第01話:探偵はだれを追うのか
試しに書いてみました。
どんなキャラが出てくるかは一部を除いてまだ考えてません(ォィ
肘川市。
千葉県某所に存在するそこは、普通の場所ではない。
ハタから見るとごくごく普通の、どこにでもある都市かもしれない。
しかし市内に住む限られた人達からすれば、この場所はアメリカ合衆国のような〝人種のサラダボウル〟などと呼ばれる場所が可愛く思えてしまうほどの〝魔境〟と呼ぶべき混沌とした場所である。
ただしその混沌は、様々な国の人達が往来している……という規模の話だけには留まらない。
確かに市内には、様々な理由で日本を訪れ、そして中には日本人になる外国人が数多く存在するが、彼ら以外にも……信じられないだろうが、異星人未来人異世界人異能力者などの、一般人には架空の存在だと信じられている存在も住んでいる。
無論その事実は。
先ほども言ったが、ごく一部の人達しか知らない。
というかそれ以前に、異星人などの存在を信じていない人間がまだまだ多い現代においてその事実が知れ渡れば、世界中が大パニックになるかもしれないが――。
※
そんな、いろんな意味で退屈しなさそうな肘川市の、辺境にある山林地帯の山道を一人の男が歩いていた。
田井中堅斗。
肘川市内に事務所を置く探偵、という表の顔と、肘川市内にて活動する秘密警察の構成員という裏の顔を持つ……かつて世界中で暗躍していた殺し屋だった男だ。
彼は、長い長い山道を、時々足を滑らせ転倒しかけながらも進み続けた。
夏が終わりに近づきつつあるものの、地球温暖化の影響か、まだまだ真夏並みに暑い午後であるにも拘わらず、彼は汗が出始めた顔を拭いはするものの、顔色一つ変えず、探偵として市街を動き回って鍛えた脚で、ひたすらに山道を進む。
だが我慢はできても、社会の裏で主に活動する人種である事を除けば、彼も一人の普通の人間である。あまり歩かない山道を進み続けた事で、ついにその脚に疲労を感じ始め……たところで、田井中はようやく目的地へ辿り着き、眉をひそめた。
「…………ここ、しかないな」
到着するなり、そう呟いた彼が視線を向ける先には、多くのログハウスが建っている、開拓地があった。
一応、その場所と山道の境界線上に立っている看板にも目をやる。
【河濤村】
目的地である、村の名前。
「麓で出会った市民の証言と、山道に生えていた植物に付着していた血液が本物であれば……大ケガを負った男が逃げ込んだ場所は」
そして今回、田井中が追っている存在が逃げ込んだと思われる場所だった。
※
事の始まりは、昨夜にまで遡る。
数年前にオーワングランプリという、宇宙規模のトーナメント戦で優勝した東の魔女こと普津沢(当時の苗字は病野)沙魔美は、優勝した事によって多くの宇宙、そして次元にその名を轟かせ……そのせいで様々な存在にその命を狙われていた。
――敗北を知りたい。
――宇宙で一番強くなりたい。
――その能力を兵器に転用したい。
様々な理由で、あらゆる存在が優勝者である彼女に襲いかかった。
先日も、大気成分を操る能力を持った異星人を相手にし、その死闘の果てに聴覚を奪われた上で、瀕死の重傷を負うほどに追い詰められたばかりだ。
その時は梅が発明した小針型骨伝導式通信装置弾『アイサケーブ』を、田井中に後頭部に撃ち込まれ、そしてそれを介した、夫である堕理雄による激励を受けた事で、魔女の究極最終形態と呼ぶべき異形形態『畜城』の別ヴァージョン――元々は斬り裂いたモノをこの世から消滅させる爪がついた形態が、たったひと振りで周辺の大気を分解・再構築する特性を持った爪がついた形態へと変質する奇跡が起きた事で、なんとか沙魔美の逆転勝利となった。
だが、それからさらに数日後である昨夜。
彼女の前に、また新たな敵が現れたのだ。
※
田井中が追っているのは、その敵である。
彼は特殊通信端末『コッソリート』で、弟子の椎名に進捗を報告すると、すぐに敵が潜伏していると思われる【河濤村】へ足を踏み入れた。
登山前に麓で出会った市民の証言によれば、この村は、元々は昔ながらの農家の家が建ち並ぶ普通の村であったそうだ。
しかし少子高齢化の影響で、数年前、マトモに畑仕事などができる農家がついにいなくなり、村が消失の危機に陥った時……肘川市に支店を構える不動産屋の一つである『稼舎場婁不動産』が村長に『土地の一部を別荘地として貸し出したらどうでしょう』と話を持ちかけ、それを実現した事で運命は変わった。
その儲け話は見事成功し、今では、軽井沢には及ばないものの、それなりに人気の別荘地として有名になっているという。
(血は山道の途中で途切れていた。途中で出血が止まったのか? さすがは地球人以上に生命力が強いヤツだ。キレた沙魔美ちゃんの一撃を受けてそれだけで済んでいるとはな)
相手の回復能力に対して若干呆れつつ、田井中は思った。
田井中の推測通りに血が止まったのだろうか。逃亡者の血らしき痕跡は、少なくとも出入口付近には見当たらない。
(もし傷が塞がっているならば、もう血痕による追跡は困難か……となると、もう村人と宿泊客を、一人ひとり確認していくしかないか。なにせヤツには――)
田井中は、すぐに次の行動に移る事にした。
時間との勝負だ。田井中が聞いた限りでは相手は相当のダメージを負っている。地球人に捕まえられるとしたら、まだ回復しきっていない今しかあるまい。
なので田井中は、とりあえず自分から見て一番近い位置にある別荘へ、まず足を向けようとした……その時だった。
「おや、田井中さんではないですか」
聞き覚えのある声が真横から発せられた。
まさかの出来事が起き、田井中は思わず顔を一瞬強張らせたが、すぐに顔を声がした方へと向けた。
「どうもお久しぶりです。マスターを狙った敵が前々回現れた時以来ですね。伝説の神獣アーティスティックモイスチャーオジサンです」
同僚の召喚獣たる、どう見てもサラ毛のオッサンにしか見えない神獣が……なぜか画家が被っていそうなベレー帽を装着した彼がそこにいた。
サブタイトルは某平成十六作目ラ○ダーのサブタイトルっぽくしてます(ぇ