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プロローグ

 よろしくお願いします。

 「アンガス様、お急ぎください。馬車の準備はできております」


 部屋の前から俺を呼ぶメイドの声がする。

 俺は、3日後にあるプロリア王国の侯爵の令嬢との結婚式に向かう準備をしていたのだ。

 最後に姿見でチェックをすると、父親譲りの少し暗めの金髪に青い目、平均より少し高いぐらいの身長の青年がうつる。


 (今日はいよいよ計画を実行するときだ)


 自分の人生を一変させる計画に不安になりながらも、その不安が顔に出ないよう注意する。


 部屋のドアを開けるとメイドが1人待っていた。

 くすんだ銀色の髪を上の方でまとめていて、目は黄金のように輝いている。

 数年前から家に仕えているメイドで、俺についてくることとなっている。


 家を出て、馬車に乗り港町を目指す。

 途中、もう二度とこの地に戻ってくることは無いのだと思うと、見慣れた農園さえ特別な景色に見えてくる。

 昨日、不安であまり眠れなかったせいか、急に眠気がおそってきた。 

 それに抗うことはできず俺は眠りにつくのだった。








 ふと目が覚めると、潮の香りがする。海が近づいてきたのだ。

 この港町のホテルで一晩を過ごし、明日は飛翔機で海を渡る予定だ。

 (飛翔機とは、魔力のエネルギーで空を飛ぶ機械のことだ)








 (やはり、今日も眠れそうにないな)


 俺は、ベッドに入ってもなかなか眠れないでいた。

 明日からのことを考えれば考えるほど、さまざまな不安が頭をよぎり、眠れなくなるのだ。


 結局、一睡も出来ないまま朝日を見ることになった。








 「アンガス様、御気分がすぐれないようですが・・・」


 メイドが不安そうに言う。

 飛翔機は魔力を持つ一部の人間にしか扱えず、動力的に2人乗ってギリギリだ。

 そして今日は、メイドがのる飛翔機を、俺は運転することになっている。


 (俺の体調が悪い程度で飛翔機の操縦を失敗するとでも思っているのだろうか。俺は最高の騎士とよばれるアンガスだぞ)


 メイドが俺のことを信用していないのかと不満をおぼえ、


 「俺の操縦が信用できないか?」


 と、メイドに聞くと、


 「いいえ、アンガス様」


 と、メイドはすぐに返事をする。


 それに満足すると、俺はメイドと飛翔機の発着場へと向かう。

 メイドはいつもどうり俺の一歩後ろをついてくる。








 発着場についた。


 飛翔機に乗り、ヘルメットをつける。


 メイドが後ろに乗ったのを確認する。


 自分の心臓がバクバクなる音が聞こえる。


 飛翔機が陸を離れた。


 ダリア帝国の土地がまもなく見えなくなる。


 ちらりと後ろに座るメイドを見る。


 その輝く瞳が見える。


 (いよいよ計画を実行する時だ)


 今までの人生が走馬灯のように頭にはっきりと浮かんでくる。


・・・

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