仕組まれた再開
第19話
カップの縁に口をつけながら。
視線は、ほんのわずかにだけ動かす。
(……あそこ)
店の奥。窓際の席
そこにいるのは——
見覚えのある横顔
前世で、少し会話をしてただすれ違った男
それなのに、なぜか記憶に残っていた存在
(……やっぱり、いる)
偶然じゃない
この店、この時間。
全部、前世の記憶から引き出してきたもの
——ここに来れば、会えると知っていた
「ねえ、聞いてる?」
妹の声
「うん」
適当に返しながら、意識は別の場所にある
(どう動くか)
ただ話しかけるだけじゃ弱い
印象に残らない
必要なのは——
**“引っかかり”**
記憶に残る違和感
タイミングを測る
男性が席を立つ
レジへ向かう
(今)
音羽も、立ち上がった
「ちょっと、先出てるね」
妹の返事を待たずに、歩き出す
レジ前
数歩の距離
——ぶつかる
「すみませ……」
言いかけて、止まる
視線が、絡む
ほんの一瞬
でも、確実に
「……」
何かに気づいたような目
(いい)
その反応
「……大丈夫ですか」
先に口を開いたのは
前世の時のあの男だった
低くて、落ち着いた声
「……はい」
短く返す
それ以上は、何も言わない
普通なら、ここで終わる
でも——
「……どこかで、会ったことありますか」
来た
(さすが)
内心で、わずかに笑う
「……ないと思います」
首を横に振る
でも
ほんの少しだけ、間を置く
それだけで
“違和感”になる
「……そうですか」
納得していない顔
そのまま、すれ違う
振り返らない
それが、一番残る
店の外に出る
深く、息を吐いた
(これでいい)
興味は引いた
あとは——
向こうが、動く
数分後
後ろから、足音
「……すみません」
やっぱり、来た
振り返る
「さっきの」
男が、少しだけ困ったように笑う
「やっぱり、気になって」
その目は、まっすぐだった
ただのナンパじゃない
「……なにがですか?」
あえて、分からないふりをする
「……あなた」
即答だった
その言葉に
ほんの少しだけ、目を細める
(面白い)
「……変な人ですね」
小さく、笑う
「よく言われます」
即答
間が、合う
(……この人は)
使える
でも
それだけじゃない
「……名前、聞いてもいいですか」
自然に、聞く。
「神楽 陸です」
やっぱり
(間違いない)
「……音羽です」
名乗る。
その瞬間
何かが、静かに動き出した
これは偶然じゃない
仕組んだ再会
でも
そんなのどうだっていい
この出会いが後に
復讐だけで終わるはずだった私の人生を
大きく変えることになるとは
このときの音羽は、まだ知らなかった




