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年の瀬Special

俺と3人の女神達は、冬休みという事でのんびりと過ごしていた。家族も温泉旅行に出かけており、俺と彼女たちの4人しかいない。なぜかコタツでぬくぬくと過ごす日々が続いていた。一度中に入ると、出る事のできない呪われたアイテムなのだ。


「ふわああ、もうお昼近くになりますけど、どうしましょうか?」


「出前取ろう、出前! 私は温かいうどんで良いや」


「うどん、良いですね♡ ついでに寿司付きのスペシャルランチにしておきますね」


「良いね、それ……。やっぱり未来望ちゃんは天才だね。私もそれで頼むよ」


「はーい、携帯電話でちゃっちゃと頼んじゃいます♡」


ベル姉さんと未来望がそう言って出前を取ろうとするので、俺と夏菜子(ウルド姉さん)もそれに便乗して同じものを頼んでもらう事にした。猫のような、まったりとした時間が流れる。


「俺も〜、ワサビ入りで!」


「私は、うどんと海鮮丼のセットが良いわ〜」


「はいはい〜」


未来望は、スマホを操作して4人分の出前を頼んでいた。コタツから出るという動きは最小限に抑えられていた。ベル姉さんは最初のうちこそ俺にちょっかいを出してエロい雰囲気を作ろうとしたが、未来望と夏菜子にコタツから出されるので一回でやめていた。


「ふ〜、頼み終わりましたよ。さて、寝ましょうかね?」


「じゃあ、私がお茶を入れますね♡」


未来望がコタツの魔力によって眠り始め、夏菜子さんがお茶を入れ始める。電気ポットのお湯を使い、極力外へ出る事なく用事を済ませてしまう。彼女たちの動きに芸術性さえも感じ取っていた。すると、未来望が突然に起きて、重大な一言を語り始めた。


「出前、どうやって払おう?」


その言葉を聞いた瞬間、その場にいる全員が一瞬にして理解した。俺達は金など大して無い。日々の生活を送るだけの金額でなんとかやりくりしているのだ。つまり、この中の誰かが代表してお金を払わなければならない。


「ここは、お家の持ち主であるさら君が代表して払うべきじゃないかしら? 私達3人はお客様という事で……」


「夏菜子姉さん、恐ろしい事をさらりと言ってのけた。いやですよ、そもそも居候みたいなもんじゃないですか。あなた達の食費も僕の家が出してるんですよ」


「私達、もうあなたの妻のようなもんじゃない。私達3人を養う必要があるわ」


「いや、俺のパートナーは未来望だけじゃないですか。養う必要があるのは彼女だけですよ」


「酷い、私たちは遊びだったのね……」


「そんな事言うなよ。別に、何もやってないだろ」


「ふふん、それは殿方が決める事ではなく、女の子である私が決める事よ。寝てる間にキスされてたかもしれないし……。私、こう見えても記憶力は良いから、あなたがした一挙一動をすべて記憶してるのよ。寝チュー、されちゃったかもね?」


「してるわけないじゃないですか。そりゃあ、思った事が無いとは言いませんが……」


「へええ、思った事があるんだ」


俺と夏菜子が喧嘩をしていると、未来望とベル姉さんは真剣に俺にされた事を考えていた。俺との距離が近い分、キスやオッパイを触った回数は数え切れないほどある。その事を夏菜子に教えられたら勝負が決まる。


「くっ、勝負で決めましょう。負けた方が勝った方の食費を払うっていうのはどうだ?」


「ふふん、百戦錬磨の私は強いですよ。なんなら、私に勝ったらご褒美をあげましょうか?

年の瀬初キッス、プレゼントしちゃおうかな♡」


俺と夏菜子の提案により、未来望とベル姉さんも巻き込んだモノポリー対決が開催された。モノポリーのカードをシャッフルし、5枚の手札が配られるが、未来望とベル姉さんはすでに敗北を悟っていた。


「これは、夏菜子姉様の勝ちで決まりですね」


「カードゲームにて無敗の姉様には、この時点でほぼ全てのカードが分かっているそうです。いかさまなしでも強くて、敵もいなくてつまらなかったそうですが、今日は本気でやるそうですね。こちらも本気で戦いたいと思いますが、勝負になるかどうか……」


「私は、軽く流すわ……」


最強の天才を前に、姉妹の2人は諦めモードになっていた。しかし、俺には負けられない勝負なのだ。お金がなくて、4人分の食費なんて払えないのだ。俺には、絶対に負けは許されない。


「俺は負けない!」


「くっくっく、久々に生きの良い獲物が現れたわね。必死で抗おうとしているその息の根を圧倒的な実力で叩き潰してあげるわ」


「うっ、すげーヤバそうな手札だ。こんなんで勝てるんだ?」


俺は自分の手札を見て絶望する。ほとんど使えるカードが揃っていない。俺の顔色を見て、未来望は状況を予想していた。彼女には、俺の手札を見てはいないが同じ経験をしてきたようだ。


「やはり勝てそうに無い手札が来ましたか。そして、夏菜子姉様には使えるカードが揃っています。更に、手札を引く回数をコントロールする事で自分が引く手札さえ分かるそうです。


それを『神の(ゴット)手札ハンド』、相手の手札を貶める技を『悪魔の(デビル)手札ハンド』と呼ばれています。ちなみに、私の手札もゴミ手札が揃っています。おそらくベル姉さんの手札にも……」


「嘘だろ!」


「それが夏菜子姉様の技なんです。私には薄らとネタは分かっていますが、攻略する手はまだありません……。一応、夏菜子姉様も全てのカードを操れるわけではありませんし、完全にカードを把握し切っているわけではありません。8割程度でしょうね……」


「カードゲームで8割もカードを把握してるなんて、絶対に勝てないじゃないか!」


夏菜子姉様は、怪しい笑顔をしていた。


(ふふふ、1つだけ分析ミスしてますよ。私がカードの内容を把握してるのは、分析能力も含めれば9割です。さて、勝てる勝負を終わらせるとしますか


夏菜子姉様の恐るべきカードテクニックによって、すでに俺の勝利は絶望的になっていた。相手のカードと山札のカードさえもコントロールされ、どうやって勝負すれば良いかも分からない。このまま負けてしまうのだろうか?


「くっ、カードゲームとはいえ負けたくない!」


「勝ちたいですか?」


俺は実力差こそ圧倒的ではあるが、今までの戦いから諦めたくないという精神を学んでいた。その思いが思わず言葉に出る。その言葉を聞き、パートナーである未来望が俺に関心を示す。彼女自身も負けるわけにはいかないが、それでも俺の勝利を得させたいようだ。


「勝ちたいですか? 負け癖がついていた昔とは違いますね。ここまでの圧倒的な差を目の当たりにしたら、私でも諦めてしまうと言うのに……。わずかな勝機ではありますが、夏菜子姉様のドロー(引き)コントロールを操作できれば、あるいは……」


「そうか、山札も自分の有利な条件にしているのなら、わずかにコントロールを崩すだけで俺の方にも良い手札が揃うかもしれないという事か。とりあえず崩せば相手の常勝は避けられるかも……」


「まあ、その可能性はゼロではありませんが、なんらかの対策がされている可能性の方が高いですが……」


「でも、やるしかない!」


高校に入学した当初は考えられなかったが、俺は相手が上級者でも勝とうとするようになっていた。喰らい付く闘志は、未来望によって鍛えられたモノだ。俺は持っているドローするカーを使い、数枚を山札と入れ替えた。これで、少しは山札の内容を変えることが出来た。


(山札を崩しに来ましたか。それでも、私の山札掌握術デッキコントロールは崩されません。数枚使えるカードは手に入ったようですが、切り札は山札に眠っています。数枚カードを引くタイミングをずらすだけで簡単に調整できるわ。


まずは、小金を稼ぐカードと徴収を駆使して私の有利を維持しましょうか。調整が、万が一にも崩れる場合もありますからね。そうなっても良いように、防御と攻撃の両方を固めておきましょうか。不利でも、私の狙いだと思わせれば、有利となりますからね)


しばらくは、夏菜子姉さんの独壇場だったが、俺達も引き離されない程度に食らい付いてはいた。ただ1人ベル姉さんだけはフィールドにカードを残せない状態が続いていた。


「ぐぬぬぬぬ……」


(うーん、別にベルちゃんを集中的に攻撃しているわけではないんだけど……。単純に配置の仕方が悪いのよね。集中的に攻撃しているさら君と未来望ちゃんには上手く躱されて、ヒットにはなってないし……)


俺と未来望は、2人で協力して反撃のチャンスを窺っていた。未来望にすれば、自分が負けない限りは、どっちが勝っても良いらしい。しかし、俺に金を払わせたい夏菜子姉さんには、ベル姉さんが負けるだけで負けに等しいのだ。


(ちっ、ベルちゃんは課金しまくって金ないだろうから、負けても結局私が払うのよね。さら君なら金を貸すという名目で奴隷にする事ができるし、未来望ちゃんならば貯金がたんまりある。私自身が勝つ事に意識を集中し過ぎて、ベルちゃんをサポートし忘れたわ)


夏菜子姉さんは、ベル姉さんをサポートし始めたため、4人がそれなりに勝負をし始めたようになっていた。ここで、夏菜子姉さんの集中力が分散された事で俺達にわずかな勝機が見出され始めていた。状況的には2対2となり、俺達がわずかに有利となっていた。


「チャンスです! 夏菜子様を倒すのは至難の技ですが、ベル姉様を集中攻撃すれば総合的には私達の勝ちです。一気にベル姉様を叩き潰しましょう」


「ああ、そうだな。いくら夏菜子姉さんがサポートしてるとはいっても、ベル姉さんは弱い。俺と未来望のコンビネーションならば、夏菜子姉さんのサポートを掻い潜ってベル姉さんだけを叩き潰す事ができる」


俺と未来望は、ベル姉さんに集中して攻撃し始めた。ベル姉さんは、嘘のようにボロボロの状態になり始めていた。


「ベル姉さんの全財産と土地を取り上げます。総合では夏菜子姉さんが1位ですが、最下位ではベル姉さんがドベです。なんとか、土地を独占させずに金額対決に持ち込めたぞ。危ない場面が何度もあったけどね」


「ちっ、3つの土地を揃える事ができなかったとは……。ベルちゃんへのサポートが仇になるとは……。さすがに2対1はキツ過ぎましたか……」


「あんだけ集中攻撃して、ようやく完全勝利を阻止できただけか。やっぱり夏菜子姉さんは強いよ」


俺と未来望は、まあ負けなかったので一安心しているが、金のないベル姉さんは震え始めた。やはりお金は夏菜子姉さんが払うしかないのだ。負け犬という相応しい表情で、夏菜子姉さんにお金を請求してきた。


「夏菜子姉様、私、ゲームで課金し過ぎて、貯金がもうありません。4人分の食料を払うなんて無理なんです。どうか、お金を工面してください」


「うん、予想通りの展開だわ。まあ、冬休みは、私が推薦するところでバイトしてもらうわよ。覚悟しておいてね」


「ありがとうございます」


こうして、俺達は夏菜子様のお金で食事を食べて、幸せと勝利の余韻に浸っていた。その後、ベル姉さんは夏菜子姉さんの勧めたメイド喫茶でバイトをし始めて、それなりに売り上げに貢献していると言う。

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