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砂漠に降り立つ影

その瞬間――風が止まった。


いや、風より速い“何か”が通り抜けた。


「……え?」


帝国兵の武器が、真っ二つに折れていた。


砂煙の中に、黒い布をまとった長身の男が立っていた。

日光を反射するショーテルが、静かに揺れている。


帝国兵たちは恐怖に顔を引きつらせた。


「堕英雄……!

 ザラフ=サンドレイ……!」


男は肩をすくめ、面倒くさそうに言った。


「懐かしい魔力に誘われて来てみたら

 帝国のクソどもに会うとは気分が悪い」


「囲め! 逃がすな!」


帝国兵が叫ぶが、ザラフはため息をついた。


「お前らはもう俺の姿は見納めだ。

 ……デスステップ」


地面を蹴った瞬間、ザラフの姿が消えた。


帝国兵の背後に現れ、ショーテルが閃く。


一人、また一人と倒れていく。


帝国軍の兵士はザラフの姿を二度と確認する間も無く全滅した。


ポルは確認するように問いかけた。


「もしかして......ザラフ族長か……?」


ザラフは振り返り、ポルを見て、そして気絶したアッシュに視線を落とし、表情を緩めた。


「久しぶりだな、ポル。

 そいつの魔力を感じでまさかと思ったが

 本当に生きてたとはな」


ポルは安堵した表情で答える。


「二十年の時を経て蘇ったんだよ」


ほんの一瞬だけ眉をひそめる。


「昔と違って魔力が少ない......違うな

 抑えられてる感じが近いか。

 何があった?」


ポルは驚いたように言った。


「……分かるのか?

 ......記憶を失ってる......

 エリシアのだ......」


ザラフはアッシュに視線を向けた。

「......どっちが地獄なんだかわからないな」


そう言いながら、ザラフはアッシュの身体を軽々と肩に担ぎ上げた。


レーネは驚きの声を漏らす。


「え……アッシュ殿を……?」


「お前らじゃ運べねぇだろ。

 見りゃわかる」


ポルは小さく息を吐いた。


「……悪いな」


アッシュの頭が揺れないように、肩の位置を微調整する。


ザラフは帝国兵の死体を一瞥し、砂漠の風が吹く方向へ歩き出した。


「ついて来い。

 ここはいつ帝国の追撃が来るかわからん。

 ゼル=アラドまで案内してやるよ」


レーネは静かに頭を下げた。


「感謝します」


ザラフは振り返らずに歩き続ける。

砂漠の風が吹き抜ける。

堕英雄は皮肉を吐きながら、確かに三人を救っていた。

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