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職人街の赤い炉の下で

ドワルガンの中心部へ向かうにつれ、街の空気が変わっていった。

石畳の道は黒く煤け、遠くから金属を叩く音が絶え間なく響いてくる。


ポルが前を歩きながら言う。


「ここから先が“職人街”だ。

 ドワルガンの心臓部みたいな場所だな」


アッシュは周囲を見回し、思わず目を細めた。


「……ドワル族ばかりだな」


そこにいたのは、屈強な体格の者たちばかりだった。

ポルより一回り大きく、身長は140センチほど。

だがその体は岩のように分厚く、腕は丸太のように太い。


男性は皆、胸元まで届くほどの長い髭を蓄え、

女性は逆に、ふわりと広がるアフロヘアーが特徴的だった。


レーネがぽつりと呟く。


「……迫力がありますね」


ポルが笑う。


「これがドワル族だ。見た目は怖いが、腕は確かだぞ」



通りを進むと、鍛冶場の熱気が肌を刺した。

炉の赤い光が路地に漏れ、鉄を打つ音が重なり合って響く。


カンッ! ガンッ! ギィンッ!


アッシュはその音に、どこか懐かしさを覚えた。


(……戦場の前線で聞いた、武具の整備音に似ている)


だが、ここには恐怖ではなく、誇りと活気があった。


レーネが目を輝かせる。


「すごい……! どの工房も活気に満ちていますね!」


「おい、そこの兄ちゃんら!」


振り向くと、巨大なドワル族の男が立っていた。

胸まで伸びた髭を三つ編みにし、腕は岩のように太い。


ポルが一歩前に出る。


「なんだ?」


男はポルの両刃剣を見て、目を細めた。


「その剣……ガンロフの作か?」


ポルは驚いたように頷く。


「ああ。よくわかったな」


男は鼻を鳴らした。


「あいつの剣は見りゃわかる。

 ……で、あいつに用があって来たんなら、残念だったな」


ポルの表情がわずかに曇る。


「知ってる。親方は亡くなったと聞いた」


男は静かに頷いた。


「だが、息子のガンリックが跡を継いでる。

 腕はまだあいつには及ばんが……悪くねぇ。

 会ってみるといい」


アッシュが問う。


「どこに行けば会える?」


男は親指で通りの奥を指した。


「職人街の一番奥、“赤炉の工房”だ。

 あそこがガンロフ家の工房だよ」


ポルは深く頷いた。


「助かった」


男は豪快に笑い、再び鍛冶場へ戻っていった。


レーネが小声で言う。


「……皆さん、迫力がありますね」


ポルが笑う。


「慣れれば気にならんさ。

 さあ、行こう。ガンロフ親方の息子に会いに」


アッシュは静かに歩き出した。


三人は職人街の奥へと進んでいった。

赤い炉の光が、彼らの影を長く伸ばしていた。

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