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4「狂乱の教室」

   ❤×?999




 僕は思わず飛び上がる。


【パリピの女王】天晴(あまはる)「な、何よ!? 緊急地震速報!?」


【金魚の糞】相曽(あいそ)「分かるwwwwwwwwwwwwww」


【担任】古井戸(ふるいど)典夫(のりお)先生「チミたち! ホームルーム中と授業中は携帯電話の電源を落としなさいとあれほど――」


 僕は、全身が震えているのを自覚する。

 見れば星狩(ほしかり)さんも、真っ青な顔をしている。


 ……こ、こんなの、ただの偶然だ。偶然に決まっている。

 けど、一抹の不安を拭い去る事が出来ず、僕は自分のスマホを開く事が出来ない。


()えの権化】蝿塚(はえづか)映子(えいこ)「ひッ、何コレ!?」スマホを机の上に放り出す。


【パリピの女王】天晴「()え子ったら何してるの? ――えっ!?」スマホを覗き込んで固まる。


 教室のそこかしこから、悲鳴や(うめ)き声が上がり始める。

 クソっ、確かめないわけにはいかないか……僕はスマホを取り出し、自身のTwittooアカウントを開く。すると、プロフィールのヘッダー画像の右上に、






『RT + ❤ = ?999』






 という、見知らぬ文字を見つけた。

 そして、下へスワイプしていくと、まずは固定ツイートの、自作ホラー小説の宣伝。そしてその下には――


「――ひッ!?」


『いいね❤ × 1時間 = 余命』という、先ほど見たのと同じ文字と背景の画像が、勝手にリツイートされている。

 僕が操作したわけでもないのに、いつの間にか、勝手に!!

 そしてそのツイートには、『ルール説明』とある。


『貴方はいいね(ファボ)及び拡散(リツイート)の数 × 1時間だけ生きる事が出来る。いいね(ファボ)及び拡散(リツイート)が尽きると、呪い殺される』


 震える指で、そのリツイートを外してみた。そうする事で、呪いから逃れる事が出来るんじゃないか、という淡い希望とともに。

 果たして――






 ムーッムムッ






「ひィッ」


 即座にスマホが振動して、再び『いいね❤ × 1時間 = 余命』の『ルール説明』がリツイートされた。

 泣きたい気持ちでさらに下へスワイプすると、


『ゲームスタート』


 という、これまた呟いた覚えのないツイート。いいねが1つ付いていて、辿ってみれば、いいねしたのは『いいね❤ × 1時間 = 余命』という名前のアカウント。

 IDは、『favo_min』。

 は、ははは……Twittooをやっていない人が即死しないようにする為の、ボーナスポイントってわけか。


 天晴のアカウントを開いてみれば、僕のアカウントと同じように、『ルール説明』のリツイートと『ゲームスタート』のツイート。

 驚いたのは、『ルール説明』の冒頭の文言が『貴()』だった事。つまり、このウイルスだか呪いだか分からない現象は、対象者の性別を把握する事も出来るし、


【陽キャ男子組の紅一点、褐色フットサル女子】州都(すと)さやか「何だよ何だよ、みんなしてTwittoo、Twittooってさ――…うわっ、オレのスマホにいつの間にかTwittooが入ってる!」


【陽キャリーダー】蹴鞠「ちょっと貸してくれ! うわっ、州都(シュート)、お前のアカウントが勝手に作られてるぞ!?」


 Twittooをやっていない人まで、呪いの中に引きずり込む事が出来る。


【セミプロダンサー】舞姫(まいひめ)麻衣(まい)「何これ!? ハッキング!?」


【お料理YouTober】米里(こめざと)王斗(おうと)「うわぁあぁぁあああッ!!」頭を抱える。「呪いだ! あいつの呪いだぁ!」


【猫可愛がり】猫目(ねこめ)直子(なおこ)「呪いって、スターハンターの!?」


 クラスは騒然となっている。泣き出す女子までいる。


【担当】古井戸「チミたち、いい加減にしなさいッ!!」


 定年間際で、いつもは猫背でボソボソ喋る古井戸先生が、びっくりするほどの大声を上げた。

 それで、クラスはシン……となる。けど、


【素行の悪い下種野郎】種田(たねだ)下太郎(しもたろう)「るっせぇ!」机を蹴り倒す。「こっちは命懸かってるかもしれねぇんだぞ!?」先生の胸倉を掴む。けれど、その声は笑っている。信じていないんだろう。


【担任】古井戸「は、離しなさい! 一体何を言って――」


【陽キャリーダー】蹴鞠「種田、止めろって」


 種田が手を放し、蹴鞠が先生に事情を説明し始める。


【メガネのクラス委員長】長々(おさなが)責夢(せきむ)「諸君、落ち着きたまえ!」教壇に立つ。「これは悪質な悪戯かもしれないし、このアカウントが言うように本物の呪いかもしれない! だがもし本物だとしても、1日につき24いいねあれば死ぬ事は無いわけである。どうだろう、2年4組でリストを作り、1日1回以上、相互にいいねし合うと言うのは? そうすれば、1日につき28時間以上は余命が延びる」


 委員長の提案に、クラスの反応は半々だ。

 賛同する者――大多数の女子は涙ながらに頷いている。

 そして、反対する者。反対する理由は、


【登山部】山野(やまの)(のぼる)「バカらしい。呪いなんてあるもんか」


【釣り人】魚ノ目(うおのめ)漁太(りょうた)「だよなぁ。それに、毎日クラス全員のTwittooをチェックしなきゃならないってのは、物凄く面倒臭い」


 信じていないから。それと、


【Vヲタ女子】馬肉(ばにく)美穂(みほ)「私……その、本名ではやってなくて。でも、ちょっと事情があって晒したくないって言うか――」


 身バレしたくないから。

 ――そう、この『呪い』は恐るべきことに、本名勢以外のクラスメイトたちをも取り込んでいる。

 斯く言う僕も、『物部かるた』という本名ではなく、『物部カタル』というペンネームでTwittooをやっていて、そのアカウントのヘッダ右肩に『RT + ❤ = ?000』という文字が――ひっ!?


 数字が『000』になってる!?

 いやいや慌てるな。液晶の千の位に当たる部分に、以前スマホを落とした時に入ってしまった傷があり、千の位が見えないんだ。さっき見たときには『?999』だったから、1いいねが付いて繰り上がったんだろう。

 数字が見えないのは怖いけれど、なぁに1日で100いいね(とリツイート。便宜上、『いいね』という言葉を使わせてもらう)を稼げる僕だから、きっと数千いいねはあるはず。


 呪いが本物だったとして、何もしなくても半年は生きていられるな。

 いやしかし、これはどうしてしまったんだろう……。


 隣では、星狩さんが体を抱えて震えている。

 て、手を握ったり、だ、抱き締めたりして安心させてあげたいところだけど、人生イコール彼女いない歴のクソザコDTには荷が重い。

 星狩さんには、指の一本も触れた事が無い。

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