第02話:二人はなぜ再会したのか
いやぁ、文字数が凄いね肘川世界って(ォィ
「……なんでオジサンがここにいるんだ?」
まさかの人物(獣?)との再会に、田井中は眉をひそめ……次に、なぜか彼が頭に被っているベレー帽へと視線を向けた。
伝説の神獣アーティスティックモイスチャーオジサンとは、日本を陰から守っている、伊賀忍者をルーツに持つ秘密警察IGAの局員としての田井中の上司である普津沢堕理雄の妻にして、同じくIGAに派遣社員として所属する普津沢沙魔美が従える召喚獣の一体である。
名前からも分かる通り、彼の見た目はサラ毛のオッサンだ。
戦闘力に関しては……あまり良い戦歴を初登場作品『俺の彼女は魔女、しかも重度のヤンデレ』において残してはいないものの、己の髪の毛を自在に操るという、いろいろと応用が利く特殊能力を持っている。
「マスターからいただいた給料で、ここの別荘の一つを借りましてね。ところで、田井中さんは……おっと、すみません」
今度は伝説の神獣アーティスティックモイスチャーオジサンが田井中に訊いた。しかし途中で、彼は質問をやめ、さらには田井中に謝罪した。
失礼な言い方になるが、探偵である田井中がこのような辺境の村に来る機会は、IGA関連の極秘の任務の時だけではないか、と察したのだ。
しかし田井中は「いや、アンタには話しておくべきだな」と意外な事を言った。
彼は、伝説の神獣アーティスティックモイスチャーオジサンのマスター・普津沢沙魔美を襲撃した敵を追ってここまで来た。伝説の神獣アーティスティックモイスチャーオジサンにとっては、確かに無関係ではない。
「実は昨夜、アンタのマスターが……伝説の宇宙怪盗サウザンディアンフェイサーサードインパクリュパーンカーメラーダディエンドスとかいう異星人に狙われた」
周囲に人がいない事を確認してから、田井中は改めて村に来た経緯を説明した。
※
昨日の夕方の事。
育児休暇中の沙魔美のもとに、一通の封筒が郵送で届いた。
モノクルをつけた男を想起させる、変なデザインのマークが封筒に描かれているいかにも怪しい封筒だった。
開けてみると、中には〝挑戦状〟としか思えない内容の文章と、先ほどもご紹介した伝説の宇宙怪盗サウザンディアンフェイサーサードインパクリュパーンカーメラーダディエンドスという異名が書かれた手紙が入っていた。
そして、書かれていた文章の内容はいたってシンプル。
今晩に沙魔美の核苞――魔女である彼女の魔力の源(リリカルな魔法少女世界で言うところのリン○ーコアのようなモノか?)をいただきに参上するという、いかにも異名通り、怪盗っぽいモノだった。
〝挑戦状〟を受け取った沙魔美は、最初はその内容を胡散臭がったのだが、かつて堕理雄を賭けて死闘を繰り広げた元伝説の宇宙海賊ギャラクシーエキセントリックエッセンシャルパイレーツのキャプテンことピッセ・ヴァッカリヤの『何度か標的がバッティングした事がある。その都度一泡吹かされた』という証言や、伝説の宇宙怪盗サウザンディアンフェイサーサードインパクリュパーンカーメラーダディエンドスを追って、外宇宙から地球を訪れた宇宙警察が登場した事でその存在の信憑性が増し、最終的にはIGA✕宇宙警察による万全の態勢で普津沢家が警備された……のだがやはりお約束通り、伝説の宇宙怪盗は楽に警備を突破したのであった。
※
「そしてヤツは、事もあろうに……普津沢堕理雄IGA弐課課長に化けやがった」
「うわぁ、ご愁傷様です」
オチが見えたのか、伝説の神獣アーティスティックモイスチャーオジサンは複雑な表情で、その場で合掌した。
「ああ。ヤツも馬鹿な真似をしたモンだ」
田井中も複雑な表情のまま、話を続けた。
「ヤツには完璧な変装術があったらしいんだが……案の定、沙魔美ちゃんには二、三回会話を交わした時点でバレた。でもって彼女にとって……相手が堕理雄課長に化けて自分に迫った事は万死に値するほどの事らしいな。ブチギレて『壊錠』までして、ヤツを瀕死の重傷にまで追い詰めたそうだ。全て、伝説の宇宙怪盗サウザンディアンフェイサーサードインパクリュパーンカーメラーダディエンドスによって別室で拘束されていた堕理雄課長からの情報だから、どこまで正確か分からん情報ではあるが」
同じ普津沢姓であるため、さすがに堕理雄は名前で呼びながら。
ちなみに『壊錠』とは、前回お話しした魔女の究極最終形態『畜城』の前段階の魔女の強化形態――ようは、ニチアサラ○ダーなどのヒーローもので言うところの『中間フォーム』に当たる形態の事である。
「自業自得ですね」
伝説の神獣アーティスティックモイスチャーオジサンは、もう興味がなくなったのか、話を聞き流し、田井中のそばを飛ぶ蝶を見ていた。もしや、食う気なのか。
「ああ。だが話はそこで終わらない」
「おや?」
しかし話に続きがあると知るや、彼はすぐに視線を田井中に向け直した。
「実は……伝説の宇宙怪盗サウザンディアンフェイサーサードインパクリュパーンカーメラーダディエンドスは義賊らしくてな」
田井中は、眉間に皺を寄せながら説明を再開した。
「そのせいで、どうも宇宙中に……ヤツの味方がいるらしい。そしてその中には、ヤツの支援によって命を救われた『宇宙の四大貴族』とかいう、確実な証拠がなければ逮捕状を発行できないレヴェルの、雲の上の存在の関係者もいるそうだ。宇宙警察としては、その四大貴族を怒らせるワケにはいかないから、ヤツを死亡させる事だけは絶対に避けようと、慎重にヤツを追ってきた……らしいんだが」
「なるほど。なんとなく事情は理解しました」
伝説の神獣アーティスティックモイスチャーオジサンも、眉間に皺を寄せた。
「私のマスターが今も伝説の宇宙怪盗サウザンディアンフェイサーサードインパクリュパーンカーメラーダディエンドスとやらを狙っていて、それを堕理雄さん達は必死に抑えてるけどいつまで持つか分からない。田井中さんはマスターが彼を殺害する前に彼を捜し出し、宇宙警察に引き渡そうとしているのですね。その四大貴族が地球にどれだけの影響力を持っているか分かりませんが……何かあっては地球が大変な事になるかもしれませんから」
「話が早くて助かる」
田井中は複雑な背景を思い、深い溜め息をついた。
肘川世界の宇宙にも、いてもいいと思うんだ四大貴族な連中(ぇ




