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ゼロ化世界  作者: ゴスマ
43/50

第41話 vs Mr.カオス

目を通して頂き有難うございます。

 「カオスさんゴメン!」

 俺は画面の前で謝りながらPOJOをオートに入れる。


 その瞬間POJOは無詠唱でディメンジョン・ポートを、しかも片足にだけ発動させ一瞬で方向転換したかと思うとそのまま真横に飛びだした。

 目標を失ったカオスさんは其のまま空中へ上昇し、ブーメランの様に弧を描きながら再びPOJOに迫った。


 『ブーン』


 POJOの姿が霞む。


 『おーと、王者ここで分身かー?これは第1回大会の決勝戦以来となるレア状態だー!』


 どうやらPOJOが分身するのは余程強敵の時だけの様だ。


 パープルレッドゴールドの鎧武者が5人全く同じ構えでカオスさんを待ち受ける。


 「かっけー…」 カッコいいと標準語にもならない呟きを持ってその様子に見とれてしまった。


 『ギャンッ,ギャギャギャッツ!!』


 激突の勝敗は王者に軍配が上がった。

 

 早すぎで目がついて行かなかったが、どうやら2振りのドラ〇ンキラーを弾き、カオスさんに3発叩き込んだ様だ。カオスさんのプラチナメイルに見事な波状痕が3本付いている。HPもぐーんと減らして6割程度だ。そうかっ!馬之助に貸してくれたオリハルコンの鎖帷子、あれを着ていないから防御が弱いんだっ!


 何とも申し訳無い気分で一杯になる。

 レンタル期間中は借りた本人が返すか期間終了まで装備は戻って来ない。あの鎖帷子は未だ馬之助が中に着こんだままであった。


 『むう、されば地上で打ち合うのみ!』


 カオスさんは諦めずに世界一硬いロンズデーライト製のジャマハダルを振るう。二振りのそれはまるで敏捷な蜂が舞う様に美しく、鋭く襲って来る。


 POJOの強さは防御スキルにある。この事を知ったのはつい最近だ。

 強力な聖剣、強固な聖鎧、lvに裏付けされた高いステータス。これら全ては防御スキルに支えられて初めて輝いてくる。無詠唱のディメンジョン・ポートから織りなす様々な回避スキルが、聖鎧をしても当たれば損傷する必殺の武器を前に全開で開花する。


 『おーーっと!初めて王者の鎧に刻まれる傷痕の数々ーー!しかしHPゲージの減りは僅か、王者必死のディフェンスで彗星の牙を捌き切るーー!!』


 アナウンサーも興奮して何だか言っている事が支離滅裂に聞こえて来た。龍の牙なら分かるが、彗星に牙なんて無いだろうに。


 『ブンッ!!!!!』


 再びPOJOが分裂した。


 今度はカオスさんを取り巻く様に5人のレッドゴールドが剣を構える。そして一寸の違いもなく同時に水平突きを放つ。


 『ブンッ!』

 

 分身が解けた時、しかしカオスさんの鎧には確かに4か所の刺し傷が残っていた。

 

 正面の王者はゆっくりと聖剣を引き抜くと、その手を高々と翳した。


 『勝者!絶対王者、Mr--PO---JOーーーー!!!』


 ◇


 続く準決勝第2試合は凄惨という表現がピッタリだった。


 聖なる装備を3つ持つ世界でただ一人の男、PKG。


 彼はユーロエリアのTOPに君臨する剣士で、その聖剣エクスカリバーはかの有名な物語から名を頂いたゲームの世界では不変かつ定番の聖剣である。

 設定攻撃力は世界一、但し所有するにはランダムで適合判別が有り最初の持ち主であった初代王者POJO氏には使えなかったらしい。この手の装備は世界大会やら記念大会の優勝賞品、若しくは大規模な討伐のレアドロップとして設定される。

 POJO氏が初代王者としてエクスカリバーを受け取ってそれが適正NGと分かった時は割とニュースになった様だ。幸いな事にPOJO氏はエクスカリバーを死蔵させる事無く、適正価格でオークションにかけた。

 2代目の所有者も適正NGでその人物は幾つかIDを作って粘った様だが駄目だった様で、とうとう手放した者を手に入れたのがPKG氏だったという訳だ。


 彼の鎧は聖鎧ガーディアン・オブ・オルフ,盾が聖盾ガーディアン・オブ・スクエア

その他ガーディアンシリーズは剣と靴、小手があるらしいが所在は判明して居ない。もしかするとこれから世に出てくる設定なのかもしれない。


 ガーディアンの名前から分かる様に、鎧と盾は強固で恐らくカオス氏の彗星パンチかPOJOの聖剣以外なら正面から受けたとしても多少の事ではビクともしないであろう。


 そんなPKG氏だが、POJO氏には連敗である。やはり攻撃を避けられ、細かくダメージを積み重なられ、いつの間にか徐々に追い詰められるという感じになるらしい。


 しかし準決勝の相手はあの馬之助である。名前がデビル×××に代わって、狂気の力でステータスを倍増させたとしてもPSが皆無の馬之助、どんな試合になる事やらと思って見ていると...。


 『オ~っとデビル選手行き成り槍先に魔力を集中させ始めたー!』


 おい、お前魔法何て…


 『■怒号魔柱馬焦光波ーーー!!』


 いたたたたっ!中二病かっ?!


 最前列に居たPOJOの目の前は赤白色に包まれ、光が収まった後には煙を出しながら燻るPKG氏とその背後1kmに渡って吹き飛んだ瓦礫の山が広がっていた。


 『救護班を!皆さん、落ち着いて下さい!試合観戦中の貰い事故はレベルダウンには成りません、死亡フラグの立っていない人で動ける人は落ち着いて救護班から手当てを受けて下さい。病院で目覚めた方は”死亡前の場所に戻る”を押して下さい!』


 PKG氏のHPが2割程減っている。鎧を無視して熱によるダメージをカウントされたのか?一方デビルのMPは殆どゼロだ、あれで打ち止めって事か。


 『PKG頑張れ!』


 しまった!思わずPOJOで応援してしまった。武台上のデビルが振り返ってギロリと睨んで来た。さすが俺のID、雑音OFFとか器用な事出来ない訳ね...。


 『■ぬううん、魔吸収』

 

 デビルが纏う漆黒の鎧からどす黒く赤い管の様な物が無数に生え、万ものワームを着込んだかのような気味の悪い姿で大きく両腕を拡げた。

 その瞬間周囲から赤い魔素の様な物がゆっくりと回転しながらにデビルに向かって流れだし、しかも見る見る内にデビルのMPが90%以上に回復した。


 『■怒号魔柱馬焦光波ーーー!!』


 げっ!今度はこっちに向かってぶっ放しやがった!!


 幸いオートモードに入直して置いたPOJOはディメンション・ポートを使って回避したが解説とアナウンサー及び多数の観客が巻き添えを食ってしまった。


 『魔法バリアーは如何したんだ!』


 瀕死の観客が叫んでいる。


 『■ゼロ化世界の幕開けにゴミ掃除だ! バリアー発生装置は我が同胞が叩き壊してくれたわ!はっはっはっはーー!』


 てか、なんでそう言う事が出来る仕組みに作るんだよ、ここの開発は何考えているんだ?


 『よそ見してんじゃねー!』


 残りHPが6割を切ったPKGが馬之助の胴に水平切りを一発お見舞いした。


 魔鎧に一筋のキラキラ光る線が走る。あれはカオスさんのオリハルコン製鎖帷子!

 しかし、次の瞬間鎧の傷痕が塞がってゆく。魔力吸収に続いてなんてチートな鎧なんだ!


 『■魔吸収』


 無防備に両手を広げるデビルに対し、縮地で距離を詰めたPKGはここぞとばかりに必殺技を集中砲火する。


 『パルメチック・ガトリングドーム!!』


 聖剣エクスカリバーが無数の剣戟となってデビルに襲い掛かる。

 高速で前後する剣山に押しつぶされるか如くデビルの鎧は穴だらけになりHPが急激に削られて行く。それでも魔力吸収を止めないデビルに対し、技を出し切ったPKGが大技直後の硬直時間に突入する。


 『■エレメンタリー・ヒール・ダークネス!』


 一瞬でHPの8割を回復したデビルは次の瞬間躊躇なく魔砲をぶちかました。


 『■怒号魔柱馬焦光波ーーー!!』


 ◇


 『ぐうっ!ヒールはその腕輪だな?!』


 PKGは一瞬でエレメンタリーヒールの仕込まれた魔法アイテムをデビルの右手首にある腕輪だと見抜いた様だ。


 『スワロー・インパクト!!』


 斬撃を飛ばし、腕輪を破壊しようと諮るPKG。

 エレメンタル・ヒールさえなければデビルが魔力回復する隙に奴の体力を8割奪ったあの大技が決められるだろう。奴の魔砲はPKG氏のHPを2割削るがPKG氏は辛うじてあと2発耐えられるだけのHPを遺す。これがラストチャンスだ。


 『■魔吸収…』

 腕輪を死守すると思われたデビルだが、まったく意に解する風も無く魔力回復に入る。


 無防備な右手首に斬撃が集中し、腕輪が砕け散る。


 それを確認したPKGは咄嗟に距離を詰めると パルメチック・ガトリングドームを放つ。彼のMPバーが1/4程グーンと減り半分を切った所で技が発動した。


 『ガガガガガガガガガッ』


 道路工事の様な打撃の音と共にデビルのHPがズンズン減ってゆくがやはり残り2割程度でPKGの硬直時間に入った。


 『■デビル・スクウェアード!!』


 魔砲を放つと思われたデビルは単純な槍術でPKGを串刺しにする。


 いや、よく見ると槍先が赤く光っている。恐らく突き刺す瞬間に局部的な魔砲を打ち込み鎧破壊を行っているのだろう。


 『はーはっはっはっ!!審判がおらんがこいつのHPは尽きた。俺の勝ちだ!はーはっはっはっ!!王者よ、明日まで待つ事は無い。このまま引き続き決勝戦を行おうとするぞ?』


 正気かこいつ?エレメンタリーヒールのアイテムを壊されて、既に残りHP2割の状態で言うか?


 悔しいがこの状態で勝っても後で物言いが付きそうだ。


 『貴様の体力が回復する明日までは待ってやる。試合が終わったならとっとと武台を降りて控室に帰るがいい!』


 『おーおー、お怒りか?怖い怖い、では遠慮なく戻って休むとしよう。』


 漆黒の武者が通ると人波が割れて道が出来た。皆デビルを恐れていた。聖アイテムを3つ持つPKGですら敗れたのだ。しかし、まだ絶対王者が居る。


 『PO-JO!POーJO!』


 いつの間にか残った群衆はPOJOコールを始め、それはPOJOが去った1時間後まで続いたと言う。


 ◇


 『奴と、奴の仲間の所為で巨大な被害が出た。それでも奴が試合に勝てば優勝者として認めると言うのか?!』


 机をドンッと叩いて激昂するのは準決勝で敗れたPKG氏である。


 『★試合結果に関してはチート性が認められませんでしたので、仕方ありません。』


 俺たち世界選手権出場者に囲まれて小さくなっているのが運営の責任者である。

 ★印が運営の公式キャラクターである印である。あの密偵はマークが付いて居なかったがマーク付きではバレるので非公式キャラで潜入していたのだろう。


 『彼の使っている装備は少し変です。その辺りきちんと捜査して頂く事も難しいのでしょうか?』


 カオスさんは俺の報告で馬之助の装備が呪われた物だと知っている。まずはその辺りを交渉の糸口にしたい見たいだった。


 『★この世界に存在する武器・防具なら何を使ってもOK、それがルールです。もちろん、耐地竜用の手りゅう弾や先込めラッパ銃など対人を想定して居ない物でもです。まあ、手りゅう弾やラッパ銃はだれも大会で使いたがりませんけどね。』


 『違法改造品であってもですか?』


 『★そうです。この世界に存在するという事はそれを使っていいという事になります。』


 おいおい、この運営大丈夫か?


 『★それに、この情報はあなた方を安心させる為にリークするのですが、彼はうちの契約社員の様でして。恐らく盛り上げるために無茶な振りをしているだけだと思われます。』


 『『『運営の社員ーー?』』』


 一同驚いた。俺も一瞬驚いたがそう言えばリアル・ジャネットに社員証作って貰っていた。


 『★という訳で、私も偉い上司から彼の邪魔はしない様にと何故か釘を刺されている次第でして...』


 という訳と何故かは文章上で共存しないぞ?


 しかし読めた。リアル・ジャネットだ。彼女が俺のIDを特定し、POJO奪回の為に動いていると勘違いして部下に誤った指示を出しているに違いない。うーん…


 彼女に馬之助が洗脳された事、裏の奴らが大金を狙い何やら悪い事を企んでいる事、潜入していた捜査官が1名危険に晒された事、そこまでうち開けて見ようか?


 突っ込まれたらどうしよう?旨く誤魔化せるのか俺??否、デビル×××を食い止める手助けをして貰う方が優先だろう。


 俺は意を決して鞄の底に仕舞っていた仮初のIDを取り出すとワールドハピネス社に向かった。


(つづく)


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