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55.招待

すみません、投稿順序を間違えました。

こちらは前話よりも先になります。

 ある日の昼下がりの午後――、


「本物の銃の手入れなんて初めてだけど、これであってるのかな……」


「本の通り分解してますけど、元に戻らなかったらと思うとちょっと怖いですよね」


「だなぁ」


 勇馬と莉奈は、これまで1度も手入れしていなかった銃の手入れを行っていた。

 その手順は『ガンのすべて』という本に載っていたので、それを参考に悪戦苦闘しながらも丁寧に進めていた。


「このP230なんてまだそれほど使い込んだわけじゃないけど、結構汚れるもんなんだな」


『ミリマート』でクリーニングキットを購入し、バレル内を清掃していると、クリーニングロッドに取り付けた綿が黒く汚れていた。


「ですね。たくさん撃ったからですかね?」


「多分そうなんだろうなぁ。この手入れも定期的にやらなきゃいけないな。後で莉奈のM24も調べながらやってみようか」


「はい、ありがとうございます!」


 勇馬がそう言うと、莉奈は嬉しそうにM24を眺めた。


「そう言えば、莉奈はあっちでもずっとM24だったよな? 他のものも使いたくならなかったのか?」


「もちろん他のものに惹かれる時もありましたけど……でも、やっぱり勇馬さんが言ってくれた言葉でこの子を使い続けようと決心したんです」


「え? 俺なんか言ったっけ?」


 勇馬がそう返すと、莉奈はショックを受けた顔をし、


「もうっ! 勇馬さんが私に言ってくれたんですよ! 『1つの銃を愛し続けるなんてなかなかできることじゃない。カッコイイことだ』って!」


 彼女がM24を使い続ける理由を勇馬に教えた。


「あ、あー、言った……かも?」


「なんで覚えてないんですかぁ……」


 莉奈は肩をがっくりとさせて項垂れてしまった。


「ごめんごめん、でもなんとなく覚えてるよ。俺も好きで89式小銃使ってたんだけど、ずっとこれだけ使う人ってあんまいないんだよね。だから、同じように1つの銃にこだわって使ってる莉奈に、自分に言い聞かせるように言ったんだと思うな」


「それでも嬉しかったです。周りは18禁銃なのに私は10禁銃、しかも電動ですらないので、いっつも何もできずにやられちゃうんです。だから、せめて電動ガンにしようかなって悩んでた時だったんで、勇馬さんと同じように1つの銃に対する思いを共有できたのがとっても嬉しくて……」


「そうだったのか。確かに10禁銃はバリエーション少ないし、性能も18禁銃に比べて劣るから嫌になる時もあるよなぁ。むしろ、よくここまで諦めずに頑張ってきたと思うぞ? 素直に尊敬するよ」


「えへへ。なんだかこういう話をしてると、サバゲーをやりたくなってきますね」


「だなぁ。あっちに帰れる方法でも見つかればいいんだけど……」


 勇馬は手がかりを得るために、何度か自分が転移されてきた森の中にも行ってみたが、一向にその方法は見つからなかった。


「……このまま帰れないのかなぁ」


 ぽつりと呟く莉奈は、先ほどまでの明るい笑顔とは違い、顔に暗い影を落とした。


「莉奈……」


(しっかりしてるとはいえ、まだ10代で高校生だもんな……)


 何か少しでも気持ちを和らげればと勇馬が口を開こうとすると、


「ユウマ殿、少しよろしいか?」


 扉をノックする音のすぐ後に、ティステの声が聞こえてきた。


「どうぞー」


「失礼するぞ。――っと、リナもいたのか」


「あ、すみません。席外しますね」


「いや、ちょうどいい。リナにも声を掛ける手間が省けた」


 ティステは部屋の中に入ると、勇馬が促した椅子に腰を下ろした。


「ほう……これは武器の手入れでもしていたのか?」


「そそ。この武器は定期的に清掃しないといけなくて、莉奈にも手伝ってもらって2人でやってたんだ」


「ふーむ、実に精巧な作りをしているな。これだけで、私達の世界との技術の差を感じられるほどだ」


「まぁ、確かにかなり精密なものだとは思うよ。ちょっとしたズレや形状の違いで事故も起きるような武器だし、更には火薬の爆発にも耐えられるほどの頑丈さも計算されてるわけだしね。俺が作ったわけじゃないけど、実際凄い武器だと思う」


 銃の発明によって戦争の歴史が大きく変化したことを考えれば、勇馬やティステの感想も大袈裟なものではないともいえた。

 ティステは、未知の技術の結晶に興味津々といった顔で眺めながら頷いた。


「あの、ティステさんは何か用事があったんですか?」


 莉奈が声を掛けると、ティステは「そうだったそうだった」と分解された銃から目を離した。


「実は2人にお願い、というのも変な話なのだがな……私の家に是非招待したいのだ」


「招待?」


「ああ。以前、レオン兄様がユウマ殿を熱心に誘っていたと思うのだがな、私に是非とも家でもてなすように声を掛けろと口を酸っぱく言われているんだ」


 ティステの言葉に「ああ、そういえばそんなことを前に言ってたな」と、勇馬は思い出した。


「それで2人に1度来てもらえないかと、声を掛けさせてもらったんだ。どうだろうか?」


「招待されるほどの者じゃないけど……ティステさんには世話になってるし、レオンさんにせっつかれて困ってるだろうし、俺はいいよ」


「ありがとう! いや、本当に助かる。実を言うと、あれから毎日毎日言われていたのだ……」


「毎日って……うへぇ」


「リナはどうだろうか? ちょうどいい機会だし、初めて会うから紹介できればと思うのだが……」


「私なんかでよければ、もちろん大丈夫です!」


「おお、そうか! 助かるよ、同郷のリナがいてくれればユウマ殿も安心するだろうしな」


「あ、でも……」


「ん、どうした?」


 ほっと安心したように顔を綻ばせたティステに、莉奈は思い出したように口を開いた。


「その場って、ドレスみたいな正装が必要なんですかね? 私、そういったものを持ってないので……」


「あ、言われてみれば俺も持ってないな」


 莉奈の言葉に勇馬も同調した。


「それについては、フィーレ様やルティーナ様、それにキール様も来られる予定なので、私から伝えておこう。恐らく用意してくださると思うので安心してくれ」


「あ、そうなんだ。全員行くんだな」


「ああ、今回の名目上は我が家とクレイオール家の戦勝記念の夕食会といった形のものだからな」


「なるほど。それじゃあ、俺達は気楽に夕食を楽しみにしてるとするよ」


「ふふ、そうですね」


「ああ、そこに関しては期待していてくれ。ユウマ殿のチョコバーのような甘味は出せないが……最高の料理を用意することを約束しよう」


 こうして、勇馬はティステの家、フルーレ家の夕食会に招待されることになったのだった。

新しく投稿を始めました!


『アラサーから始まる異世界無双ライフ 〜スキル『シャドウマスター』は最強でした〜』

https://ncode.syosetu.com/n7861jt/


チートスキルを授かうも役に立たず、おっさんになってから覚醒する物語です!


ぜひ読んでみてください!

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