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見つけられた才能

第11話 

それから数年経ち



「ねえ、ママ」


 


帰り道


手を繋ぎながら、ふと声をかけられる。


 


「なあに?」



「今日ね、学校でさ」


少し嬉しそうな声。



「先生に褒められた」


 

「え、本当?」


 

思わず足を止める。



「すごいじゃん」


頭を撫でると、少しだけ照れたように笑った。


 



「……うん」


その顔を見て、胸がじんわりと温かくなる。



「ねえ」


今度は、少しだけ声のトーンが変わる。


 


「ぼく、もっと頑張ったらさ」


 

「うん?」



「すごい人になれるかな」


その言葉に、少しだけ驚く


 

「なれるよ」


迷いなく、そう答えた

 


「絶対、なれる」


その一言で、ぱっと顔が明るくなる



「ほんと?」



「うん」 


強く頷く。


 


——この子なら、大丈夫。


そう思えた

 



そのときだった


 



 


「すみません」


後ろから、声がかかる。


振り返ると、一人の女性が立っていた。


 


 

落ち着いた服装


 



どこか仕事ができそうな雰囲気。


 




「突然すみません」


軽く頭を下げられる

 


「そのお子さん……」


視線が、隣に向く

 



「とても目を引く顔立ちをされていますね」

 

一瞬、意味が分からなかった

 


 


 


 


「え……?」


 


「よろしければ、お話させていただけませんか?」


差し出されたのは、一枚の名刺。


芸能事務所の名前が、書かれていた。


 


「ス、スカウト、ですか……?」


思わず、聞き返す。


 


「はい」


にこりと笑う女性

 



「モデルや子役として、十分通用すると思います」


頭が追いつかない。




そんな世界、自分には縁がないと思っていた。






「ぼく……?」


隣で、小さく呟く声。


 

その顔は、少しだけ戸惑いながらも——




どこか、嬉しそうだった


 


 

 


「無理にとは言いません」


女性は柔らかく続ける

 



「ただ、一度だけでも見ていただけたら」


名刺を受け取る手が、少し震える。


 


 


——もし、これが本当なら。


この子の未来が、変わるかもしれない。


 


 


 


 


 


「……考えさせてください」


そう答えるのが、精一杯だった。


 



帰り道

さっきまでの空気が、少しだけ変わっていた。


 




「ねえ、ママ」


 


「うん?」


 

 

「テレビとか出れるのかな」


期待に満ちた声。


 


「どうだろうね」


曖昧に答える


正直、分からない


 


でも

 



「……出れるかもしれないね」


そう言うと、嬉しそうに笑った。


 


 


 


(テレビ……)


その言葉が、頭に残る。



(かっこいい服とか、着れるのかな)


ふと、思う。

 


(みんなに、すごいって言われるかも) 


ちらりと、隣を見る。


 


(……そしたら)


一瞬だけ、思考が止まる。



(ママも、変われるのかな)



今のままじゃなくて

もっと、綺麗になって


もっと、ちゃんとした…

 



(……)


何かを考えかけて、やめた。


 


 


 


「どうしたの?」 


音羽の声に、はっとする。


 


「ううん」 


笑って、ごまかす。


 

繋いでいる手は、変わらず温かい


それなのに



 


ほんの少しだけ


その温もりが、遠く感じた気がした



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