こんてにゅー
ここは。
黒々とした世界が広がる。そこはまるで宇宙の様で目を凝らすほどの遠い距離に恒星が瞬く。それは普段地上より見上げる星空より小さく暗い。
沈みそうな、吸い込まれそうな感覚の体は横たわり、頬が吸盤の様に透き通った床についていた。
その一枚が僕の体を支えるだけ。
星々の名は有名どころは知っているが、一つも無く。いい加減な羅列で乱雑に並ぶ。
それが遠く、深い。
「やあ、目覚めたかい?」
この空間にいるもう一人の存在が語り掛ける。
屈んで顔が近づく。長めのショート丈の髪形に整っている少年。
同じように頬を床に付け、目と目を合わせる。
「悪いけど、動けない様にしているから。また、死なれても困るからね」
少年は立ち上がると、フリンジに金糸を大量にあしらえた、真っ赤な絨毯を踏み歩く。四角い絨毯の中心には椅子が一つ。
それは古の物語にでる派手やかな王座に、宙ぶらりんと足を組み、高さの合わない手すりに頬杖をつき、無理をして大きさに合わせていた。
唯々、不快。
夢にせよ何にせよ、体の自由を奪われるのは生き物の本能として不快でしかない。
動かせるは眼球のみとまばたきさえ許さていない空間で、睨みという思考に対して見上げるしかなかった。
「えー。申し訳ないですが、手違いで君は死にました。あー。今から君は別世界で転生して第二の人生を送っていただきます。ま、これでいいだろ」
読み上げ終わるとそのポケットから取り出したばかりの短文だけが書いてある紙を投げ捨てて、はらりと床に落ちる。
そして、不敵に笑う。
「前置きはこんなもんで良いよね?
ようこそ。ラッキーマン。
君は何十億という人類から選ばれました。とてもとても幸運です。おめでとうございます。
いやー。幸運ですね。ハッピーですよ。
なぜなら、僕が考える最強の能力を身に着けて転生させます。
しなくていいって遠慮は無用ですよ。
過去三回。
過去三回、拒絶されたのですよー。つまり……ここで君は三度自害しているんだ。
最初からこうしとけば、面倒もなかったけどね。
それは、僕の怠慢って事で。
まあ、記憶は消したので覚えていないだろうけれど。
そんなにやり直したくなかったの?
君って、確か……。僕が覚えている限りで、幸せな人生送っていない気がするんだけどね。
幸せになりたくないですかー?
そりゃあ、誰しも幸せは欲しいに決まっている。
分かっている。君の心の奥底でも本能的に欲してはいるのは。
だから僕がハッピーメイクしてあげる。
タイトルはハッピーメイク。カッコカリなんてね。
クソダサいタイトルからの名作はアリだと思うんだ。
クソゲーも好きだし、駄作でも構わないけれど。
つまりはゲームがしたいという訳なのですよ。
という事でゲームの主人公をやってくれないかな?
僕が考えた、僕だけのRPG。
そして、僕が考えた最強の能力で。
君も僕も色々と話したいことはあるだろうけど、それは転生してからだ。
さあ、君の人生コンテニューしようか」
視界は白く光に包まれていく。
十数秒で、目の前は真っ白になる。
僕は、あの顔を忘れない。
忘れない。