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29.扉

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 部屋の中は目覚めた時と同じような配置になっている。岩塩ランプのようなもの。スコップとつるはし。真っ白な低めのテーブル。しっかりと収納された小さな本棚。目が覚めるときにいるベッド。

 懐かしいな。


 ん?


 違和感を感じた。

 ……だって、おかしくないか。ついさっき外の洞窟の天井が抜かれるようなとても強い衝撃が走っよね。この部屋も本棚の中身が飛び出してくる程度の影響はあるはずだろう?


 それが、ないんだ。目が覚めた時と同じ部屋の構造。同じ位置にある家具。違和感の正体はこれだろう。

 まぁ。異世界だしなぁ。アダマンタイトとかオリハルコンとかの異世界貴金属とかでできているんだろう。

 そんなことをのんきに考えていると、突如、人一人通れるほど開いた扉の外から大きな音が鳴った。それは、神社の鐘が鳴っているような音で、頭を殴るように揺らしてきた。

 ぐわん。ぐわん。と揺れる脳みそ。何を考える隙もないその鐘の音の中、僕はあくまで冷静に音のなっている扉を何とかして閉めようとする。

 ふらふらと思った方向を行かない足。あと一歩。あと一歩で届くんだ。

 ふと、鐘の音がやみ、頭の衝撃がすっかり消えた。と同時に、とんでもない悪寒が目の前の扉から発せられた。アークを初めて見たとき、それ以上だ。

 これは、死ぬ!!

 足が思ったように動かないことなど、もうどうでもよかった。転びながら、地面を這って何とか扉へと手をかける。

 やった!届いた!

 扉を引く。扉があと少しで閉まる、というところで、扉の先の世界から、刺すように強烈な光があふれた。太陽を直視したような感覚に陥った僕は、錯乱しながらも、握っていた扉をより強い勢いで引いた。

 ギコンッと扉が閉まる音だとは思えない音が鳴り……



 世界が暗がりに包まれた。






 「あれ?ここは?」

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