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ゼロ化世界  作者: ゴスマ
27/50

第25話 バスと湖の主

目を通して頂きありがとうございます。

 幌にBUSと書かれた古いが頑丈そうな馬車は大きな湖の畔にやって来た。


 馬車を止めると水際に生えている草の中を探す。暫くするとオセアニア毒消し草という緑色の草が採取出来た。他にも食べられる草というのが2~3取れたのでストレージの貴重な空きに格納する。代わりにストレージからはランドミサイルを出して構えながらゆっくり後ろ向きに後退するが湖からは何も出てくる気配がない。

 杞憂だったかと馬車の方を振り向いた瞬間、後ろから大岩が水に落ちた様な大きな水音が聞こえる。


 ◇


 それは太古の首長竜を模した全長10mは有ろうかというモンスターであった。

 肌はびっしりと鱗で覆われ、トカゲの様な口には牙が並びその口を大きく開けて

『ぴゅおーーん』と聞こえる雄たけびを上げる。

 こういうデカブツの弱点は頭部と相場が決まっている。馬之助はランドミサイルの聖句を唱えると頭部目がけて攻撃した。

 『行けミサイル達よ!』

 剣は輝き自動追尾で発射された5色の魔法ミサイルが地を這うよう主に接近すると急上昇して顔面を直撃する。

 爆音と共に爆ぜた頭部をのけ反らせる首長竜。その隙にダッシュした馬之助はボスの後ろに回ると湖面を背にして再びランドミサイルを構える。

 『逃がさねーぞ!お前には俺の食料になって貰う!』

 ランドミサイルを食らって尚HPの2/3を遺すこの竜はイベントモンスターに違いない。倒すと魔石に加えモンスターの肉塊がストレージの1枡に圧縮される事が多い。ストレージの肉は時間が止まった状態で保存されるという設定なので腐らない。塊のまま保管すれば立派な旅の食料となってくれる。

 敵レベルが表示されないが前ヒレの攻撃を受けた感じではレベルは高くない。低レベル用のイベントモンスターだ。後は逃がさない様にうまく刈り取るだけ、俺は2回目の聖句を唱える。狙いは頭部、肉は極力ダメージ無く倒す。

 『行けミサイル達よ!』

 地を這う5条のカラフルな煙と共に再び馬之助もダッシュする。

 ランドミサイル達が再び頭上にある首長竜の口を直撃するや否や、馬之助は二段大ジャンプで竜のヒレを足掛かりに宙に舞うと、太くて長いその首に準聖剣の切れ味を叩き込む。

 『スパッ』

 首は両断されHPバーが一気に消滅する。

 『ズズーン』

 と地面に墜落した竜の口からはポロリと中型の魔石が転がり落ちた。経験値はそれほど入らなかった様だ。あの魔石が今回の討伐報酬に違いない。

 『まあ、低レベルだったみたいだしこんなもんかな~』

 魔石と残った巨体を素早くストレージに放り込み悦に入りながら歩いて馬車に戻ると運転手であるボーイッシュ少女が俺の強さに尊敬の眼差しで見ているかと思いきや、白目になって口から泡を吹いていた...。急いで毒消し草を口に突っ込むと目が普通に戻った。危ない危ない、もう少しで手遅れになるところだった。


 『■助けてくれてありがとう!帰りは無料で乗せてあげるよ。さあ、湖の主に見つからない内に早く行こう。』なるほど通常は追い払って帰りがタダというイベントだったんだな。

 『ん?倒したぞ。全然見てなかったのか?』

 『■えっ?そんなの影も形も無いじゃない。僕が毒で気を失っていたからって揶揄わないでよー。噂では主ってレベル50の巨大な魔物らしいよ、』 

 ストレージから巨体を出して見せてやろうかと思ったがNPC相手にムキになるのも如何かと思い直した。

 その後、馬車は順調に平原を進み始めた。

 「ご飯出来たわよー。一回手を洗ってね?」

 匂いで随分前から気が付いていたが、皿の上には熱々の細切れ豚生姜焼きが炒め玉ねぎと一緒に盛ってあった。

 冷凍庫から小分けで冷凍させておいた米を茶碗に出して解凍すると二人で一緒に「頂きます」という。

 舌鼓を打ち何故か目を合わせてニヤ付く二人だった。


 ◇


 翌日、午前中はHP作成の勉強をしてお昼前にゲームの様子を覗くと未だ馬車の中の様だった。若しかしてサリーが来るかもしれないと掃除機を掛けていたのだが、昼飯時になっても来ないので今は主食の冷凍ミートスパゲッティーを解凍して食べている。

 その日は馬之助はオートのまま放置した。


 更に翌日、午前中は例によってHP作成の勉強をして昼飯時にサリーを待ったが来ないのでいつも通りの食事をする。あの紙で満足してもう来ないのだろうか?正直旨い飯が食えなくなるのが残念である。しかし破滅氏曰く心を病んでいるというサリーとの距離を詰めすぎるのは良くないので、このままフェードアウトも仕方が無いと割り切った。

 

 ゲームにログインしてログを見ると、どうやらもう直ぐ目的地に着くと言う会話が残っていた。馬之助をオートからマニュアルに戻すと暫く雄大な草原の景色を堪能する。

 遠くに見えていたエアーズロックは真近で見ると可成り迫力があった。というか近づくと目の前の視界を塞ぐだけの岩壁にしか見えなかったので少し遠くから眺めるのが良かった。

 『■助けてくれてありがとう、また帰りも宜しくねっ』

 僕っ子の運転手は手を振りながら去っていった。

 

 馬之助は門番に手を振りながら村の周囲を覆う柵に設けられた扉を潜ると木造の小屋が並ぶ人影も疎らな村内を進み、冒険者ギルドの看板を探す。


 ◇

 それは粗末な木の小屋で大よそギルドの建物とは思えなかったが、小屋の上部に掲げられている横長な板に焼き印してある盾と革袋のマークは間違いなく冒険者ギルドの物だった。


 『ごめんくさい。』

 『How smell!』


 『■何ですって?!貴方喧嘩売っているの!』

 『What? Are you serious?』 


 一文字打ち損ねただけで偉く怒られた。反応したのは中に居た30~40歳くらいのグラマナスボディーを持ったウエスタンスタイルの冒険者だった。


 『すみません、間違えました。ごめん下さいと言おうと思ったのです。』

 『■なんだ、そうかい。何か用?』

 『本部で紹介を受けてやって来ました、馬之助と言います。バトゥと呼んでください。これ、預かった札です。』


 札を出すと女性は『■私が支部長のアメリアよ。中央平原開拓村支部へようこそ、貴方で記念すべき二人目のメンバーね。』と言って笑った。


 仕事を紹介して欲しい事、手持ちの金が無く死んだときに心配なので持っている中型魔石を販売したい事、時間が有る時に原住民の村へ行って見たいという事を説明するとアメリアは快く対応してくれた。

 まず、仕事に関しては村の畑に出るジャイアントモール(巨大もぐら)やジャイアントアースワーム(巨大みみず)を退治すると小麦や紅茶、牛の乳などが貰える。牛の乳は金を払えばチーズに加工してくれて、それらを1週間に1回来るメアリーの姪っ子であるリリー(例の毒で白目を剥いた例の馬車の運転手である。)に渡すと王都で販売して手数料を引いた金額を次の便で持って来てくれるというシステムらしい。


 来る途中に入手した魔石を見せてこれをお願いできるかと聞いて見た。

 『■そんな立派な魔石、王都で売ってから来ればよかったじゃないの?』

 『来る途中に入手したんですよ。』

 『■またまたー、この先なら別だけど街道沿いにそんな強いモンスターは出ないわよ。』

 残念だ。NPCでなければこの場で湖の主の死骸を出してビックリさせてやるのに。


 『■原住民の村へは月に1回村の役員さんがお土産を持って訪ねるからそれについて行けばいいわ。ちょうど明日よ、役員さんの家は二つ隣だから後で言っておいてあげるから。』

 『原住民の村に都会からやってきた人は居たりしますか?』

 『■あら?もしかしてレディーJに会いに来たの? 貴方も学者さん?それとも恋人かしら?』

  ビンゴ、どうやら目的人物は原住民の村に常駐しているらしい。

 『いえ、ギルドの上司から有って物を渡す様にお願いされただけですが。その方は学者さんなのですか?』

 『■そうよ? 高名な学者さんらしいから都会では有名なんじゃないの?』

 うーん、白衣に眼鏡か。それともピチピチの探検服に眼鏡?会うのが少しだけ楽しみになったぞ。

 『いえ、外国から来たのでオセアニアの事には疎くて。色々教えて頂けますか?』

 そういうとアメリアは目をぱちくりさせるとニカッっと笑った。

 『■じゃあ、ここで女性を訪ねる時の手土産のマナーから教えてあげるわ。』


 ◇


(つづく)

How smell... 英語的に如何なんでしょうね?詳しい方教えてください。

 これが上限一杯一杯レベルのギャグセンスで本当にすみません><

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