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スウィートカース(Ⅰ):人型機兵・フィアの異世界召喚  作者: 湯上 日澄(ゆがみ ひずみ)
第四話「霊魂」
28/32

「霊魂」(8)

 魔王の城は、不気味なほどに静まり返っていた。


 広大な回廊には一定の間隔で朝の陽光が差し込み、わだかまる闇との明暗をくっきり分けている。崩れて風化した建物の砂塵を舞わせるのは、思い出したかのように吹き込む自然の風だ。


 城内の柱の陰から、息を押し殺してあたりを確認する者がいた。


 メネスとフィアだ。


「魔物がいない……」


「大成功ね、セレファイス軍の陽動作戦は」


 昨晩遅く、このふたりだけはいち早く魔王城へ出発していた。


 廃城までの道のりを時間が許すかぎり大きく遠回りし、侵入は無事成功。矢文での脅迫が知れ渡るのとほぼ同じタイミングで獲物が自分からやってくるとは、さすがの魔王も予想しなかったようだ。


 フィアが探知したところ、城内に動く敵の気配はごくわずかしかない。


 物陰から物陰へ素早く走りながら、メネスはささやいた。


「人質はいったいどこに?」


「この先、北東へむけて何度か廊下を曲がった場所よ」


「大広間だな。たしかにあそこなら、楽に百人ぐらいの人間を縛って転がしておける」


 ふいに現れた魔王の手先の気配を、ふたりは崩れた壁の裏側に隠れてやりすごした。


 遠ざかる衛兵の足音に耳をすますフィアには、まだ片腕がない。けっきょく予備の片腕は見つからなかったようだ。壁伝いにしゃがみ込んだまま、フィアはたずねた。


「以前、ここに来たことがあるの?」


「ああ、魔王の存在が知られるすこし前のことだ。ここには濃くて珍しい呪力があふれてる。なにか面白いものが召喚できると思って、ひみつで城じゅうを調べた。都の市場から精力剤の血も買い込んで、そこかしこに魔法陣を描いたよ」


「そう……そういうことね。で、なにを召喚したの?」


「お恥ずかしいことに、まったくの空振りだった。ふだんはなにかしらフィアの部品を召喚できてたんだが、そのときばかりは金属片ひとつ現れなかったよ。そうだ、たしかあのあと急にだれかの足音がしたから、ぼくはあわててここを飛び出したんだ。なにせここは大昔から立ち入り禁止……」


「メネス!」


 メネスと突き飛ばしたフィアとがお互いもといた場所に、爆発的に広がったのは真っ赤な炎だった。闇のどこからか、火の球めいた危険な攻撃が飛来したのだ。高熱の火の粉とそこに混じった独特の要素を嗅ぎ取って、メネスは腕でかばった瞳を瞠った。


「火の呪力……火呪!?」


「我が城へようこそ、メネス・アタール。きっと来てくれると思っていた。私の予言もまんざら捨てたものではないだろう、タイプF?」


 硬い靴音を残して、回廊の闇にぼんやり浮かんだのは不気味な仮面だった。


 まさか、ふたりの侵入はばれていたというのか?


 火呪をかわして投げ出した身を一回転して起こし、叫んだのはフィアだ。


「タイプN……魔王!」


 メネスを守って立ちふさがりながら、フィアの機関銃はすでに魔王の仮面を照準している。だが、フィアの肩に手を置き、前へ進み出たのはメネスだった。


「ご希望どおりこっちから出向いたぞ、魔王。メネス・アタールだ。ぼくをお探しだったんだろう? 約束だ、人質をはなせ」


「……またそんな、よそよそしい。悲しいよ、お兄さんは」


「え?」


 メネスは凍りついた。


 いまの魔王の声、どこかで聞いたことがあるぞ。


 メネスの戸惑いに応じるがごとく、魔王はみずからの仮面に手をやった。捨てられた仮面が、石畳をはねて音をたてる。


 頭を真っ白にして、メネスは立ち尽くした。そう、魔王はあの鍼灸院〝サーヘイ堂〟をこよなく愛する常連客。体じゅうの凝りはひどいが、いつもさわやかにメネスへ救いの手をさしのべる好青年。


 仮面の外れた魔王の顔へ、メネスはぼうぜんとつぶやいた。


「ニコラ、さん……」


「そんな身を固くしなくてもいいよ。私の肩こりじゃあるまいし」


「なぜ、どうしてここに? どうしてそんな格好してるんです?」


 暗い外套のすそをつまみ、ニコラは苦笑した。


「こんな上着、あっちの世界じゃどこのスーツ屋でも置いてるよ。私がこちらに召喚されたとき、もといた世界は寒い冬だったんだ。仮面に関しては、顔を隠すサングラスが売ってなかったから仕方なく。人や魔物にわけへだてなく〝魔王〟とか呼ばれるのは、私自身どうしたものか困っている。それらしい雰囲気作りや演出をして、交渉等に便利に使わせてもらった部分もあるが」


「いま〝召喚〟って言いましたね。いったいだれが、なんのため? ほんとにニコラさんなんですか? いや、ほかのものが呪力で化けたりしてる形跡はない……」


 片腕の機関銃の狙いはそらさず、口をはさんだのはフィアだ。


「メネス、あいつは……」


「そう、私はマタドールシステム・タイプ(ニコラ)。そこのタイプF、つまりフィア・ドールの同型機さ。数ヶ月前、この廃城に召喚された。メネスくん、きみの召喚術によってだ」


「え? え? ぼくが?」


「そう、きみは成功していたんだよ、私の召喚に。本格的な素材をそろえてこの廃城で召喚術をためしたが、なにも出ない空振りだと思ったことはないかね?」


 メネスのなかで、なにかがつながった。悩みすぎて頭痛のする頭をおさえ、ゆっくり噛みしめるように自問自答する。


「魔王を召喚したのも……ぼくだった?」


「その節は、サーヘイ堂でなんども地呪の充電をありがとう」


 にこやかに笑いながら、ニコラは続けた。


「ついに私のもとへ来てくれたね。ということは、私に協力してくれるというわけだ。きみのその偉大な力で、いままでにない広く強い空間転移の門をつくり、あちらとこちらの世界をつなげる。ここにいる呪士たちは約束どおり自由にし、ああ、もちろんメネスくんの身の安全も保証する」


「メネス! 気をしっかり持って!」


 フィアが支えようとするが、メネスはそれを断った。呼吸困難さえおぼえる心の衝撃になんとか耐え、震える口調で問う。


「向こう側の世界の話を聞いて正直、ぼくは恐怖をおぼえました。確認ですが、もしぼくがあなたの望みをかなえた場合、この世界は……セレファイスはどうなるんです?」


「いままでどおり、とはいかないかもしれない。あちらの世界の人類史を振り返るに、彼らはどうも自分たちの世界を壊して荒らすのが好きみたいでね。だから彼らはずっと、新しい住まいを探し続けてる。終わりかけのその世界とはべつに、ね」


「新しい、住まい……この世界のことですか!?」


「ご名答。組織の最終目的は、あちらの人類のこちらへの移住さ。ああ、タイプFがどんな過大な説明をしたかは知らないけど、あっちの世界の住人は言うほど恐ろしい怪物でもないから大丈夫。姿形も考え方も、大してきみたちと違いはない。彼らがくれば、世界は発展するよ? にぎやかになるよ? もちまえの技術力で、セレファイスふくめた環境はむちゃくちゃにするだろうけど」


 軽いのりのニコラの回答に、メネスは拳を震わせた。


「そんなこと、絶対に許せません。もうやめましょうよ、こんなこと」


「それがそうもいかないんだよねぇ。組織の指示に逆らうことは、すなわち自分の存在の否定になっちゃうから。機械は自分を否定しないし、できもしない」


 ニコラが指を鳴らすと同時に、左右の小部屋から現れた人影がある。


 人影は六名。どれも目や口や耳、そして首に魔王の黒い刻印が巻かれている。まちがいなくセレファイスで失踪した呪士たちだった。うち何人かの顔を見て、思わず息を飲んだのはフィアとメネスだ。


「オ、オーベッド、さん?」


「そんな、うそ……アリソン!?」


 知ったふたりが名を呼んでも、本人たちに反応はない。メネスが下働きしていたサーヘイ堂の元店主と、フィアの旅を守り通した風呪の剣士……生死不明だった彼らはいま、魔王の呪いに完全に操られていた。オーベッドの手に燃え上がる猛烈な炎は、さきほどメネスたちを襲った火呪と同一のものだ。


 あいかわらず狂った微笑みを浮かべたまま、ニコラは告げた。


「メネスくんを説得するなら、これだけいれば十分だろう。この呪士たちには〝魔物が襲ってくる〟とだけ意識に刷り込んであってね。命に差し支えないていどに五感は拘束してあるけど、うすぼんやりとだけ君たちの姿は見えてる。きみたちが人か魔物か、いまの彼らに判別できるだろうか?」


 顔を強張らせ、フィアはうめいた。


「タイプN、あんた……」


「ニコラさん! いい加減にしてくださ……いい加減にしろ!」


「おお、ぞくにいうプッツンしたね、メネスくん。彼らを止めるには、私を機能停止させるしかない。しかし忙しい私はここを去り、彼らはここで君たちを食い止める。あらかじめ言っておくと、同じように私の指示に従ってくれる呪士はまだ大勢控えてるよ。さてメネスくん、これでもまだ一歩踏み出せないかね?」


「ふざけるな! さっさとみんなを解放しろ!」


 叫んだメネスめがけて、オーベッドだったものは手をもたげた。広げられた掌に、火呪の熱波が集中する。


 そのとなり、常識離れした大太刀の切っ先をひきずって歩くのはアリソンだ。だらしなく床とこすれる〝呼吸する剣(キノトグリス)〟が、耳障りな金属音を響かせる。魔王の黒砂に操られて半死人と化したその姿に、以前の冴えと誇り高さはかけらもない。


 さも残念そうに溜息をつくと、ニコラは身をひるがえした。


「では引き続き交渉はまかせたよ、呪士たち」


 回廊の闇へ、ニコラはふたたび溶けて消えた。


 となりのフィアへ、暗くたずねたのはメネスだ。


「フィア、きみは知ってて黙ってたのか、ぼくが魔王を呼んだという事実を?」


「あたしがメネスに隠し事なんてするわけないじゃない。もしかしたら、ぐらいにしか思ってなかったわ。いま、あいつから直に聞くまでは」


「邪悪なる魔王、救世の戦乙女。どちらもぼくが召喚した。とんだ茶番劇じゃないか。ぼくさえいなければ、この世界は平和なままだった。ぼくこそが、セレファイスを破滅へいざなう真の黒幕だ」


「それは違う」


 まっすぐメネスを見つめ、フィアは言い返した。


「たとえあなたが召喚を行わないとしても、この世界にはいずれ、あいつみたいな危険な存在は呼び出されていたわ。それは組織の予測や調査でもはっきりしてる。今回みたいなことがなければ、この世界は未知の脅威にまったく免疫がない状態だった。タイプNが暴走したことも、なんらかの形でかならずマタドールシステムの開発者へ伝わり、今後の改善につながる」


「するとなにか? ぼくの召喚が未然に外敵をあぶりだし、無防備な世界に警鐘を鳴らした、と? 気を使わせておいて悪いが、あまりに強引で都合のいい解釈だな。いったい今回の戦争で、どれだけの尊い命が失われたと思ってる?」


 とりつくろう言葉もなく、フィアは無言でうつむいてしまった。


 その肩におかれる手。強い眼差しのまま、メネスはほほえんだ。


「でも、ぼくは約束したんだ。きみを大切にするって。きみひとりのことだけを考えるって。きみと出会えただけでも、ぼくの召喚は無意味じゃない」


「メネス……はッ!?」


 撃ち込まれたオーベッドの火球が、フィアを直撃したのは次の瞬間だった。


 いや、そうではない。骨まで炭と化す強烈な火呪の炎は、寸前に現れた金属製の盾によって防がれている。盾? いったいどこから?


 片手をかざすのは、メネスだった。その掌でまだほんのり輝くのは、染料インクで描かれた魔法陣だ。そう。短い詠唱とともに盾を〝召喚〟したのは、メネスにほかならない。たぐいまれな呪力による空間転移の門は、遠く離れたセレファイスの武器庫につながっている。


 ただ、こんな間に合わせの小さい魔法陣では、なんらかの物体をひとつずつ召喚するのが精一杯だ。今回はなんとか成功したが、いまのメネスの技術では、つぎも望みどおりの武装が呼べるという保証はない。


 こんどは自身がフィアを守るように佇みながら、メネスはささやいた。


「ここはぼくに任せて。フィアは追うんだ。ニコラさん……いや、魔王を」


「なんですって? 無茶よ。この数を、たったひとりで相手するつもり?」


「なら逆に、きみが残ってぼくが魔王を追うか? どちらかひとりが囮役をしないと、彼らはどこまでも邪魔をしてくるぞ。それに、どのみち諸悪の根源を断たなきゃ、操られた呪士百人を最後のひとりまで倒すことになる」


「メネス、むりやり非情な決断をしようとしてない? アリソンは……彼らは、もとセレファイスの民なのよ?」


「大丈夫」


 魔王の手先たちから視線は外さず、メネスは薄く微笑みを浮かべた。


「命を奪うつもりはない。ただ彼らには、すこし痺れて眠ってもらうだけさ」


 身を低くして駆け出す姿勢をとりながら、フィアは念押しした。


「絶対に無理しないでね? 危なくなったら、すぐに逃げるのよ? 叫んでくれたら、どこからでもすぐに助けに駆けつけるからね? お願いよ? 約束ね?」


「早く行ってよ……そろそろ幕を引こう、この滑稽な人形劇に」


基準演算機構オペレーションクラスタ狩人形式ハンタースタンスから超人形式バスタースタンス変更シフト……疾走開始スクランブルスタート


 突風をちらして、メネスのとなりの地面は破裂した。


 コマ落としのごとき勢いで跳躍したフィアの姿は、天井を蹴り、気づいたときには遮る呪士たちのうしろへ現れている。機体性能のすべてを脚部へ、加速へ一点集中。


 すきを逃さず、オーベッドの手はフィアへ旋回した。その水際立った反射速度、そして火呪の強力さ。やはりなにかしら人の一線を超える暗示を、ニコラにかけられている。


 丸太のようなオーベッドの腕に、細長いものが巻きついたのはそのときだった。


 見れば、そのきらめく紐状の物体は、メネスののばした手につながっている。


 反対側の腕で挑発的に手招きしながら、メネスは問うた。


「どこ見てるんです、オーベッドさん? いつかの物干し場での決着をつけましょうよ?」


 全体重をかけて、メネスは紐をひいた。狙いをそらされたオーベッドの腕から、暴発した火球が放たれる。呪力の炎は、低くしゃがんだメネスの髪を焦がして虚空へ消えた。フィアの背中は無事、回廊の角を曲がっている。


 メネスの手から伸びる紐は、フィアの装備候補から外れた空圧発射式のワイヤーだ。ちなみにそれは、金属でできている。かすかに電撃を走らせ、メネスは言い放った。


「退職します!」


 電光とともに、オーベッドの巨体は激しく痙攣した。その手に巻きついたワイヤーをつたって、メネスが呪力の高圧電流を浴びせたのだ。全身の産毛という産毛を逆立たせ、煙をあげてオーベッドは倒れ伏している。


 残った呪士たちも次々に手をかかげるが、ふいに視界をさえぎったものはなんだ。


 メネスが懐から抜いて宙に撒き散らしたのは、大量の紙だった。色紙ほどの大きさの紙の表面には、どれも召喚の魔法陣が描かれている。


 かまわず呪士の放った衝撃波……風呪によって固体化した見えない空気の拳は、獲物と自分たちを分断する紙を容赦なく打ち砕いた。


 そこに混じったのは、硬いものの割れる奇妙な音だ。同時に、呪士たちになにか冷たいものが降り注ぐ。水だった。そう。メネスが召喚して壊されたのは、薬液の混じった投げ込み式の消火器にすぎない。ただし水には、電気が流れる。


 石畳におかれたメネスの手から、稲妻のすじが広がった。濡れた地面を走る電流にとって、水びたしの呪士たちは格好の獲物だ。電光の明滅とともに、またたく間に呪士たちは気を失った。


 崩れ落ちる呪士たちの隙間から、大剣をかついだ人影が突進してきたではないか。


「なに!?」


 うしろへ飛び退きつつ、メネスは動揺した。その場に残った最後の敵……アリソンという名の風呪の剣士は、電撃の流れる刹那に宙へ跳んでいたのだ。魔王の呪いによって自我を失っているとは言え、その判断の早さ、そして身体能力。工事現場で鍛えられたのと戦の最前線で磨かれたのとでは、根本的に動きが違う。


 メネスが伝導体を用意するひまもない。横薙ぎに一閃した〝呼吸する剣(キノトグリス)〟は、メネスの胴体を直撃して側方へ吹き飛ばした。肋骨の折れる生々しい響き。頑丈な石製の壁をバウンドしてひび割れさせ、地面に叩きつけられる。


「……がはッ!」


 四つん這いになって身を起こしたメネスの口から、血反吐がほとばしった。


 折れた肋骨が肺に刺さったらしい。その脇腹からこぼれ落ちる金属の破片。とっさに盾代わりの物体を召喚しておらねば、メネスは輪切りになっていたはずだ。


 いまの刃の速さと風圧はなんだろう。まるで、風の精霊かなにかが剣士のすべてを後押ししているかのようだ。


 間髪入れず、アリソンは唐竹割りに大剣を振り下ろした。メネスは素早くセレファイスの騎士剣を召喚したが、それも死の一撃の軌道をわずかに逸らしただけだ。刃のかすめたメネスの肩口は血を吹き、へし折れた騎士剣は闇を舞う。返す手で床に火花のあとを散らして放たれた〝呼吸する剣(キノトグリス)〟の切っ先は、下から上へメネスの顔面を斬り裂いた。この踏み込みの深さ、顎から頭頂までがぱっくり割れたに違いない。


 アリソンの視界へ、何者かの手が素早く走ったのはそのときだった。大剣を切り上げた勢いでできた腕の隙間をすり抜け、メネスはアリソンの顔を掴んでいる。


 なぜかすこし、メネスの叫びはくぐもっていた。


「邪魔だ!」


 雷音……全身をでたらめに震わせたあと、アリソンは地面にくずおれた。


「はあ、はあ……」


 息を荒くしながら、メネスはうしろの壁にへたり込んだ。


 そばの廊下では、紙に描かれた魔法陣がまだ薄く呪力の輝きをこぼしている。間一髪のタイミングでその魔法陣をくぐって召喚され、メネスの顔を斬撃から守ったのは、ついさっき魔王が捨てたある物体だ。


 メネスの顔は、あの不気味な魔王の仮面に覆われていた。

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