第二章
会社帰りに買い物を済ませ帰り着いたマンション。
早速キッチンで買ったものを取り出し、作り始めるのはハンバーグ。
明日は休みだから昼御飯の用に多めに作る。
形を整えたものを半分くらい冷凍庫に入れ、もう半分を焼き出した時だった。
「歩果さん」
「え?」
名前を呼ばれて振り返ろうとした私を包む温かな温もり。
「信吾くん……?」
該当者は一人しかいないんだけど。
あまりの驚きに名前を呼んでしまう。
「ただいま、歩果さん」
「お、おかえりなさい……早かったね」
最近仕事で遅くなるのに、今日はいつもより早いみたい。
「歩果さんに早く会いたかったから」
耳元で聞こえる彼の声がくすぐったくて身を捩る。
すると、逃れようともがく私に彼の腕の力が強くなった。
「ちょ……放しなさい!」
「逃げないでよ、歩果さん」
耳元でクスクスと笑う信吾くん。
絶対わざとやってる……
「逃げないから!」
ジタバタするのを止めて彼に訴えるとやっと解放された。
気付けば息が上がっている。
それに気付いた信吾くんはまたクスクスと笑った。
「何で息切れしてんの?」
「誰のせいよ……」
バクバクなっている胸を押さえ、背後の彼を睨み付ける。
「俺のせいです。すみません」
両手を挙げて降参のポーズをとる彼にそれ以上何も言えず、私は溜め息をついた。




