表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ゼロ化世界  作者: ゴスマ
46/50

第44話 セイファ降臨、天使コキュートスはorz

目を通して頂きありがとうございます。

 バズーカーのIDでログインし直すとオート状態のお調子者から操作を奪い取り眼前に迫る王都の火災に目を向ける。


 『サリー、ギルド機能でカオスGMの居場所が特定できるか?』


 『今やってる。座標が出たわ、1530-1670-2』


 座標は1メモリが約50mでX-Y-Zの順である。ここでいうZは高さの事でZ=2は地上100mの場所に居るという事になる。カオスさんは空を飛べない、そうなると飛竜に乗っているか、100mもの高い建物つまり王城の塔にいるかのどちらかである。


 『城じゃないわ!あそこでサイクロプスに攻撃している飛竜!あれよっ!!』


 第2門の前で10mは有ろうかというサイクロプス達を戦闘に漆黒の軍が王都防衛軍と戦闘を繰り広げていた。そこに加勢したカオス氏は今も又1体、サイクロプスの一つ目に黒刀を突きさし暴れる巨大な魔物の首を切り落とした所である。流石に強い!


 俺は急いでJのパソコンを操作する。


 『白真の装備よ、カオスを主として敵を打ち砕け!』


 Jの体から白い4つの光が飛竜に向かって飛び出した。


 『カオスさん!Jからの支援品です!!』


 『おおおー!何だこの凄まじい力は!!勝てる!サリー、バトゥー!さっさと片付けて我が街を襲っているヒュドラを退治に行くぞ!』

 

 純白の翼を広げた神々しい白天使セイファが空を蹴るよに加速する。


 緊急クエストでPOJOの遺体を守らなくてはブラックカードボックスが敵の手に渡りワールドハピネス社はゲーム運営の継続が出来なくなる...その事を伝えたかったが、まずは目の前の敵に集中する事に気持ちを切り替えた。


 『ドラゴン・レインー!ドラゴン・サンダー!ドラゴン・ストーム!!』


 バズーカも青いサファエル装備で水龍・雷竜・嵐龍の極大呪文をぶちかます。


 零化軍は雷を受けてバタバタと倒れ、体力を減らしたサイクロプス達もセイファの流れる様な白剣の前に次々と倒されて行く。


 押されていた防衛軍も息を吹き返し敵を包囲し蹂躙する。


 『■有難う白き天使よ!』『■有難う青神の使いよ!』『■有難う美しい赤の天使よ!』


大勢は決着が付いた。防衛軍は口々に突如現れた応援に感謝を述べる。後は散り散りに逃げる敵を個別に囲って殲滅するのみである。


 『さあ、街に戻ろう!』


 『カオスさん、待ってください。実はPOJOの遺体が狙われています。それを守らないと大変な事になるんです。』


 『んっ?緊急クエスト情報なら俺も見たが…』


 そこに大声をあげて走り回る男の姿があった。その男は声の限り叫びながら未だ残党狩りの続く王都を走り抜けて行った。


 『★気を付けて下さい!死んだらデータが消える可能性があります!ワールドハピネスのサーバーがハッキングされ現在制御できない状況です!戦わずに安全な所へ避難してください!』


 『聞いたかバトゥ君!街の人を助けに行かねば!』


 『お願いしますカオスさん!POJOの遺体が盗まれるとこのゲーム自体が終わってしまうんです!!』


 『しかし、街にはギルドのメンバー達が...』


 仲間達を思いカオス氏は苦しそうな表情で空を見上げる。


 『街へは俺が行ってやる。カオスその天使装備が未だあるなら俺に貸せ。』


 その時残党狩りをしていた一人の戦士が声を掛けて来た。カオス氏はその声を聴くと嬉しそうに振り向いた。


 『ケンっ!頼まれてくれるか?!』


 『あの街の人間は俺に取っても元は仲間が多い、それにあの街の次は俺街にも来るだろうし、装備を貸してくれるなら俺が倒しに行ってやる。』


 俺はレディーJを操作して装備受け渡しの呪文を唱えようとする。


 『名前は?ケン?』


 『フルネームは”灼熱の剣”だ。後ろから見ていて気が付かなかったけど偉い美人だな。』


 思い出した!前にサリーが言っていた今は居ないギルド創立メンバーの一人だ。

 『黄賓溢れる装備よ、”灼熱の剣”を主として敵を打ち砕け!』


 剣氏の全身を黄金色の光が覆った。


 ◇

 

 その頃POJOの遺体は丁寧に梱包され病院を出た。


 馬車の周りには騎兵が20人、どれも歴戦の強者を思わせる男達が警護している。


 『■各々方準備は良いか?この特別指令には世界の命運が掛かっている。』


 クエスト案内人らしきNPCの問いかけに皆静かに頷く。


 『奪われたらゲームの存続が無くなるだなんてふざけたクエストだ、そんな事は世界大会出場者の俺達が許さん。』


  中部エリアのシバだ。他にもオイルフェンス、オモンディ、安息角、ロンドンバックブリーカーの姿も見える。

 

  一行はレイドパーティーを組んでいる様であるがメンバーは厳選してあるらしく、最大で100名以上入るPT欄は2割ほどしか埋まって居ない。しかし平均レベルは高かった。恐らく250を超えるのでは無いだろうか?カオス、灼熱の剣は居ないがそれ以外の猛者が世界中から集まった感がある。


  『■それでは、守護PT出発します。』


  シバ達が前方を固め、その後ろからPOJOの遺体を乗せた4頭立ての豪華な馬車がするすると走り出す。


  場所はアメリカ大陸サーバーの王都中央にある大病院である。

 

  後詰めの護衛が病院の大扉を全員潜る前に右側面から声が上がった。

 『来たぞ!黒ずくめの群れだ!!』


 ◇


 『おいーっっい!何だこれは!?』


 剣さんがカオスに噛みついた。


 『いや俺にもどういう事だか…』


 カオス氏はしどろもどろである。


 『…剣ちゃん、頭の天辺にう〇こが乗ってるよ?』 サリーである。


 『言うんじゃねーーー!』


 貴賓どころか下品なヘルメットが黄金に輝く天使の品位を台無しにしていた。


 『おいっ!他の装備に代えろ!』


 そう言われても、その装備は装着した本人が死亡しない限り脱げない設定になっている。


 それを説明するとますます火に油を注いだ状態になったが、剣氏は怒りながらも天使コキュートスの黄金の翼を羽ばたかせヒュドラ退治へと飛び立った。


 ◇


 『我が名は”ヤクート”零魔将軍No.2である。我が鎧と剣は冥府王に連なる系譜の魔道具である。貴様ら如き造作も無い、大人しくPOJOの遺産を渡すのだ!』

 『そうはいかん!』


 右側面に居たロンドンバックブリーカーともう一人の剣士がヤクートに切りかかった。


 ヤクートは躱す素振りも無く、その剣を鎧に受ける。


 漆黒の鎧が剣を飲み込むとヤクートのHPが一気に半分程に減った。


 『けっこいつら口ほどにも無いぜ!』


 ヤクートに黒い絨毯の様に続き攻めて来る零化教徒群を安息角がバッサバッサと切り捨てながら言った。


 『こいつら数だけでレベルが低いぞ!物量に押し込められない様に距離を持って壁を作るんだ!』


 倒しても倒しても押し寄せる零化軍兵達。


 『エレメンタリー・ヒール・ダークネス!』


 ヤクート将軍は回復を唱えると後ろに下がり見えなくなってしまった。


 20分程で敵の7割を倒し、死亡後も何故か消えない死体の山を踏み越えて残り300人程の黒い兵士達を尚を刈り取るPTはHPを2割程減らした者がちらほら見える以外は全くの無傷と言って良かった。


 『ぐぬぬぬ、かくなる上は...』


 追い詰められたヤクート将軍がヘルメットに付いているボリュームを回すとヘルメットからは赤黒い瘴気が噴き出し将軍の鎧は見る見る内に禍々しい物へと変貌していく。

 体も二回り以上大きく成り鎧武者というよりも赤黒い魔物と化したヤクート将軍の口から洩れるのは最早言葉では無かった。


 『ごぎゅるるるるー』


 ブンッっと振った腕の先には長い鉤爪が伸びて、守護PTの一人を襲った。


 剣で防御するより早くその爪は鎧を濡れた段ボールの様に切り裂き、HPを大きく削った。


 『下がれ!死んだら消えちまうぞ、誰か回復を掛けてやれ。そいつは俺がやる!』


 ロンドンバックブリーカーが助太刀に入ったが打って変わった攻撃のスピードに防戦一方である。


 『律儀に一対一でやる必要は無い、助太刀する!』


 オモンディとシバも加勢する。


 魔物と化したヤクートは背中からも生やした腕も使い3人相によく戦ったがロンドンバックブリーカーにクリーンヒットを放った後、その腕をオモンディに切られ守りが薄くなった所でシバの必殺技を食らって息の根を止められてしまった。


 『よし完勝だ!回復が済んだら前進を開始する!』


 ◇


 夜昼の街を襲ったヒュドラは暴れ疲れたのか瓦礫の山の上で眠っていた。ルビエルに空けられた体の穴も再生し終わっているがHPは残り7割程に減っていた。

 死亡を恐れたキャラクター達は一部街の上位陣達を除き避難して居ない。

 ヒュドラの通り道となった街並みは破壊され幾筋も大きな爪痕を遺していた。

 ルビエルとの主戦場になった街の広場周辺は無数の竪穴が地面に空けられ、まるで隕石の大群が襲ったかの様相であった。


 『あれ見て、何かが飛んでくる。』

 ギルド「はむすたー軍団」の副GMハム姫が瓦礫の上から飛翔物を発見しGMハム王に注意喚起する。傍らにはギルド「ラブライム」のGMラブ+と腹心アンナルージュとリーリアズ姉妹が座っている。 

 『ヒュドラに行ったわ』

 リーリアズの声にラブ+も立ち上がり目を凝らして金色に輝く飛翔物を見る。遠くてよく見えないが羽を生やした天使のようにも見える。


 『赤の天使の仲間かも知れません。巻きぞえを貰わない程度に近づいて見ましょう。』

 『緊急クエストが始まって、直ぐに零化軍が襲って来たけど守護PTが撃退したって!』

 ラジオに耳を当てていたアンナルージュが嬉しそうに報告する。

 『他の街を襲った怪獣の情報は無いかのう?』 小柄な獣人のハム王がアンナルージュにすり寄って催促する。

 『えーっと、アフリカ大陸の副首都を襲った巨大蟹は魔導師達の協力で足の半分が焼かれたって言っていましたね。』

 『炎魔法が効く相手なら良かったのに…』ハム姫がため息を付く。ヒュドラの皮膚が厚くて生半可な魔法では攻撃が通らないのだ。

 

 『ゴールデン・ハンマーーー!!』

 突如金色の飛翔体は眠っているヒュドラ目がけて呪文を唱えた。

 すると空には黒雲が広がり、月を隠し辺りは燃え残りの火災の赤色を遺して真っ暗になる。次の瞬間ルビエルの時と同じように空から無数の何かが飛来する。

 『光るう〇こだの!』ハム王が口を半開にしながら信じられないと言った風に呟いたのを聞いてアンナルージュとリーリアズ姉妹が「げえー」と言った感じで顔を顰める。

 

 直径1m長さ5mもある超重量飛翔物体は薄く光りながら次々とヒュドラへと落ちて行く。

 全長50mは有ろうかという巨大ヒュドラも金の金槌?を食らって苦痛に叫び声を上げ逃げ出そうとする。丈夫な皮膚は裂け、彼方此方骨がむき出しになった満身創痍のヒュドラは逃げながらも口からあちこちに火の玉を吐いて暴れる。


 『ゴールデン・アーッツクス!!』


 黒雲が消え、月明かりに輝く黄金の天使はその体の5倍は有ろうかという巨大斧を呼び出すと正に火の玉を吐こうとしているヒュドラの首の一本を水平になぎ狩る。


 『ゴブッ!ゴボーーーン!』

 切られたヒュドラの首が裂け火の玉の爆発で霧散する。

 『ゴアアアアー』

 残された2本の首の内真ん中の首が黄金天使に噛みついた。


 『助太刀するでの!!』

 ハム王はその小柄な体に不釣り合いな巨大ハンマーを取り出すと先の攻撃で皮膚が破られむき出しになった箇所を強打する。

 『ゴアアアアー』痛みに思わず口を開けてしまったヒュドラ。吐き出された黄金天使のダメージは測れないが直ぐに空中で体勢を立て直した所を見ると問題なさそうである。


 『『ツイン・ソーンバインド!!』』アンナルージュ・リーリアズ姉妹の合体攻撃魔法で巨大な太い茨があっと言う間にヒュドラの半身を覆い、逃げようとする怪獣を足止めする。


 『エターナル・ラブファイヤー!!』

 ラブ+の必殺技、轟炎の魔法で太い炎柱が天を焦がすと茨ごとヒュドラを飲み込んだ。

 皮膚の破れたヒュドラは炎をレジスト出来ず焼かれHPを徐々に減らす。


 『助太刀感謝する!』


 黄金天使が街のマスター同盟の傍らに降り立った時、リーリアズが小さく悲鳴を上げてアンナルージュの陰に隠れた。


 『兜の上に変な門が乗っかとるのう...』 どうやらハム王は思った事を直ぐ口に出す性格の様だった。

 ガシャンッと両手を地面に着くと黄金の天使は叫んだ。

 『俺だってこんなかっこ悪い兜嫌なんだよーー!』


 ◇


 『■速報です!極東の田舎町を襲っていたヒュドラが討伐された様です。倒したのは下品な兜を被った正体不明の飛翔剣士と街のGM連合軍で倒されたヒュドラの推定レベルはlv280と推測されています。』


 ここは隣街の酒場、心配そうにテレビを見えいた避難民達がワッと湧いた。

 

 『■速報です。中央大陸の王都を襲っていた零化教徒を名乗る黒ずくめの群が街の防衛軍に鎮圧されました。首謀者は零化将軍No.3を名乗る女性でバーサーク状態で暴れ、防衛軍と街の有志連合に多大な死傷者を与えましたが死亡が確認されています。』


 『■速報です。アフリカ大陸の副首都を襲っていた巨大蟹は討伐され巨大焼きガニが住民に振舞われています。』

 

 『さてそろそろPOJOが通る頃だ。行こう皆の者、我らの輝かしい未来のために』

 

 アニヒレイターの掛け声にデビル×××が歩き出すと零化教徒達がそれに続いた。


(つづく)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ