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2-2.(2)

「ねえスー」


 放課後、並んで学校の最寄りのT駅に向かいながら、リオが菫の顔をのぞきこんだ。


「何かあった?」

「ううん、なんにも?」


 かぶりを振って、菫がぎこちなく笑顔を作る。


「なんでそんなこと訊くの?」

「なんか、ぼーっとしてるから」


 心配そうにリオが言う。


「疲れてる?」


 首を傾げたリオに、


「そんなことないよ」


 菫は作り笑いで答えた。


 本当は、真百合たちに言われたことで、朝からずっともやもやしている。


 リオにそれを話せば、気にするなと言ってもらえることもわかっている。

 というより、自分でも十分わかっているのだ。


(ばかばかしいよ。あんなのでメンタル削られるなんて)


 菫はきゅっと唇を結ぶ。


 あの人たち――真百合たちは、悪意でやっているのだから。


 それに、たとえまわりが悪意抜きで自分のことを友人たちと釣り合っていないと思っていたとしても、肝心のリオたちが気にしていなければどうでもいい。


 ……わかっていても、一度気になるとなかなかすっきりしないもので。


 マスクの下で、菫はこっそりためいきをついた。


 正直、見た目も家も才能も自分と違いすぎるリオが相手なら、周囲に「釣り合わない」と言われてもそこまで気にならないと思う。リオは、友だちというより弟みたいな存在だし。


(……でも、友だちは)


 イケメンだけどコミュ障で、実は恋バナ好きな朔も。ギャルだが成績が良くて、姉御肌の百葉も。菫にとって、どちらも大好きな自慢の友だちで。

 だけど、そんなふたりに自分は――。


 沈んだ表情を隠しきれない菫に、


「……そう」


 さりげなく顔を前に向けたリオが、菫に聞こえないよう小さくためいきをついた。


「じゃあさ、スー」


 リオがのんきな声を出す。


「疲れてないなら、今日、ユキと遊ぶのつきあってくれない?」

「え?」


 急な誘いにきょとんとした菫に、リオが笑いかけた。


「なんか最近ご機嫌斜めなんだよねー、ユキ。忙しくてずっと遊んでやれなかったから、拗ねてるみたいで。スーが顔出してくれたら、元気になると思うんだけど」


 リオの愛犬ユキは、白熊みたいなむくむくの雄犬だ。元保護犬で正確な犬種はわからないが、見た目はサモエドという大型犬によく似ている。賢くて食いしん坊、兄弟のように育ったリオのことが大好きで、リオの幼馴染である菫にも懐いている。


「わかった」


 菫はうなずいた。

 久しぶりにユキと思いっきり遊んだら、このもやもやも吹っ切れるかもしれない。


 ようやく心からの笑顔になった菫に、


「……ありがと」


 リオが、ほっと安堵の息をもらした。




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