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鍛治の国の光と影

ドワルガン領に入ると、山岳地帯特有の乾いた風が吹き抜けた。

岩肌の多い道を抜けると、小さな山村が姿を現す。


ガルドが手綱を引いた。


「ここで一度休みましょう。ドワルガンまでここからまだ五日かかりますので補給します。」


三人は頷き、馬車を降りた。


村の広場で腰を下ろすと、ポルがレーネに声をかけた。


「さっきの盾、あれはすごかったな」


レーネは少し照れながら答える。


「アイス・ウォールは、手から離れた位置にも設置できるんです。

 ただ……離れれば離れるほど硬度が落ちてしまって」


ポルが興味深そうに身を乗り出す。


「じゃあ、あの時のは?」


「馬車のすぐそばに展開したので、ほぼ“手に持っている時と同じ硬度”でした。

 手に持っている盾は……破られたことはありません」


アッシュが静かに頷く。


「確かに、あの盾の壁は強固だった。

 あれがなければ、行商人たちは助からなかっただろう」


レーネは少しだけ頬を赤らめた。


そこへガルドが、湯気の立つ茶を持って戻ってきた。


「皆さん、本当にありがとうございました。

 命の恩人です」


深々と頭を下げるガルドに、ポルが笑って足を叩く。


「気にするな。俺たちも通り道だっただけだ」


ガルドはふと、三人を見回した。


「ところで……皆さんは、なぜドワルガンへ?」


ポルがそれとなく理由になりそうなことを答える。


「俺の両刃剣を作った鍛治職人に会いに行くんだ。

 この剣を打ったのは、ドワルガンの鍛冶師ガンロフだ」


ガルドの表情が曇る。


「……ガンロフ親方ですか。

 残念ですが……親方は、亡くなられました」


ポルの動きが止まった。


「……そう、か」


短い言葉だったが、その声には深い寂しさが滲んでいた。


ガルドは続ける。


「ですが、息子さんが跡を継いでいます。

 腕も確かで、親方の技術を受け継いでいると評判ですよ」


ポルはゆっくりと息を吐いた。


「そうか……なら、会ってみる価値はあるな」


ガルドはゆっくりと立ち上がり


「それでは私は出発の準備をいたします。

 皆さんも準備が出来ましたら馬車までお戻りください」


ポルは軽く手を上げて

「わかった。お茶美味しかったぜ」


ガルドが離れた後にレーネが口を開く。


「さっきのお話は本当ですか?」


「ああ。俺たちが昔世話になった鍛治職人だ。

 アッシュの武器を作ってもらおうと思ってな」


「そういうことでしたら賛成です。

 その武器ではアッシュ殿の力に耐えれそうにありませんから」


アッシュは静かに頷いた。



補給のために村の店を訪れると、年配の村人が三人を見て声をかけてきた。


「ドワルガンに行くのかい? 今は景気がいいぞ」


ポルが首を傾げる。


「景気がいい?」


「冒険者の時代になってな。

 武器も防具も飛ぶように売れる。

 鍛冶屋も商人も大忙しだ」


レーネが感心したように言う。


「それは良いことですね」


しかし、村人は少し声を落とした。


「……だがな。戦争の頃に必要だった“工学”はすっかり衰えちまった。

 あれが国の力を支えていたんだが……今は見る影もない」


アッシュが静かに問う。


「なぜ衰えた?」


村人は苦い顔をした。


「商会が国の実権を握ってるからさ。

 利益にならん技術は切り捨てられちまった。

 国としての力は……昔より落ちてるよ」


ポルは複雑な表情を浮かべた。


「商会が……国を?」


「表向きは王が治めてるが、実際は商会の言いなりさ。

 金が動くところに権力が集まる……そんな時代だ」


アッシュは胸の奥に小さな違和感を覚えた。



補給を終え、馬車の準備が整う。


ガルドが荷物を積み込みながら


「ドワルガンまでは、ここから五日ほどです。

 皆さん、よろしくお願いします」


アッシュが短く返す。


「こちらこそ」


レーネは笑顔で馬車に乗り込む。


「さあ、行きましょう!」


馬車が動き出し、山岳の風が三人の旅路を押すように吹き抜けた。

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