盾が加わる夜
城の出口へ向かうアッシュとポル。
夜風が吹き抜ける石畳の先で、
明るい声が響いた。
「アッシュ殿ーっ! ポル殿ーっ!」
二人が顔を上げると、
城門の前で一人の女性が手を振っていた。
白銀の髪が月光を受けて淡く光り、
蒼い瞳は夜でも澄んでいる。
その瞳は、寒冷地の空気のように澄み切っていた。
彼女の背後には、
魔力で形成された巨大な盾が浮かんでいる。
氷の結晶のような紋が淡く輝き、
冷気にも似た気配をまとっていた。
ポルが小さく呟く。
「……イシュ族か。
そりゃ、タフなわけだ」
女性は駆け寄り、
満面の笑みで二人の前に立った。
「レーネ=ヴァルトです!
今日から護衛を務めます!」
声は明るい。
だがその奥に、
“折れない芯” が確かにあった。
アッシュは静かに頷く。
「……聞いている」
レーネは胸を張り、
魔法の大楯を軽く叩いた。
「王子殿下から状況はすべて伺いました。
帝国の動き、旅の目的……
そして、記憶のことも」
ポルがわずかに肩を揺らす。
レーネは悲しげな顔はしない。
ただ、蒼い瞳でまっすぐに言った。
「大丈夫です。
必要なものは……必要な時に戻ります。
私はそう信じています」
その声は、
氷の民らしい静かな強さを帯びていた。
レーネは明るく笑い、
大楯を背に構える。
「さあ、行きましょう!
私の大楯にかかれば指一本触れさせません!
アッシュ殿を守るくらい、朝飯前です!」
ポルが呆れたように鼻を鳴らす。
「……元気すぎんだろ、お前」
レーネは笑って返す。
「元気じゃないと、務まりません!」
アッシュは静かに歩き出した。
「……行こう」
レーネとポルがその後に続く。
夜の風が吹き抜け、
三人の影が城門の外へ伸びていった。




