表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
26/44

選びかけている側

第26話 


夜の空気は、少しだけ冷たかった。


人通りの少ない道。

仕事帰りの足音が、静かに響く。


「……音羽さん」


呼び止められる。


振り返ると、神楽陸が立っていた

少しだけ息が上がっている。


(追いかけてきた)


「……どうしたの?」


何も知らない顔で、聞く


「少し、話せますか」


その声は、前よりも迷いが少なかった


近くの公園

ベンチに並んで座る

距離は、少しだけ空いている


でも——前より近い


「……妹さんのこと」


来ると思っていた。


「色々、聞いて」


言葉を選んでいる。


でも今回は逃げない



(変わった)



「それで?」

先を促す。


「……違和感があって」

その一言。


音羽の目が、わずかに細くなる


(いいね)


「どこに?」

静かに聞く


「言ってることは、それっぽいんですけど」


「……全部、“そう見える話”なんです」


(ちゃんと見てる)


「具体的なことが、何もない」


「なのに、印象だけは強い」


その分析に

ほんの少しだけ、空気が変わる


(ここまで来たか)


「……じゃあ」


音羽は、少しだけ首を傾げる


「どうするの?」

試すように


陸は、一瞬だけ言葉を止めて


「自分で、見ます」

はっきりと、言った。


その答えに

音羽は、ほんの少しだけ笑った。


(正解)


「そっか」

それ以上は、何も言わない。



“助けない”


“誘導しない”


自分で選ばせる

それが、一番強い。


「……あと」

陸が、少しだけ視線を落とす。


「あなたのことも」


「ちゃんと見たいと思ってます」


その言葉に

ほんの一瞬だけ、時間が止まる。


(……来た)


でも

音羽は、すぐに視線を逸らした。


「今さら?」

軽く、笑う


でもその奥に、ほんの少しだけ棘を残す


前世の記憶


信じて、裏切られた過去


簡単には、近づかせない


 


「……そうかもしれません」

陸は、否定しない。


「でも」

顔を上げる。


「それでも、見たいと思ったので」 

まっすぐな目。


逃げない視線。


(……面倒な人)


でも


嫌じゃない

 

「勝手にすれば」

素っ気なく返す 


その声は、少しだけ柔らかかった。


沈黙が落ちる

でも、気まずくはない。


前とは違う空気

少しだけ、近づいた距離


「……送ります」


「大丈夫」

即答する

 

依存しない


 

でも


「……途中までならいいよ」

少しだけ、譲る


その一歩

ほんのわずかな距離の変化


でもそれは——

確実に、関係を変えていた。


(選び始めてる)

どちらを信じるか。


誰を見るか。

その答えは、まだ出ていない。


出てはいないけど


確実に、傾き始めていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ