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逃げ場のない証明

第20話 


夜は静かだった


家の中はいつも通りの音に満ちているはずなのに

どこか薄く感じる


笑い声も

テレビの音も

全部が遠い


(……慣れた)


この場所にいることに

もう何も感じない


かつてはここが“世界のすべて”だったのに

今はただの観察対象にすぎない


音羽は自室のドアを閉め

鍵をかける


机の上にスマホを置き

ゆっくりと座った


(始める)


指先が迷いなく動く


前世の記憶をなぞるように

必要な情報を一つずつ拾い上げていく


まずは




小鳥遊真凜



インフルエンサーとして

表に出ている顔は完璧だ


笑顔

加工された写真

夢みたいな生活


けれど

その裏側は全部知っている


(裏アカ)


検索ワードを打ち込む


前世で一度だけ見た

消されたアカウント


鍵付きで

限られた人間しか知らない場所


少しずつ辿る


フォロワーの中から

関係の濃いアカウントを洗い出す



コメントの癖


投稿時間


繋がり


点と点を結んでいく



(……あった)


鍵のかかったアカウントにたどり着く


中は見えない


でも、ここで終わりじゃない


フォロワー一覧


そこにいる特定の名前


前世で見た男のアカウント


そこから逆に辿る


タグ付けされた過去投稿


消しきれていない痕跡

スクリーンショットを撮る


保存


日時も含めて、全部記録する



(逃げられない形で)


次にメッセージ


これは時間がかかる


でも、方法はある


妹は詰めが甘い


ロックはしている


でもパターンは単純だ


前世で何度も見てきた手の動き

迷いなく入力する


解除


画面が開く


(……ほんとに変わってない)


少しだけ、笑いそうになる


トーク履歴を開く


例の男とのやり取り


最初は軽い会話


次第に距離が近づいていく


会う約束

ホテルの名前

日付

全部揃っている



(十分)


スクショを取る


クラウドに保存

別の場所にもバックアップ

消されても問題ないように、何重にも


スマホを元に戻す


痕跡は残さない



(次)


視線が少しだけ冷たくなる


両親


金の流れ

これが一番重要だ


前世では知らなかった


でも今は違う


保険金

使い込まれた金

それがどこに流れたのか


完全な証拠にする


引き出しを開ける


奥にある書類


普段は誰も触らない場所


そこに通帳のコピーがあるのを知っている


ページをめくる


数字を追う


入金

大きな額

日付

事故の後

間違いない



(……これが)


指が、わずかに止まる


でもすぐに動かす


感情は、今はいらない


必要なのは事実


写真を撮る


ページごと、抜けなく


さらに

別の名義の口座移動した形跡


隠すつもりだった流れ


全部、繋がる



(これでいい)


スマホを置く


ゆっくりと息を吐く


ここまでで、三つ揃った

妹の妊娠に繋がる関係

裏の顔

両親の金

どれも、単体でも致命的


でも——



(まだ足りない)


音羽は静かに目を細める


(一撃で終わらせるには)


バラバラに出しても意味がない


全部を、一つの線にする


逃げ場がない形で

否定できない形で

誰が見ても分かるように



(……そのために)


必要なのは、“第三者”


自分だけの証拠じゃ弱い

外から見ても確定する証明

それを用意する



(……神楽陸)


ふと、その名前が浮かぶ


偶然じゃない再会

違和感に気づく男

あの目

表面だけで判断しない人間


(使える)


でも同時に、少しだけ別の感情が混じり

すぐに消す


(今は、まだいい)


復讐が先


全部終わらせる

それからだ


机の上のノートを開く

ペンを取り書き出す


日付

名前

証拠の種類

繋がり

全体像を整理する



(……綺麗にハマる)


ピースが揃っていく

最初から決まっていたみたいに、ぴたりと


気持ちがいいくらいに


(逃げ場はない)


ぽつりと、呟く


もう誰も、言い逃れはできない


妹も。弟も。両親も。



(全部、終わり)


その未来が

はっきりと見えた



ゆっくりとペンを置く


スマホの画面に映る自分を見る

前世のような怯えた顔じゃない

泣きそうな顔でもない


ただ、静かで、冷たい目


(……これでいい)


立ち上がる


カーテンの隙間から夜の街を見る


光が遠くに滲んでいる



(もうすぐ)


すべてが崩れる

あの時、自分が壊されたみたいに



(今度は、私が壊す番)


その思考は、驚くほど自然だった


罪悪感はない


ためらいもない

これは復讐であり


清算だ


奪われたものを取り戻すための

当然の手段


静かに目を閉じる



(次は)


準備は整った


あとは——

動かすだけ


世界を


運命を


全部、自分の手で


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