第8話 互角の勝負
俺とベル姉さんは、スマホの大人気ゲーム『闇猫プロジェクト』で戦い事になった。彼女は机の上にあぐらで座り、赤い派手なパンティーが露わになっていた。俺は、一瞬驚いて顔を背けるが、もう一度顔を背けずに相手と向き合ってみる事にした。
(くっ、なんて派手なパンティーを履いてるんだ……)
「くっくっく、女子高生のパンティーが気になっちゃった? この程度で心を乱されるなんて、私の敵では無いわね」
俺は一瞬動揺したが、彼女の言葉を聞いて冷静さを取り戻していた。いくらパソコン野郎に負けたといっても、こんなエロ系ヤンキー女に負けるわけにはいかない。ゲーム歴は長いようだが、俺の敵では無いことを思い知らせてやる。
「ふん、だったら俺が勝ったら、その派手なパンティーを置いて帰って貰おうか? それとも負けるのが怖いのかな?」
「ちっ、少しはやるじゃないか。このパンティーは、結構な値段で買った下着だよ。無くなるのは流石に痛い……。でも、私もそれなりに家とか建てて鍛えているんだ。ゲームでも負けるわけはない。その勝負、乗ってやるよ!」
ベル姉さんも動揺こそしていたが、ゲームには自信があるのだろう。このゲームを受け入れてくれた。勝負の条件を聞いていた未来望だが、顔色一つ変えずに俺達の勝負を見物している。あまりの冷静過ぎる対応に、ちょっとベル姉さんの方が可愛く思えた。
(ちっ、俺と付き合うとは言いながら、結局は何の関心もないのかよ。それなら、ベル姉さんにキスしてもらった方が……。いや、まだ男を知らないだけなのかも……。キスをすれば、俺を男として意識するはずだ……)
(ベル姉様は身体能力は凄いけど、頭脳的なタイプではないわ。動体視力や直感的なモノは凄いけど、ゲームを攻略して戦うタイプではない。ゲーム歴は長くても、技術的なモノは新君と同レベル程度のはず。練習相手としてはちょうど良い)
俺は未来望に熱い視線を送ったが、彼女はメガネをかけてパソコンを弄っている。彼女が少しパソコン野郎と被って見えた。おそらく彼女はタイプ的にパソコン野郎と近いのだろう。違う点は、女の子という点と良い匂いがするという点だ。
「条件は何でも良いのでベル姉様と戦ってください。おそらく良い勝負にはなると思いますんで……」
「ああ、さっさとやって俺の実力を分らせてやるよ」
俺とベル姉さんは拮抗した実力を持っていたものの、最後の数値でわずかに俺が勝利を納めていた。3回ほど戦い2回俺が勝利を手にして終了した。未来望は終始パソコンを弄っていたが、ベル姉さんは悔しがっている。
「負けた、こんな奴にいいいいいいいいい!」
「まあ、あんたもなかなか強かったよ。でも、俺の実力には勝てなかったようだな。じゃあ、勝利の証であるパンティーを貰いましょうか?」
「くっ、分かったよ……」
ベル姉さんは渋っていたが、約束は守るタイプなのか、トイレへ行こうとする。そこでゆっくりパンティーを履き替えようと机から立ち上がると、未来望が彼女の腕を掴んでいた。どうやら何か勝負は付いていないようだ。
「ひいい! なんだ、未来望か……。どうしたの?」
「5回勝負にしましょう。あと2回、ベル姉様が名前さえも現れずに新君が圧倒したら、ここで生着替えを要求します。まさか、ベル姉様ともあろうお方が、逃げるわけはありませんよね?」
「くっ、名前も載せずに圧勝するだと!? 素人がほざくんじゃないわよ。なら、圧勝できなかった時は、未来望のパンティーを生着替えで貰おうかしら? それが公平なバトルではなくて?」
「良いですよ、生着替えくらい……。その代わり勝負は十分後です」
「言っとくけど、私はここで脱がすなんて甘い事はしないわ。学校の近くのコンビニでパンティーを買い、店員やお客が見ている前で履き替えなさい。ふふ、本当の痴女になっちゃうかもね♡」
「それで良いですよ」
未来望は全く動揺していない。昼間のコンビニとはいえ、男子学生は多いし、店員も男だろう。女子としては屈辱的な罰ゲームが待ち構えているのだ。好きになりかけている女子にそんな事をさせるわけにはいかない。
「おい、そんな約束して大丈夫かよ? 生着替えなら、完全にノーパン状態で数秒いる事になるんだぞ。確実に男子達が覗き込んでくる。履き替えるまで見続けられるんだぞ。耐えられるのかよ?」
「大丈夫です。わずか10分程度でパソコン野郎君と同等以上の力を手に入れて差し上げましょう。といっても戦い方を変えるだけで、能力値とかに変化はありませんけどね。ベル姉様を圧倒できれば、事実上はパソコン野朗君とも互角に戦い、勝つ事ができますよ」
未来望は、パソコンを開いて、俺に勝利の秘訣を教えてくれた。どうやら俺は数値の高さに浮かれて、基本的な戦い方を疎かにしていた。最初の頃は、注意して読んでいたものの、日々更新される情報を読んでいなかったようだ。
「確かに、能力値とスキルだけでゲーム自体は勝てるかもしれません。しかし、必死でゲームをするパソコン野朗くんには通用していないように見えたのです。おそらく基本性能は新君が段違いで上ですが、研ぎ澄まされた性能の彼にはわずかに及ばなかった」
「パソコン野郎が必死だっただと? 余裕で勝ってるように見えたが……」
「必死でしたよ。2年間ずっと続けてきたゲームは、余裕でコンピューターゲームを凌駕する域にまで達していました。それは、ベル姉様が2年間以上遊んでいたので保証します。後は、武器とキャラの性能を引き出せれば、パソコン野朗君でも圧倒できます」
「どうすれば良いんだ?」
「あなたが得意のキャラで使っていない性能は3つ、これが伸び代です。意識して数回バトルをして、ベル姉様で試し斬りしましょう。ベル姉様は運動神経こそ天才的ですが、頭脳自体は並程度。訓練した後ならば、余裕で勝てます」
「具体的にどうすれば……」
「新君が使っていない性能は、この3つです。3ステージで1つの性能を覚えていきましょう。すんなりと使えるくらいになれば充分です。それを3セット行い、ベル姉様との試合に臨んでください。新君なら余裕で勝てると思います」
「信じて良いのかよ?」
「負ければ、私は公衆の面前で生着替えをしなければいけなくなります。それだけでも信用して良い事が分かるかと……」
「分かったよ……」
十分後、俺を完膚なきまでに叩きのめそうとベル姉さんが待ち構えていた。負ければ公衆面前で生着替えだけではなく、すべてを脱がされそうな勢いだった。獣と化したベル姉さんを止めるには、俺が彼女を倒すしかない。負けられない勝負が開始された。