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純愛の境-男-

作者: 芥屋 葵

「幸せってなんだろう」


僕よりいつも先に寝る女の静かな寝息を感じながらこれ以上考えるつもりはない疑問を浮かべた。

数秒後には考えるのを止めるが。


出会いは突然だった。転勤になりやってきた土地、別に知らない土地でもなかったので生活は苦労しなかった。

部下にあたるという女を一目見て全身のざわつきを感じた。

もう何年も感じていない、いや生まれて30何年…四捨五入すると40年経とうとしているが生きてきた人生で感じたことの無い感情だった。


2度目に出会えた時はどこかふわっとしていてすぐにどこかに行きそうな女のことが気になってしかたなかった。つまらない男の独占欲というものが働く。


そこから男女というわけだ。


僕には家庭があったが、いい意味でというか、そんな気配がなかったようだ。

言うべき内容に決まっているが、言えばこの女は逃げ出してしまうのではないだろうか、嫌われるだろうか、そんな感情が頭を巡った。

自分に甘えた。

結果、ふとしたタイミングでバレてしまったが、それでも最初こそは少し距離を感じたが、なにも変わらなかった。

頑張り屋でいてどこか不安定でつかみどころの無いような人には男は惹かれるようだ。

独占したくなった。当然許される身ではないし、一回り程離れた相手にこんなに必死になるなんてと年上の意地があった。


前に読んだ小説の出だしと同じ展開に自分もバカなんだなと思った。

不倫というものは生まれて初めてだったので40手前のおっさんでも戸惑いは大きい。なによりこれだけ生きてきたのだ周りにそうやって色んなものを犠牲にしたり、壊れてきた奴も見た。

僕はもちろん全てを捨てる勇気なんて無かったし、でも今横で寝ているこの女を傷つけることなんてできなかった。

もとい、きっと今を続けているだけでも十分な傷は受けるだろうとも考えた。


いっそ次に良い男が前に現れてくれたらひと思いに振ってくれるだろう。それまでは…今を続けようと。


イメージしていた不倫とは違った。

何かを強要するわけでもなく、家庭に入り込もうとしない、僕はドラマや映画の観すぎだったのかもしれない。

ささやかだけど、日は違ったけど 2人で過ごす日を作った。

逆にこれが迷惑を掛けていないか、苦しめていないか等考えたが答えは出なかった。

嬉しそうな表情を見せられたらそんなこと考えたくなくなるからだ。

これが悪魔の囁きだとしたら

天使は「さよなら」を言わせるように仕向けることを脳内で勧めてきたが、どうにも悪魔のもたらす環境が居心地が良かった。


こんな悩みは僕だけじゃないだろう。

賛否両論のこのジャンルの恋愛にこの時代だ。

後戻りするには少々遅すぎた程に心動かされていた。


きっと僕が言えばそれで終われるだろうが、傷つけてしまうだろう、最後の傷は僕が追うべきだと思っている。

しかし、考えたところで答えにはいきつかないし途中でやめてしまうのだ。

これからもこの感情と思考は付き纏うだろう。


さて、少し眠くなってきたので休むとしよう。

起きたらきっと今隣で寝ている女は起きているだろう。

何事もなく見送るだろうが、少し寂しくもう少し居たいと思う気持ちを駆り立てるが

この関係を続けるなら僕は僕でいなければならない。


踏み外すことは許されない。

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