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氷壁の影で決めた道

夜の冷気はまだ鋭く、

遠くに見えるイシュヴァルの氷壁が月光を反射していた。

三人は焚き火を囲み、静かな夜を過ごしていた。


レーネは白銀の髪を揺らしながら、寒さなど感じていない様子。

ポルは火をつつきながら、アッシュの横顔をちらりと見る。

アッシュは炎の揺らぎを黙って見つめていた。


レーネが明るい声で切り出す。


「さて! まずは今後の方針ですよね!」


ポルは火の棒を置き、

「そうだ。

 俺たちは昔、帝国の命令で各国を巡っていた」

 

アッシュが静かに目を上げる。


「……色々な場所に行かされた」


レーネが地図を広げる。

焚き火の光が大陸の輪郭を照らした。


「この大陸を巡るなら、まずは“地理的に安全な順番”が大事です。

 危険地帯を避けつつ、補給しやすいルートで行きましょう」


西:〈鋼鉄の山国ドワルガン〉


レーネが指を西へ滑らせる。


「まずは西のドワルガンです。

 山岳地帯に広がるドワーフの国で、鉱山と鍛冶が盛んです。

 武具・道具の質が大陸一で、行商人が仕入れのため盛んに訪れています。

 山道は険しいですが、治安は安定しています」


南:〈風砂の連邦ゼル=アラド〉


レーネが南へ指を移す。


「次は南のゼル=アラド。

 砂漠の民が部族ごとに自治している連邦国家だったと聞いています。

 二十年前、魔王軍の総攻撃を受けて多くの部族が滅びました。

 今は生き残った部族が集まり何とか国を形成しています」


ポルは驚いたように眉を上げる。


東:〈翠風の森国エルフェリア〉


レーネが地図の東側をなぞる。


「南を抜けたら東のエルフェリア。

 大森林に広がるエルフとポポル族の国で、魔力の流れが豊かな土地です。

 森の奥は危険ですが、外縁部は比較的安全で、

 自然の恵みも多いので補給しやすいですよ」


ポルが小さく呟く。


「俺の故郷だ……」


中央:〈サン=レガリア帝国〉


レーネが中央を指しかけて、ふと手を止める。


「……中央のサン=レガリアは、行くべきではありませんね。

 人も情報も多いですが、我々には危険が多すぎます」


ポルが低く言う。


「中央は……避けた方がいい。

 リスクが高すぎる」


レーネも真剣に頷く。


「なので、巡るのは“西 → 南 → 東”の三国です」


アッシュは地図を見つめ、静かに言った。


「わかった。……西、南、東。

 その順に回る」


レーネが少し安心したように微笑む。


「はいっ。その順番が一番安全です!」


ポルも頷く。


「よし。

 明日の朝一で西へ向かうぞ」


アッシュは焚き火を見つめたまま、短く答えた。


「……分かった」


夜空には星が瞬き、

三人の影が揺れていた。

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