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受け継がれる赤炉の誓い

職人街の最奥――

赤い炉の光だけが揺れる、静かな工房があった。


ポルが足を止める。


「……ここだ。ガンロフ親方の赤炉の工房」


かつては弟子が何人も出入りし、火花が絶えなかった場所。

だが今は、炉の音すら弱々しい。


アッシュは静かに扉を押し開けた。



中には、ひとりの青年がいた。

父よりも細身で、まだ若い。

だが、その目だけは鋼のように強かった。


青年は三人を見ると、わずかに驚いたように目を見開いた。


「その剣は......まさか……父の剣ですか?」


ポルが頷く。


「ガンロフ親方には世話になった。

 あんたが息子さんか」


青年――ガンリックは深く頭を下げた。


「父の名を覚えていてくださって……ありがとうございます」


アッシュは壁に目を向けた。


そこには一本の剣が掛けられていた。

刃は黒く焦げ、根元から歪んでいる。


レーネが息を呑む。


「これ……折れてますね……?」


ガンリックは静かに言った。


「それは……以前客の要望に応えられなかった

 俺への戒めだと父は言っていました」


アッシュの表情がわずかに揺れる。


「それは俺に作ってくれた剣だ......」


ガンリックは目を見開いて驚く。


「あなたがアッシュさんでしたか

 父からよく聞いていました。

 あいつには望む剣を作ってやれなかったと」


ポルが首を振った。


「……作れなかったんじゃない。

 作らせてもらえなかったんだ」


アッシュは目を細める。


「軍の規定......」


「そうだ。

 生物兵器に特別製の武器を持たせることは禁止されていた。

 使っていいのは軍の配給品のロングソードのみ。

 試行錯誤してくれたんだが結局アッシュの

 炎に耐えれる武器は出来なかった」


アッシュは静かに目を閉じた。


(あの頃は……そういう扱いだったな)


ポルは続ける。


「アッシュは昔、ドワルガンでは“剣食い”と

 呼ばれてたんだ」


レーネが驚く。


「そんな……!」


ポルは苦笑した。


「仕方ないさ。

 アッシュが剣に炎を纏わせるたび、

 配給品とはいえ、職人達が作った剣が数振りで燃え尽きた。」


「アッシュは常に予備を背負って戦ってたからな。

 あれは……確かに異様だった」


アッシュは淡々と答える。


「必要だった。

 あの頃の俺は……そういう戦い方しかできなかった」


ガンリックは壁の剣を見つめ、拳を握った。


「父は……あなたのための剣を作れなかったことを、ずっと悔やんでいました。

 軍の規定に逆らえず、技術を封じられ期待に

 応えれなかったと」


アッシュは静かに言う。


「……親方のせいじゃない」


ガンリックはアッシュをまっすぐ見つめた。


「だからこそ、今度は私が作りたい。

 父が果たせなかった仕事を、私が継ぎたいんです」


ポルが目を見開く。


「ガンリック……!」


ガンリックは炉に火を入れた。

赤い炎が、工房全体を照らす。


「あなたの炎に耐える剣……

 今の私なら、作れるかもしれない」


アッシュはその光を見つめ、静かに頷いた。


「……頼む」


ガンリックは深く息を吸い、言った。


「――必ず、作ります」


赤炉の炎が、再び力強く燃え上がった。

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