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ハイスペック転生  作者: flaiy
一章 学園編

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魔法破壊

 エニアスの振り払いを屈んでかわし、次の振り下ろしも自分の木剣に滑らせてなす。下まで振り切ってしまったことでエニアスの動きが止まり、ボクはその隙に攻撃を叩き込もうと重心を動かすが、その背後から現れた影が突き出す細剣を視認すると同時に、左半身を引きながら後ろに下がる。


 エニアスの背後にいたアトラが、タイミングを見計らって位置を入れ替えたことにより、ボクは瞬時に斬撃中心の相手から刺突中心の相手へと意識を切り替える必要が生まれる。既にこの数ヶ月、何度もやって来た事だから今更焦りはしないが、パワー型からスピード型に一瞬にして体の使い方を切り替えるのは、未だに苦労している。


「っ!」


「なっ!」


 アトラの刺突を、木剣を振り上げて大きく弾く。僅かに生じた回転ベクトルの流れに乗り、一度くるりと体を回して、アトラに向けて木剣を横に振るう。しかし、ほんのコンマ数秒の間にボクとアトラの隙間に入り込んだエニアスにより、その攻撃は受け止められる。


 パワーでは負けていることもあり、ボクはそのまま押し飛ばすことも出来ず、距離を空けることを余儀よぎなくされる。


 生まれた距離は一瞬にしてエニアスが潰し、とうの連撃を反応速度頼りに全て受けきる。スピードでは無理と判断したか、振り払った剣を大きく引き下げたエニアスが、ぐっと上体を下げて急加速の重撃を叩き付けてくる。正面から剣の腹で受け止めたボクは、後ろに下がりながら体を浮かして衝撃を殺し、その攻撃を受け止める。


 数メートル飛ばされた後、着地して即座に体勢を整えると、その時には既に、目の前にて、アトラが胸の前に引き寄せたレイピア木剣を突き出そうとしていた。周囲の魔力を薄紫に色付け、光が尾を引いているのではないかと錯覚する程のせまる瞳でボクを見詰め、音速の如き刺突を秒間数発の速度で、剣を正面に構えたばかりのボクに打ち込まんとする。


 すぐ後ろには、壁がすぐそこにあるから、下がって回避は不可能だ。かといって、剣で全てを防ぐにも、エニアスの高火力を受けたばかりで、アトラのスピードに着いて行ける状態では無い。そう判断し、倒れ込むように左前に床を蹴って、アトラの剣がなびく髪を貫くのを感じながら、刺突が飛んでくる範囲から退避する。


 受身を取りつつアトラから距離を取ったはいいが、今度はすぐにエニアスが剣を振り下ろして来る。しゃがんでいたのをいいことに、そのままバックステップで回避。


 接近しながらの振り上げを上体をらして躱すと、エニアスは振り上げた勢いそのまま剣を引き、刺突を仕掛けてくる。左半身を引き、正面を過ぎるエニアスの剣を持つ右手を左手で掴む。そのまま進行方向に引っ張りながら、右手で持った剣のつかがしら鳩尾みぞおちに叩き込む。


「がっ!」


 ガクンと脱力したエニアスを反時計回りに振り回し、接近していたアトラに投げ付ける。すぐそこまで近付き、スピードも乗っていたアトラは避けることも出来ずに、真正面からエニアスを抱き留め、ボクの目の前で動きを止めた。そして、そんな二人の首筋に木剣をてがう。


「ボクの勝ち」


「ゲホッ……くそ、判断ミスった」


 鳩尾の一撃が響いているからか、咳き込んで掠れた声のエニアスがそう反省を零す。


「すみません、壁際に追い込むことは出来たのですが……」


「……攻撃に重きを置き過ぎたな。とはいえ、あれを回避出来る奴なんて余程のだれだけだ。大抵の奴には通用する」


「そう言って頂けると、助かりますわ」


「規格外ですみませんね。でも、二人とも良かったよ。何度か危ない場面もあったし」


 以前に比べるといがみ合いは減った……のかは分からないが、少なくとも今のようにポジティブな声掛けの増えた二人に、戦ってみての感想を述べる。実際、初めの頃はどのタイミングで入れ替わるのかを、ずっと睨み合って文句を言い合っていたのだが、今となっては相方の動きをしっかりと見てスイッチを取り入れられている。


 ボクがパリィを警戒した立ち回りをしていたから、パリィアンドスイッチはやれていないものの、それをしなくても互いの隙を埋め合うように動けているため、敵としては息付く暇もなくてかなり厄介だ。ただでさえ、この二人は個人でも強いのに。


「そもそも、プロティアはまだ本気を出していないからな……この程度じゃ、まだまだ足りない」


「え、本気だけど」


「魔法を使っていないではありませんか」


「……あー、そういう」


 確かに、ボクの本来の戦闘スタイルは魔法剣士だ。皆に隠れてピクシルと特訓しているからちゃんと見せたことは無いのだが、ボクの適性的には魔法の方が向いているから、そういう結論になっているのだろう。


「そうだなぁ……今日は今ので実戦形式はやっちゃったから、明日屋外でやってみる? ボクの魔法ありで。ただ、そうなると二人が不利になりすぎるから……うん、カルミナとイセリーにも手伝ってもらって、二人の剣に魔力をまとわせて貰おう。それなら、魔法も防げるし」


「……あれをやるのか」


「……大変なんですよねぇ、あれ」


 二人の言うあれとは、魔法破壊のことだ。魔力を纏わせた武器や、魔力を一定量以上含んでいる通称魔力武器を使えばやれる技術なのだが、かなり難易度の高いものとなっている。


 本来、魔法というものは、発生している現象の中心に核となる部分が存在する。言ってしまえば、そこが生じさせる魔法の情報を持った遺伝子となるわけだ。魔法破壊は、この核を破壊することを指している。


 ピクシルの既知の知識と、今日までの一年ちょっとで執り行ってきた実験から分かったことなのだが、魔法は、体外に出たタイミングでは、膜のようなものに覆われており、その中に発現させる魔法に応じた特定の状態を持つ魔力が格納されている。そして、術師の干渉により魔法が発動されると、その膜が弾けて魔力が持っていたエネルギーが放出され、現象として発現する。この時、エネルギーを放出した魔力は基底状態となって空気中にさんするのだが、術師が干渉を続けている間、つまり魔法を維持している間は魔法を発現させ続けなければならない。


 その場合、術師は発動している魔法に追加で魔力を飛ばしていることになるのだが、供給が追い付かなければ魔法は途中で消えてしまう。それを防ぐために、魔法の維持をする際は、現象の中心に魔法として発動していない魔力を保持することで、魔法を発現させ続けるようになっているようだ。


 まあ、やっていることとしては、何段階にも分けて推進力を得る多段階ロケットと似たようなものだ。膜を二重にすることで、第一段階の魔法を発動させながら核の魔力を残し、一段階目の魔法が消える前に二段階目の魔法を発動させる。そこに追加で魔力を注ぎ込むことで、新たな核を生み出して連続で同じ魔法を発動させて維持しているように見せているのだ。


 ん? じゃあ維持するのって無駄じゃないか、敵のいる場所で魔法を発動させた方がいいじゃないか、だって? それは本当にそう。ただ、離れた場所での魔法発動は、位置の調整や干渉へのタイムラグなどの問題で、意外と難しいのだ。そのため、基盤となる魔法を近くで発動させてから、維持しつつ移動させて目的の魔法を発動させる、という形が定着しているとボクは推測している。


 ちなみに、核を破壊すると追加の魔力を送り込んでも魔法は発動しない。理由はこれも推測になるのだが、追加の魔力は魔法の維持という目的を持っているため、その目的を果たせない以上上手く動作しなくなるのだと思われる。魔法破壊はこれを狙って起こしているのだ。


 で、話は戻るのだが、二人が魔法破壊を大変と言っている理由は、魔力が量子に似た最小単位レベルのサイズであることにいんする。言ってしまえば、核が死ぬほど小さいのだ。ボクは魔力振動で場所を特定出来るのだが、そんなことは出来ない二人にとっては、核の場所は正確には分からない。一応、核は基本的に現象の中心に存在するのだが、形状によっては中心を特定出来ない場合もあるから、二人は勘でどうにかするしかない。


「剣だけで勝てるようになってから、にしましょうか」


「その方がいいかもな……魔法使いを相手するなら、そっちの二人の方が互いの練習にもなるだろう」


 エニアスがそう言いながら、道場の端で合体魔法の練習をしている二人に視線を向ける。


 カルミナが火球から蛇への変形をしているのを、隣でイセリーが成功例を見せながら指導している。もう魔法逆転した方がいいのでは、と思わなくもないが、イセリーの魔力器官では出力が足りないらしく、カルミナの希望もあってこのままだそうだ。


 ちなみに、完成系としては、イセリーが氷魔法で広範囲の敵の足元を凍らせて移動を制限させ、そこにカルミナが炎の八岐大蛇やまたのおろちを叩き込む、というものを想定しているらしい。確かに、動きを制限させられた上で前方八方向から炎が迫ってくる、となると、普通に死を覚悟する。実用性としては申し分ないだろう。


「あと少しなんだよな……」


「何が?」


「……お前には教えない」


「む、師匠として弟子の隠し事は見過ごせんな。おら、吐け!」


「な、おい、やめろ!」


 エニアスの両頬を引っ張りながら脅してみたが、しばらく経っても話してくれなかった。師匠悲しい。


「ってぇ……」


「相変わらず仲のよろしいことで」


「そう?」


「ええ。将来、お二人は結婚するのではありませんか?」


 うふふ、と揶揄からかう時にアトラがよくする、右手で口元を隠しながらの笑みを浮かべる仕草に、いつもボクが揶揄っている仕返しをされているのだと気付く。


「んー……アトラから奪っちゃうのは申し訳ないから、もう少し距離感考えるかぁ」


「「え」」


「……なんでエニアスまで驚いてるのさ」


「い、いや……なんとなく」


 なんとなくってなんだよ、なんとなくって。と思うものの、別に追求する気はないので口にはしない。


「じゃあ、明日の件はなしってことでいい?」


「ええ。いつも通り、剣のみでの実戦に留めましょう。それに、前期の試験も遠くありませんし、今はエニアスさんとのコンビネーションを高める方に集中したいです」


「了解。魔法破壊の練習がしたくなったら、いつでも言ってね」


「……気が向いた時には」


 あの強くなるためならNGほぼ無しなアトラとエニアスがここまで避けたがるとは。魔法破壊、確かに難しいから仕方ないかもしれないけど、この二人は魔法を使えない以上習得した方がいいとは思うんだよなぁ。まあ、実際、炎や突風の中に突っ込んで行って、直径ミリもあるかどうかの核を、幅数センチの剣で斬る必要があるとなれば、かなりの難易度ではあると思うが。


 今度、集中特訓期間でも設けようか。

今回は、戦闘シーンと魔法理論的な内容になりました。一度似たような内容は出て来たのですが、今回は更に深堀った感じの内容になってると思います。ちょっと難しい内容なので、理解しなくても大丈夫です。別にストーリーに大きく関係はしないと思います。単に、作者が世界観を作り込むために書きたくて書いてるだけなので。

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