星のすべり台
今日もきれい…。
窓から見える星空を眺めて、ユミは小さくつぶやきました。
いつかパパが話してくれた星の国へ行ってみたい。
それが、星が大好きなユミの、小さかった頃からの夢。
窓から見えるいちばん大きな白い星には、星たちのお家があるんだって。
夜が終わって明るくなったら、星たちはみんなそのお家に帰って眠るんだって。
行ってみたいなぁ。
ある新月の夜のこと。
いつものように星空を眺めていたユミは、あれれ?と目をこすりました。
大きな白い星の方角から、ひとすじの光がこっちに向かって伸びてきたのです。
なんだろう?
目を凝らしていると、どうやら小さな星が近づいてきているようです。
どんどんどんどん近づいて、とうとうユミの部屋の窓にガチャン!とぶつかってしまいました。
「いてててて、、ユミちゃん、窓を開けといてくれなきゃダメじゃないか!」
ユミはびっくりして窓を開けると、小さな星を招き入れました。
「ぼくは星の子!いつも星空を眺めてくれてありがとう!
新月の夜は特別にニンゲンをひとり星の国に招待できるんだ!
今夜はユミちゃんがご当選。
え?通知届いてなかった?おかしいなぁ、それは失礼。
さあ、手をつないで出発だよ!」
ユミはあわてて星の子の5つあるとんがったところのひとつをつかみました。
すごいすごい!
パパの言ったことは本当だったんだ!ウソなんてついてないんだ!
ユミのからだは星の子と一緒にすぅーと浮いて、光の中をぐんぐんぐんぐん進みます。
やがて白い大きな星に到着すると、ユミと星の子はふんわりと着地しました。
すてき!!
白い星にはたくさんの洋館が並んでいました。
窓から中を覗くとキラキラ輝くベッドがいくつもいくつも並んでいます。
「ユミちゃん、星の国へようこそ!
今夜はごちそうも用意してあるよ。さあ、座って座って!」
テーブルにはユミが見たことのない料理や飲み物がたくさん並んでいました。ぜんぶがぜんぶキラキラと輝いています。
わぁ、おいしい!
「食事のあとは探検だよ!ぼくについて来て!」
白い大きな星には、キラキラ輝く小川や湖、星がなる木の丘もあります。
ユミはもう嬉しくって楽しくってずっとキョロキョロどきどき。
でも…今は真夜中。いつもは眠っている時間です。
だんだんまぶたが重くなってきて…
とうとう小さなあくびをひとつ。
すると星の子はちょっと残念そうに、
「ユミちゃん眠くなっちゃった?
そうだよね、ニンゲンだもんね、夜は眠いんだよ。
そろそろ送って行くね。」
こんどは洋館の後ろ側へ案内してくれました。
そこには、なないろに輝くすべり台がずらり、色んな方角に向かって並んでいます。
「このすべり台はね、眠りから覚めた星たちが、流れ星になってまた夜空に戻って行く時に使うんだ。
ユミちゃんもこのすべり台でお家に帰れるよ!
これ、おみやげ。だいじにしてね。」
朝になって、ユミは自分のベッドで目が覚めました。
夢?だったの?
ううん、ちがいます。
だってユミの手には、なないろに輝く小さな星のペンダント。
ねぇ、パパ。
パパは今ごろ、あの洋館のキラキラしたベッドで眠りについたのかな?
夢をかなえてくれて、ありがとう。
もしもまた星の国に行けたら、眠たくなんてならないでパパを探すよ。
星になってもパパのこと、わたしきっとすぐ見つけるよ。