第7話 号外
目を通して頂きどうも有難う御座います。
レアで経験値が馬鹿旨な大ボスが沸いた。全員で飛び掛かるが強い!
『もう一発! ユニコーン・スマッシャー!』
突き刺すのか叩き潰すのかどっちなんだとヤジが飛んできそうな名前であるが、この必殺技は振り回した剣を大きく振りかざして斬るという単純な必殺技でMPの1/3と引き換えにダメージが最大で3倍に、極稀にクリティカルヒットと言って敵の防御力を大きく無視した大ダメージが入る事がある。個人的には青色の派手なエフェクトと効果音を伴う所が気に入っている。
トゲトゲの生えた赤茶色のぶっとい脚を踏み台に駆け上がりながら遥か頭上にある片方の目に向かって『U.S』を放つとなんと大ボスでは基本発生しないと断言されるクリティカルが発生しHPを5%程下げる。
その直後にサソリの尻尾に弾き飛ばされビルの2階ほどの高さまで放り出されるとそのまま放物線を描き砂漠に墜落する。大盾は飛ばされミスリルの鎧は破損し左手は折れたのか体を起こそうにもブランとしたままである。
『エレメンタルヒール・ウインドウ!』
実は回復・防御力強化・速度強化などの付与魔法は攻撃魔法を放棄した職業でしか取得する事が出来ない。サリーも例外ではないのだが例外的なのはエレメントクリスタルを用いた魔法道具で精霊力によって回復する方法である。しかし魔法道具が高価すぎて殆ど使い手が居ない、例え1本が100万ギールしようが10億もするエレメントクリスタルを装備化(当然一定確率で壊れる仕様)する物好きなど居ないと思っていた。
サリーの杖による回復魔法のお陰で左手が少し上がる様になった。すかさずストレージから取り出した回復薬を飲むと共に予備の角盾を出しサソリの毒尾攻撃を受け止める。
げえっ!これだって鋼鉄製なのに1撃で50%損傷だなんて!
ふらふらと立つ馬之助の前にスーパーさんが駒の様に回りながら割って入ってくれたがスーパーさんも弾き飛ばされる。そこへはサリーの叫び声が木霊する。
『エレメンタルヒール・ウインドウ!』
満身創痍のPTに待望の言葉が降りた。
『またせたな皆!これで決まりだ、ファイナルフェニックス バァァァードォー!(3回目)』
◇
『みょみょーーー!』
サリーさんが奇声を上げた。lvが90から一気に94に上がっている。スーパーさんがlv135から140へ、馬之助が95→101,破滅の杖さんが152→157。普通のレベル上げ1か月分くらいをこの戦いで駆け抜けたのでは無いだろうか?
帰り道は思い思いにあそこで危なかっただの、あの攻撃が効いただの、回復助かっただのと会話しながら歩いた。皆まるで子供の遠足の様な燥ぎっ振りだった。
ボスモンスターや大ボスモンスターは特大の魔石かランダムでドロップでしか手に入らない素材や魔装備と言った物をドロップする。これは止めを刺した者のストレージに自動的に収納されるのだが、注意しないと例の如くストレージが一杯で零れ落ちてしまう。
今回の大ボスは真紅の魔石(大)とスコーピオンバックラーという毒とげが沢山ついた片手盾だった。
帰り道にハメさんはそれらを明後日のオークションに出品すると嬉しそうに話していた。
◇
『号外ー号外ー!西の砂漠で大ボスサソリが退治されたよー!やったのはギルド”カオスワールド”の副GM”破滅の杖”他4名PTだ!さあ、詳しい情報は買った買った!たったの銀貨1枚だよ!』
待機させていた転送門でギルドに戻り、一度足を街に踏み入れるとそこは専門NPCによる号外発売により既に大ボス退治のニュースに湧きかえっていた。
冒険者達はこぞって号外を買い、ボスレベルが155と知って大半の者は羨ましげにため息を付く。
一部高レベルプレイヤー達(街の3位~10位が141~115だったので)は明日のこの時間にはボス狩りに砂漠で陣取っている事だろう。いや今から陣取る奴だっているかも知れない。取り合いになった場合、例えば多数のPTが同時にモンスターを攻撃した場合には後からヒットしたPTの攻撃は無効になる仕様となっていて(注:ヘイトは稼げるしダメージは受ける)PT協力欄でリーダー同士がPT協力モードに合意しないと協力プレイは出来ない仕様になっている。
「あーあ… 明日からは狩れても1匹か?...違うなハメさんはレベルが上がりすぎちゃったからどうせ火力不足で狩れないか...。」
現実世界でネットを開きlv100より4以上高いレベルの公開されているボス情報を探す。
アラスカ支部...回線が遅いし到着まで2週間は掛かるのでパス。
日本支部に条件を固定。…北の氷穴に住むアイスタートル110lv?火抵抗-150%,雷抵抗ー50%物理抵抗+120%...叩いてもダメージ薄そうだが。うーん。候補として残す。
それから暫く情報を探したがアイスタートルが一番条件に近かったので物理抵抗+120%のアイスタートルをミスリルの剣+2で殴った時のダメージをシュミレータ-に掛けてみた。
「腕力100、俊敏100、体力100、運100、装備ミスリルの剣+2(攻撃力35)、装備の付加効果...無しと。」
結果は0.5と出た。因みにアイスタートルのHPは9万5千~10万HP、えーっと詰まり無理って事?
攻撃力が大したことなければ粘ればいけるかもと思い調べて見たが結果、期待は大きく裏切られた。
「なんだこのアイスローリングファイヤって!?(体当たりの攻撃表記3,000)ガ〇ラの真似してるんじゃねーって訴えられるても知らないぞ?」
攻撃力表記は標準的な装備で同レベルのキャラクターがその攻撃を受けた時の値であり、必ずしもそのダメージになるわけではないのだが、どうやら敵の必殺技には馬之助のHPを超える大ダメージを覚悟する必要が有りそうである。ネットで調べると”オンリーワン”という人がアイスタートルを詳しく解説してくれていたので参考にする。如何やらアイスタートルの推定攻撃値は通常攻撃で500相当、必殺技のローリングファイヤで800相当らしい。ここで紛らわしいのだが推定攻撃値は武器の攻撃力とは違う。
推定攻撃値=武器の攻撃力×√筋力×補正(素早さ・運)で表される数値で現在の馬之助でいうと350程度になる。
まあ攻撃が通らないのでは仕方が無いのでサリーさんに協力を仰ぎ魔法で倒して貰えるか聞いて見るとしよう。とは言え足手纏いは嫌だから装備を探しに露店へと足を運んだ。
『旦那、旦那ってば!今日も良い武器が入ったんですよ、一目見てやって下さいな!』
(つづく)
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