繋がった違和感
第30話 陸side
静かすぎる夜だった。
部屋の中に残るのは、さっきまでの空気と——拭えない違和感。
「……帰ります」
短くそう言って、神楽陸はドアに手をかけた。
「え、ちょっと——」
背後から声が飛ぶ
でも、振り返らない
今は、それどころじゃなかった
ホテルを出た瞬間、冷たい空気が一気に流れ込む
頭が、妙に冴えていく
(……おかしい)
一つ一つを思い返す
呼び出し
酒
タイミング
場所
全部が——噛み合いすぎている
偶然で済ませるには、無理がある
(あの場所に、なんで音羽がいた)
そこが、一番引っかかる
偶然?
あり得ない
じゃあ——
(呼ばれた?)
その可能性が、浮かぶ
同時に真凜の顔が、頭に浮かんだ
(……仕組んだのか)
その瞬間
バラバラだった違和感が、一気に繋がる
何度も会った“偶然”
自然すぎる距離の詰め方
弱さの見せ方
そして——
あのタイミング
(最初から、見せるつもりだった)
そう考えると、全部が説明できる
「……は」
思わず、乾いた笑いが漏れる
(なんだ、それ)
人を巻き込んで
嘘を重ねて
そこまでして、何がしたい
(……いや)
一つだけ、分かることがある
“普通じゃない”
それだけは、はっきりしている。
スマホを取り出し画面を開く
自分の通話履歴とメッセージを確認する
音羽に連絡した形跡はない
呼び出してもいない
場所を伝えた記録も、当然ない
(……じゃあ、なんで来た)
あのタイミングであの場所に
偶然で済ませるには、出来すぎている
(誰かが呼んだ)
そう考えた瞬間、浮かぶ顔は一つしかない
真凜
あの場にいて
音羽と繋がっていて
状況を作れる人間
(……仕組んだのか)
ゆっくりと、思考が繋がっていく
歩きながら、さらに指を動かす
検索
ホテル名
レビュー
周辺情報
そして——
「……やっぱり」
呟く。
その場所は、偶然立ち寄るような立地じゃない。
明確に“目的がある人間”が選ぶ場所。
(完全に、誘導されてる)
次に思い出すのは——
音羽の顔
何も言わなかった
怒りも否定もただ、見て
去った
(……知ってたのか?)
あの反応は——
“初めて見た人間”のそれじゃない。
理解していた
状況も
意図も
(全部)
「……なるほど」
小さく呟く。
(そういうことか)
まだ、確定じゃない。
でも——
“方向”は見えた
どちらが嘘をついているか
どちらが、隠しているか
答えは、もうすぐそこにある
「……ちゃんと見ますよ」
誰に言うでもなく、呟く
もう、迷いはなかった。
確かめる
全部
嘘も真実も
その先で
何を選ぶかは——
自分で決める




