一人じゃない。


(……大丈夫でしょ)

自分に言い聞かせる

でも、胸の奥のざわつきが消えない


「……ちょっと遅れてるだけ」

強引に理由をつける

最近ストレス溜まってるし

生活も乱れてるし

それくらい普通にある


(そう、普通)

なのに——頭の中に浮かんでしまう

最悪の可能性


「……最悪」

思わず吐き捨てる

思い出すのは


夜の断片

酒。

曖昧な記憶

笑っていた顔

名前もはっきりしない男たち


(……誰)

考える

でも、すぐに分かる


「分かるわけないか」

小さく笑う

人数が多すぎる

今さら特定なんて無理だ


「……ほんと、最悪」

もう一度呟く

怖いんじゃない


ただ、面倒くさい

もしそうだったら、全部狂う

今の生活も、これからの計画も、全部


「……ふざけんな」

苛立ちが一気に膨れ上がる


でも——そこで終わらなかった


ふと、思考が止まる


(……でも)

一瞬の静寂。


そのあと、ゆっくりと口元が歪む


「……使えるかも」

自然と出た言葉に、自分でも納得する


(タイミング的に、悪くない)

むしろ、ちょうどいい

今の状況なら、これは武器になる


「……ありじゃん」

さっきまでの焦りが、形を変えていく


不安じゃない

計算に変わる


(どう見せるか)

誰の子かなんて関係ない

大事なのは、周りにどう思わせるか


「……私が被害者ってことにすればいい」

小さく笑う。

簡単な話だった、泣けばいい

困ってるふりをすればいい

それだけで、周りは勝手に味方になる


「……で、全部あいつのせいにする」

音羽の顔が浮かぶ

ちょうどいい

昔からそうだった


あいつは、責任を押し付けるのにちょうどいい存在


「……ほんと便利」

くすりと笑う

さっきまでの苛立ちはもう消えていた


代わりにあるのは、確信


(どうせ、またうまくいく)

今までだってそうだった


今回も同じ


「……決まり」

スマホを手に取る

やることは一つ、確認


それから——仕込み


「……あんた、終わりだから」

小さく呟く。


その声は

冷たくて、迷いがなかった


自分が追い詰められていることにも気づかないまま



真凜はただ“自分の勝ち”だけを疑っていなかった


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