ケインズとソレナ
前回のあらすじ
クラナさん帰るの早すぎる…
ソレナさん旅立つ…
ソレナとケインズの出会いは士官学校の合格発表だった。
彼女は次席彼は首席だった。
最初は少し悔しいとは思ったが特に目の敵にすることも無く学園生活が始まった。
一月がたった…張り出された順位はまた2位…全て2位何一つ彼に勝つ事はできなかった。
彼女は初めて現れた強敵に恐怖や嫉妬などでは無くただ強い興味をもった。
そこから彼女の奇行が始まる。
最初はそれとなく様子を伺い彼の行動を把握。
周りから情報を集め好きなもの嫌いなもの、彼のタイプ…
一度調べ始めると止まらなくなり、盗聴、盗撮彼の使用した日用品の収集…
一月ほどでもう完全なるストーカーと化していた…
その状況にケインズは気がつかない…
わけはなくほとんど話したことが無い彼女からそのような事をされるのか首を傾げていた。
入学して10ヶ月たった。
彼女の行動の成果?なのかケインズは気配を読んだりや周囲の違和感を感じる事に敏感になっていた。
ある日からぱったり彼女の気配を感じなくなった。
聞いたところによると彼女は成績を落とし落第寸前だという。
ケインズに四六時中張り付いていたのだから当たり前だろう…
普通なら放っておくのだろうが彼は彼女が居ない日々に物足りなさを感じた。
そんな気の迷いから彼女を訪ねた。
部屋は…一言で言えば地獄だった…
壁を埋め尽くす写真、写真、写真、床を埋め尽くす袋の中には自分が使ったと思われる日用品が多数…
あ、やべぇ奴だ…
と心底後悔した。
彼女はというと突然現れた観察対象に唖然とするも扉の影に隠れる。
「な、何の用?」
その一言だけを絞り出すのがやっとだった。
「…お前どうしたんだよ!」
色々とどうしちゃったんだよお前は!!
「え?」
何を言われてるのかわからなかった。
「お前才能あるんだから普通にやってれば上位取れんだろ!落第寸前ってなんだよ!」
部屋の状況にテンパり思わず叫んだ。
「私…全力で頑張った…だけど貴方には勝てなかった…」
うつむきボソボソと語り始めた。
「だから貴方を知ろうと思った…」
「貴方を知れば何か分かる気がして…」
そこで言葉が止まる。
なんじゃそりゃ…こいつ…本気か…?
「…それで成績落としてたら元もこも無いだろ…」
額を押さえ溜め息をつく。
「…」
うつ向いたまま涙を浮かべている。
「…ああもう!!わかった!お前はずっと側にいろ!!」
「え?」
いきなりと提案に驚き思わず顔をあげる。
「今から手続きしてくるから着替えとか生活に必要なもの用意しとけ!わかったな?」
そういうと彼は何処かに向かって走り去った。
「え…?」
まだ頭がついていかないがとりあえず彼に言われた通り着替え等日用品を用意し鞄に詰める。
30分ほどたって彼は戻ってきた。
「…準備できたか?」
気持ち顔が赤い気がする。
「は、はい…」
「ほら、いくぞ」
用意した荷物を両手に抱え彼は歩き始めた。
「…はい」
言われるがままに歩き出す。
辿り着いた場所は見慣れた彼の部屋だった。
「え…?」
「ほら早く入れよ…」
「なん…で…?」
「お前は俺から学びたいんだろ?なら同じ部屋にいた方がいいだろ?」
「そのかわりもう一度上まで上がってこい!」
「…ん」
涙が溢れる。
「また俺と競えるぐらいにな!」
と笑った。
初めはストーカーかと思ったが彼女は違った…ただ一生懸命だっただけだった…方向性が無茶苦茶だったが…
そんな一生懸命さが嫌いでは無かった。
副次的に自分の訓練にも協力してもらったようなもの…と無理矢理自分を納得させ彼女を救いたいと思った。
だが彼は気がつかなかった…彼女がこの瞬間から彼に恋している事に…
…ソレナさんは集めた情報を元に少しずつ彼好みの姿へと変貌。
ちなみに同じ部屋になったことにより十分な睡眠時間を確保(盗聴や盗撮により削られていた)したことにより元の成績に戻るまでさほどかからなかったとか…




