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28.世界

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 魔力を目の前のゾンビに流そうとする。


 だが、うまくいかない。魔力が飛ばなかったからだ。

 だから、、先ほど触れたところを触って、そこから魔力を流す。僕の中から魔力がなくなっていく喪失感が生まれた。


 それに、なんだか眠くなってくる。なんだかくらくらするような感じだ。魔力を流せば流すほど、体の感覚がよくわからなくなってくる。それは体がふわふわと浮き上がっていくようで。

 

 気を失いそうなほどの微睡の中何とかゾンビの体全体に魔力が入ると、体が重なっているような感覚がした。

 体が重なっているような感覚というのは、動かせるからだが僕の体ともう一つあって、その両方がマルチディスプレイのように、分割して動かせるような感じだ。



 僕の目には、僕がいた。眠るように崩れている僕が。そのことを理解して、成功をアークに伝えようと、僕が寝ている後ろを見る。

 そこには、真っ白な煙があった。




 「……ぞう。小僧!起きろ!!」

 声が聞こえて、目が覚めた。体を素早く起こす。


 「アーク!」

 「小僧……。寝すぎだぞ。」

 心配そうに僕に寄り添っているアークの姿が見えた。今までずっと見てくれていたのか。



 「ありがとう。アーク。」

 「そんなことを言っている場合ではないぞ!早く魔王様のもとへ戻らねば!我々の世界が消え去ってしまう!!」

 我々の世界が消え去る……?何を言っているんだアークは。



 「ちょっと落ち着きなよ。事情を説明して。」

 「今はのんきに説明している時間などない!!小僧はダンジョンの中で待って居ろ!我は行かなくてはならない!」

 こんなに焦っているアークは初めて見た。にしたって、何が起こったのかまるで見当がつかない。わかるのは、魔王に何かあったってことぐらいかな?



 それにダンジョンって……ここはダンジョンじゃないの?

 今にも飛び出そうとするアークに、大きな声で言う。


 「なんだかわからないけど!!ここで待ってればいいんだね!?」

 素早く動く翼のせいで、砂煙が舞い上がる。豪風が音を支配する中、アークの声だけがしっかりと聞こえた。



 「ここではない!!小僧が目覚めた部屋の中だ!!」

 そういうと、壊れた洞窟から飛び立っていったアーク。家が飛ぶ台風のような風が、僕の体を浮かしてちょうど目覚めた部屋のにつながっている扉にぶつかる。


 意識が飛ぶような強い衝撃を受けた僕は、よろよろと扉を開ける。

 部屋は見覚えのある、最初の部屋があった。

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