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違和感の正体

第27話 陸side


最初に違和感を覚えたのはあの日だった。


眼鏡を外した音羽を見た瞬間

一瞬だけ言葉が出なかった。


今まで何度も顔を合わせていたはずなのに

まるで別人みたいに見えたからだ。


整った輪郭

はっきりとした目元

無駄のない表情


そのどれもが

作られたものじゃなくて

ただそこにあるだけで

完成しているような印象だった


綺麗だと思った

正直に


でも

それをそのまま言葉にするのが上手くできなかった

何を言えばいいのか分からなくて結局「似合ってる」としか言えなかった自分に少しだけ苛立った。


ああいう時、もっとちゃんと伝えられる人間だったらよかったのにと思う。


でも音羽は、それで十分みたいな顔をしていたから、それ以上何も言えなかった。

無理に踏み込める距離でもなかったし、そもそも自分はそういうことが得意じゃない


それでも、目が離せなかったのは事実だった

視界に入るたびに、自然と意識が向く

理由は分からない


ただ、そうなっていた

だからこそ、真凜の話を聞いたとき、余計に引っかかった


「怖い姉」

「厳しい」

「家でも居場所がない」

言葉だけを並べれば、それっぽく聞こえる


でも、どこかが噛み合わない


音羽の態度と、真凜の言葉が一致しない


あの人は、必要以上に何も言わない

自分を良く見せようともしないし

誰かを下げるようなことも言わない


ただ、淡々としているだけだ。


それが逆に

嘘をついている人間のそれには見えなかった。

じゃあ、どっちが本当なのか考えたときに、すぐ答えが出ない時点でおかしいと思った


普通なら、どちらかに寄るはずだ


でも今回は違う


どちらの話も完全には信用できない


ただ、その中で確実に言えることが一つだけある。


真凜の“偶然”が多すぎるということだ


最初はたまたまだと思った

街中で会うことなんて、あり得ない話じゃない


でもそれが何度も続くと話は別だ

場所も時間も、妙に噛み合いすぎている。

狙っているとしか思えない精度だった


しかも、そのたびに距離を詰めてくる

自然に見せかけて、確実に近づいてくる

あれは偶然じゃない

意図的な動きだと、ようやく確信した


そうなると、話も変わってくる

偶然を装って近づいてくる理由


わざわざ自分にだけ弱い部分を見せる理由


何のために?


全部が一つに繋がる“作っている”という結論に

そこまで考えたとき、背筋が少しだけ冷えた


あの涙も

あの声も

全部計算だとしたら?


じゃあ、自分は何を見せられているんだろうと、ふと思う。


試されているのか、それとも利用されているのか。


どちらにしても、いい気分はしなかった


だから、決めた

誰かの言葉じゃなく、自分で確かめる

表に出ているものじゃなくて

隠れているものを見る


その方が、性に合っている。


スマホを取り出す。


小鳥遊真凜の名前を検索する


インフルエンサーとしての情報はすぐに出てくる


綺麗に整えられた

写真

理想的な生活

完璧なイメージ


でも、知りたいのはそこじゃない


指を動かす。


タグ、過去の投稿、関連アカウント


少しずつ、外側から崩していく


完璧なものほど、どこかに歪みがある


見えないように隠しているだけで

完全に消すことはできない


だから、探す

時間をかけてでも


嘘があるなら

必ずどこかに残っているその痕跡を


静かな部屋の中で、画面の光だけが浮かんでいる


指を止めない

視線も逸らさない

音羽の顔が、ふと頭に浮かぶ


あのときの、何も言わない目


否定も、肯定もしないまま

ただこちらを見ていた視線


あれが、妙に残っている。


(……ちゃんと見たいと思った)

あのとき口にした言葉を、思い出す


軽い気持ちじゃなかった

少なくとも、自分の中では


だから——確かめる


どっちが本当か

どっちを信じるか

それを決めるのは、最後でいい


今はただ、事実を集める

余計な感情を挟まずに


静かに、確実に

画面をスクロールする指先に、迷いはなかった


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