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ゼロ化世界  作者: ゴスマ
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第4話 カオス氏との出会い

アナウンサーって立て板に水の様に喋れて凄いですよね。

 所はトーナメント会場。街の一角にあるこの灰色をした石畳で出来た四角いリングは野球の内野グランド程で周囲は傾斜へ丸太を置いただけの観客席が並ぶ。すり鉢状のスタジアムは小さな野球の内野グラウンドの程の広さがあるが、席は既に7割がた様々な格好の冒険者達で埋まっていた。


 『さあここからは新進気鋭の男、馬之助のターンだ!攻撃!攻撃!攻撃!その刃は伝説の斬鉄剣が如く鎧を切り裂き白銀に輝く盾と鎧が相手の剣を刃こぼれさせる。刮目せよ!本戦初出場にてこの圧倒的な試合をーーー!』


 アナウンサーという職業は本当に貴重な物だ。俺が装備差だけで一方的にトーナメントの対戦相手のHPを削るとまるで勇者が現れたかの様に持ち上げてくれる。


 今日はアパートに戻ると直ぐにログインすると今まで1回しか出たことの無い(その1回は初戦で自分より20もlv下の魔法使いに負けた黒歴史)トーナメントに参加し戦に興じている所だ。因みに街のトーナメントでは負けて死亡しない。装備は傷つくのは仕方がないが負けてもHP1止まりであるので安心して遊べる。これがギルド対抗トーナメントだったりすると負ける度にレベルが9割に減ってしまうので結構大変ん事になる事があるらしい。


 さて、正直この装備だとまだレベルが低くても簡単に本戦まで来れる様だった、まあ公称人口3,000人の小さな町だからな。


 本戦は8名のトーナメントで最初の相手はオートモードに入った儘で防御→攻撃→防御→攻撃を繰り返すので逆を突いてあっさり勝てた。順々決勝は小柄な剣士だった。18歳未満で保護モードプレイヤーなのか一般プレイヤーの中にも人体改造秘薬という薬を用いて外見や体格を改造して楽しむプレイヤーがいるのでそう言うコアなユーザーなのか何方とも判別つけ難かったのだが、行き成り必殺技を撃って来たので案外低年齢層プレイヤーだったのかもしれない。


 横ダッシュして敵の必殺技をやり過ごすと、技発動の硬直でがら空きになった隙だらけの脇腹目がけてミスリルソードを叩き込む。


 しかし準決勝の相手はこの街の英雄で街の代名詞でもある勇者カオス氏だった。

 彼の装備は赤っぽい薄いゴールド色で統一されており、剣は刀身が七色をしたダンドミサイルでは無く、黒いサムライソードだった。

 フルフェイスの兜の所為で顔はよく分からないが2m近い立派な体格に似つかわしい精悍な目が覗いていた。試合開始前、闘技場に上がっただけで薄紫の闘気が背中から立ち上っている様に見えたのは錯覚ではない筈だ。


 彼のレベルつまりLv333はLv79の馬之助との総ステータス差に直すと其のままレベル比の4.2倍。更に当然というか装備のレベルですら負けていた馬之助は、試合開始早々胸を借りる積りで先制し散々攻撃を受け止めれた後あっさりと5合も打ち合わない内に負けてしまった。

 うおぉー、万が一の時にと試合前に3億ギールも出して買った希少なアイスタートルの堅盾が~!今や破壊され耐久力0で煙と共に消滅してしまったでは無いか!?

 しまったのである!魔物ドロップの品は耐久力0になると消滅するからその前に修理に出さないと行けなかったのに...余りにも激しい打ち込みで引っ込める事を思い出す暇すらもなかった。さっ3億ギールが、3億ギールが--!…。


 …それにしてもすげー、ワールドレベルプレイヤーすげー。と思わず独り言を発してしまった俺に薄ゴールドの装備がまぶしいカオス氏が気さくに話しかけてくれた。


 『この私を相手に3合以上打ち合うとは帝都でも中々巡り会えない。どうだい?良かったら私のギルド”カオスワールド”に入会しないか?』


 『いいんですか!?』


 この申し出には喜んで飛び乗った。


 ギルド”カオスワールド”はこの街一番のギルドでGM「カオス」氏を筆頭に猛者ぞろいである。


 ギルドの入会にはギルド幹部以上の許可が必要で正式なメンバーへの昇格は幹部二人以上か副GM以上の承認が要る。ギルドに加入すると各員1日2回を制限にギルド員同士の模擬戦を行う事が出来き、この模擬戦ではどのような致命打・致死ダメージを負ってもHP1でギリギリ生存できるという特典が付いている。装備の損傷も模擬戦が終われば元に戻ると言う親切設計になっていた。


 それの何が美味しいかと言うと例えば鍛えたい新人をギリギリまで痛めつける事を繰り返す事でレベルアップ時のステータスアップで上方補正が獲得できる。またモンスターを倒さずとも高レベルプレイヤーとの模擬線で勝つ若しくは善戦すれば、多くの経験値が稼げて早くレベルアップができるetc多種多彩断る理由が無い程メリットばかりであった。


 そしてその日の模擬戦で馬之助は装備を黒鉄製で固めたLv113の中堅メンバーに2回勝利し一気にLv82を達成したのであった。


 ◇


 次の日もゲーム内にINすると昨日ギルド模擬戦で勝利させて貰った全身をプラチナシルバーで固めた中堅メンバーの人が話しかけて来た。武器はやはりプラチナ製の長槍である。


『馬の人、本日も一戦如何かな?』


俺は少し考えた後に謹んで申し受けを受け入れた。


 この人はきっと気の善い人だ、何故ならばレベルが自分より下の者と模擬戦を戦ったとして負ければ上位者には経験値は入らない。勝ったとしてもLv差があると貰える経験値はそれこそ微々たる物であるからだ。


 逆にレベルの低い者からすれば模擬選での勝利は途轍もなく美味で、ギルド員レベル底上げの為に上位のギルド幹部は中堅相手にワザと装備を落として模擬戦を行う事が通例化していた。


中堅メンバーの人はキャラクターネームを ”スーパーホース” さんと言った。


『三国志の馬超が好きで付けたんだ。馬超?俺が始めた頃は既に三国志の有名キャラは殆ど名前が使われていたさ。所で馬之助君の事は馬刃から取ってバトゥ君と呼んでも良いかな?』


俺は皆からスーパーさんと呼ばれる紳士の問いに答える。


 『バキ ウマノスケと読むんですけど、バトゥでいいです。いいニックネームを有難うございます。』

 スーパーさんの名前とレベルは白銀の鎧とセットで覚える事にする。”いいさ(113)白銀の槍、スーパーさん”。下手な語呂合わせで恐縮だがこうでもしないと直ぐに忘れてしまう鶏並みの脳みそを持っているなので許して頂きたい。


 その日の模擬戦も圧勝し馬之助はlv85になった。


「所でバトゥ、スキルは何を伸ばすんだい? 俺は槍押しだがその装備だと両手剣系だよな?」


 因みに今の会話は全て秘匿文字モードを使っている。


 一般的には文字入力した物をキャラが流暢に読み上げるOPEN会話モードが主流なのだが、其れだと近くにいるキャラクター皆に聞こえてしまうので未だ加入間も無い俺は目立ちたく無いのでヒソヒソと会話している次第である。


『よう、二人とも。ウマノスケは早速レベルを上げたな!』


『おはりんご! 誰かおねーさんと模擬選しない?』


 OPENモードで声を掛けてきたのは副ギルドマスターの魔道師”破滅の杖”氏、Lv145と言葉使いがおかしな方は破滅氏の友人でギルド幹部の魔道師”サリーちゃん”Lv82である。サリーちゃんに至っては良くそんな名前が取得できた物だと呆れるが、サービス開始初期メンバーの一人らしくこの中で一番年季が入っていると聞いて納得した。


 破滅の杖氏の服装は典型的な灰色の魔導師服に黄色や赤と言った承知不明な鳥の羽飾りが沢山付いた物で何故か背中に『雄』と刺繍文字が入っていた。杖もカスタマイズしているのか宝石がゴテゴテと付いた見た事も無い派手な物だった。俺はさっそく語呂合わせを使って破滅の杖氏を記憶する。”いよおご両人(145)痴話げんかしても破滅つえー”


 一方サリーちゃん氏は赤いピッチりした初級魔術士用ドレスに花のコサージュを幾つか付けた可愛らしい物だ。背も成人キャラにしては可成り小柄で有料アイテムで体格を弄っていそうだった。

 ”赤いサリーちゃん、ハニ(82)かんだりしない。”


 ギルド内では相手のキャラクターにカーソルを合わせればレベルと名前、ニックネーム情報を表示させてる事ができるので彼女の誘いは俺ではない。俺はLv85、彼女はLv82。  

 残念ながら模擬選はボス戦と同じく自分のレベル+3以下の者に勝っても経験値は微々たる物に制限されている。これはそうでないと同レベルキャラが交互に勝ち負けを繰り返してあっという間に高みに達してしまうからである。

 

 所でギルド「カオスワールド」はサービス開始初期に”カオス”氏、”破滅の杖”氏、”サリーちゃん”嬢?、もう一人は既にギルドを去って他のGMを務めているという”灼熱の剣”氏で立ち上げたらしい。


 今やギルドメンバーは300人を数える大所帯でメンバーの半分は他の街で活動して時々帰ってくる様な状態らしい。昨日建物の中入った時には数多くのキャラクターがいたのだが白銀の全身鎧に包まれた姿にさぞ高レベルで物知りなプレイヤーなのだろうと思い切ってギルドの利用方法について教えて頂けませんかと話しかけて見たのが前出のスーパー氏だった。  

 因みにスーパー氏が模擬戦時に黒っぽい鉄装備に変えたのはわざと此方の攻撃が通る様に胸を貸してくれていた訳である。  


『今バトゥ君と1試合したので後1試合出来ますよ?』スーパーさんがサリーちゃんの誘いに乗って黒鉄装束に着替えると二人で格闘場へ入って行った。


 そしてさっきまで空白だった俺のニックネーム欄を見て破滅さんが笑った。


『ウマノスケは早速三国志風のニックネームを付けられたな? ちなみに俺のニックネームはシュウユからだそうだ。』


 破滅さんは色黒で彫りの深いハンサムな顔のパーツの中で一番目を引くいたずらっ子そうなクリクリした大きな瞳を細めながら言った。


(つづく)

読んで頂きどうも有難うございます。

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