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ゼロ化世界  作者: ゴスマ
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第48話 嘆きのコキュートス

目を通して頂き有難うございます。

 全世界で大規模なユーザーを誇るオンラインゲーム、LLON(ライトニングレジェンド オブ ナイツ)内外で発生した大事件から1週間が過ぎた。

 たった1週間ではあるがその間に色々な事が有った。


 占拠犯達は「金を貰って頼まれた、ゲームに恨みがあるからバックアップを消せと言われた」と主張し、事実サーバールームの金庫に収められていたバックアップメディアの数々は犯人が占拠後金庫ごとガスバーナーでこんがり蒸し焼きにした所為で二度と帰らない事となった。只犯人たちはクラウドに残っていたバックアップデーターの破棄には失敗、

零化事件で死亡若しくは消滅をさせられた者達以外は生き残れたという結末となった。


 消されたユーザー達は怒り心頭、そもそもワールドクラス級の猛者達の多くは王の遺産守護クエストに参加、冥府の魔王や突如現れた理不尽なほど強いレイドボス達に倒されデータロストしたのだ。天使コキュートスの活躍が無ければ被害はもっと広がっていただろう。


 各地で訴訟が起こされその金額の多さにワールドハピネス社は回収したブラックカードボックスを全て消費して返済すると共にシステムその物を売却、運営事業を撤退する事になった。


 新しい運営は初期設定の世界からまたサービスを始めると言うが、膨大なユーザー達の囲い込みの為かワールドハピネス社時代の課金データ量に応じてギルや希少な装備を配布すると言った手段に出た。勿論、俺やサリー等無課金組には何も関係の無い話だった。


 サリーは新しくキャラクターを作った。”サリーちゃん”というネームは誰かが先を越したらしく俺の隣で地団駄踏んで悔しがっていたが結局新しい名前は”大人のサリーちゃん”に落ち着いた。俺はサリーが作った”サリーの虜”キャラを使って居る。後で詳しく説明するが操られたとは言え、あれだけ暴れまわった馬之助のIDは永久凍結された。


 俺たちは今オープニングセレモニーで華やかな、しかし以前よりこじんまりしてしまったアメリカ大陸サーバーの王都へやって来てる。

 

 大人のサリーが手を引き歩くとまるで親子の様にも見えてしまう。


 博物館の行列にならんでやっと見えたのは新生LLONがプレゼンツする旧世紀の伝説シリーズ。其処には世界を滅ぼした魔王と其れに勇敢に立ち向かった4体の天使が飾られている。ルビエルとサファエルの鎧が抱き合う様に展示され、出口の売店ではアレキサンドライトのアクセサリーが絶賛大人気販売中だそうだ。

 ルビーとサファイヤのセットリングじゃ無いの?アレキサンドライトは全然コランダム系じゃ無いんだけど?とサリーに言うと、赤や青に変化する所が二人が何時も一緒にいるみたいで良いという評判で、化学式じゃあロマンスは表現できないのよ?と上手く窘められてしまった次第である。


 正面には白刀を持ったセイファの鎧。これらは主が死亡したので拾った者の者になるかと思いきや、主を指示する聖句を唱える権利がレディーJのIDにしか与えられて居なかった様子で、誰も使えない伝説の超強力装備という残念な扱いだが、逆に展示物には持ってこいなのかも知れない、何たって正真正銘世界を救った装備なのだから。


 セイファの足元にはバグの為技が発動したままの蒼龍剣に胸を刺され氷漬けの馬之助。説明書きには”デビル×××:旧世紀最後の世界チャンプ、絶対王者を倒した事で冥府の王と化し世界を消滅の一歩手前まで追い詰めるが天使セイファに封印される”とある。まあ、ちょっと違うけど大体あってるかな?


 奥の書き割りには巨大な超級レイドボス達が描かれていて其処には空から金色の金づちを無数に降らす黄金の騎士も描かれている。よく見ると兜の額のマークは半月に直されいてナイス判断だと感心した。


 レディーJのIDと残る1天使装備は封印された。

 ジェニーとは一度電話で話した切りだった。偽って逮捕されたため完全な保釈まで時間が掛かるそうだが、内緒の話ではあるが事の顛末はジェニーから詳細に聞く事が出来た。


 まず、アニヒレイターとは何者か?

 彼はジェニーの追っていた ニコル・ゴールドマンの弟である。名前はポール・ゴールドマン。

 占拠犯はその友人のドナルド・リッチとサム・ポチョムキンで彼らはPOJOがLLONのシステムにフィンテックを実験搭載している事をニコルから聞き、ニコルを脅して様々なトラップをゲームに潜ませる事に成功した。


 宝くじアタックシステム。


 これはゲーム内で宝くじを買うと、当選抽選の代わりにニコルが指示した銀行を宝くじの抽選ワードで攻撃するという物。

 ハチャメチャな量の攻撃に相手サーバーがダウンする事の方が多かったこの攻撃も4度成功を治め、クラックしたパスワード情報はポールの元へ送られポールはその情報から銀行に侵入、LLON向けに電子送金しブラックカードボックスという形で回収する。


 ポールたちは当選者の所属地域情報を元にまずはその地域のRMT業者へアタック、極秘にウイルスを仕掛けRMT業者のHPに訪れた物のPCにLLONとセットで起動する場所特定ウイルスを仕込んで当選者が引っかかるのを待った。


 よくまあそんな気長で不確実な方法を取ったと思うのだが、実際4回中3回までそれで回収できたと言うから驚きである。回収方法?俺の時と同じで電子警棒でビリビリ、押し入って操作して売るという手順である。


 しかし問題はブラックカードボックスの現金化はPOJOが持つオリジナルにしか出来ないと言う制限だった。


 実はそれを解除するのが”王者の遺産クエスト”で鍵をPOJOのブラックカードボックスに鍵を差し込む事で全世界のブラックカードボックスに現金化の機能解放が行われると言う隠しイベントだったらしい。箱の奪還にしか興味のなかった俺たちは見事犯人達にしてやられ、解放されたデータは占拠犯の一人が飲み込んで持ち出したのだろうと予想された。予想されたと言うのは彼らは保釈金で出所した後、金で雇った偽者と入れ替わりまんまと国外へ逃げ切ったからだ。今は全世界に指名手配された有名人だ、F.B.Iは南米のジャングルに近い地方都市、但しインターネットが届く範囲に潜伏していると見て根気よく捜査しているらしい。


 POJOは自分の引退に合わせてフィンテックの解放を考えていた節があり本来王の遺産クエストは勝敗後の改変がオープンにされフィンテック推進派と現状維持派の守勢を問う戦いになる予定だった様だ。


 へえ、それでフィンテックが勝ったらどうなるの?とサリーも呟いていたが例えばゲーム内で稼いだギルが現実通貨と一定比率で連動しゲーム内で注文したリアルの商品が家に届くと支払いはゲーム内通貨でなんて事が出来るらしい。なんだろう?POJOは究極のニートでも作りたかったのだろうか?その辺りの事はジェニーにも分からないそうだ。


 この辺りの解析は犯人グループの残した暗号ファイルからジェニーが解析した結果である。彼女の努力が無ければ事実は闇の中、全くの完全犯罪となっていた所で末恐ろしい物がある。しかしながら彼女の保釈条件の一つが本件に関する機密保持であるらしい、恐らく模倣犯を危惧しての事だろう。「そんな事言いながら話しちゃって大丈夫なのか?おい!」って電話口で言うと相変わらず軽い調子で「大丈夫でーす」と言っていたのを本当に口の軽い女だと飽きれ返った覚えがある。


 さて、展示室の出口付近には旧世紀最後の日に守護及び義援PTの壊滅を防いだ英雄、天使コキュートスのインタビュー映像が顔部分モザイクで放映されているのでちょっと聞いて見よう。


 インタビュアー:『黄金の天使さんのお名前は?分かる様でしたらあなた以外の無くなった天使のお名前もお願いします!』


 コキュートス:『俺の名前はコキュートス、死んだ仲間はセイファにルビエル、サファエルだ。』


 インタビュアー:『何故コキュートスさんだけ地獄の、しかも極寒のお名前が付いているのでしょうか?』


 コキュートス:『良い質問だ。俺も最初は分からなかったんだが、暫くこの装備で居て気が付いた事が有る。それはな…』


 インタビュアー:『それは…?』

 

 コキュートス:『お前らの見る目が極寒地獄なんだよ!!撮るんじゃねー!モザイク掛けろ!モザイクをーーー!!』


 一説によると鎧を脱げなくなった”灼熱の剣”氏は泣く泣くIDを放棄したとかしないとか...


 『結構見ごたえがあったね?次何処に行く?』


 大人のサリーが問いかえる。


 『カオスさんが又ギルドを始めて居ないか探しに極東にでも戻ろうか?』


 にっこり笑った笑顔に手を引かれながら転送門へ新たな一歩を踏み出すのであった。


 (END)

最後までご一読頂き大変有難うございました。

また次回作などあればぜひ宜しく御目通しをお願い申し上げます。

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