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妹side 


(……思ったより、簡単かも)


 


ソファに座りながら、スマホをスクロールする。


 


画面には、見慣れた名前。


 


——小鳥遊 玲央


 


 

少し調べれば、すぐに出てきた


 


住んでいる場所


学校


生活レベル


 


「……ふーん」


思わず、笑みがこぼれる。



古いアパートの外観。


ぼやけた写真越しでも分かる、安っぽさ


 


(ああ、やっぱり)


予想通りだった。


 




「大変そうだねぇ」 


口ではそう言いながら


心の中では、真逆のことを思っていた



(そりゃ、あんなの育ててたらそうなるよね)


ネイルをいじりながら、軽くため息をつく


 


 


——でも



「ちょうどいい」



ぽつりと呟く


貧乏 


疲れた見た目


余裕のない生活

 


 

全部、“使える”

 


  


「むしろ、ありがたいかも」


くすりと笑う。


 


必要なのは、ストーリー


 

誰が悪くて

 

誰が正しくて



どうすれば、自然に見えるか

 







(誘拐、かな)


少し考えて、頷く


 



一番分かりやすい



一番、同情を引ける





「長年、子供を奪われてました~って」


鏡に映る自分に向かって、軽くポーズを取る


 




「やば、泣ける。アハハ」


自分で言って、自分で笑う


 


(で、取り返したら——)


頭の中で、未来が広がる。


 




“ママインフルエンサー”



子供との日常。



「奇跡の再会」とか、絶対ウケる


 

フォロワーも、仕事も、全部伸びる


 





「完璧じゃん」


小さく呟く


 


あとは







タイミングだけ


 


 




数日後

 


 


 


 


放課後の時間を狙った

 


人通りの多すぎない場所


 

でも、完全に二人きりにはならない位置


 


ターゲットは、もう分かってる



 


「……いた」


遠くに、小さな背中

 

その隣に、見慣れた影

 


 


(あれが——)


じっと見つめる





少し猫背で


服も地味で


(……ほんとに、変わらない)





思わず、内心で笑う


 



そして


 


その隣にいる——


 


(……へぇ)


少しだけ、目を細めた


 


顔立ちは、確かにいい


整っている



(素材は悪くない)




ゆっくりと、一歩踏み出す



ここからは、演技


 


完璧に


 



「……あの」


少しだけ震えた声を作る


 


二人が、同時に振り向く


視線が、ぶつかる


 



その瞬間

 


 


 


わざと、息を呑んだ


 


 



「……っ」


目を見開く


 


 

手を震わせる


 


 


「……そんな……」


かすれた声で、呟く

 


 




「……うそ」

 

一歩、近づく

 


 


 


 


「……生きてたの……?」


その一言で。


 


 


空気が、変わる



 


 


「……え?」


音羽の声が揺れる




その横で


小さな視線が、こちらを見上げていた


 



 

(……来た)

 


その目


好奇心と、不安と


少しの——興味


 


 

 


しゃがみ込む


目線を合わせる


 


 


 


「……ごめんね」


優しく、微笑む

 


 


 


 



「ずっと、会いたかった」


ゆっくりと、手を伸ばす 


その指先に


ほんの一瞬だけ、迷いが見えた


 


(……触れる)


その前に

 


 



「……だれ?」


小さな声が、響いた


 


 


その問いに

 

一瞬だけ、間を置いて


 

 


そして——




「……ママだよ」


 



大きな瞳が、私を映した


私は微笑む


完璧な、母親の顔で


はっきりと、そう言った


 


 




時間が、止まる


その一言が



静かに、確実に

 


何かを、壊し始めていた



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