第21話 POJO氏の依頼
目を通して頂きありがとうございます。
海外セレブ、ゲームの頂点POJO氏の打ち明ける事実に俺とカオス氏は驚愕する。
『うむ、実はある海外の銀行がクラックされ口座から大金を盗み取られるという事件が発生したのだが、その事件にわが社が関わっているというのだ。』
国際電子盗賊組織にF.B.I。
もう気分は海外ドラマである。
『しかし、どうやって?』
『わからんがクラックされた銀行からは全世界から一斉にアタックがあったらしい。送信元は隠蔽されていたらしいが、どうやらF.B.Iはわが社のゲームシステムがその片棒を担いだと疑っているらしい。もちろん私の預かり知らぬことだ、現在極秘に犯人を捜しているが中々尻尾が掴めない。』
『それと俺のブラックカードボックスと何の関係が?』
『それはβ版でしか存在しないアイテムだ。しかし、F.B.Iはそのアイテムを不正使用していた人物をマークしていた。実際ブラックボックスカードのアイテム説明を求められたりもした。その後彼は失踪した。』
『?意味が分かりません。』
『カオス君、バトー君。ブラックカードボックスを取り返すのに協力してくれ、きっと逃亡した元社員に繋がる情報が得られると思う。もちろん事件が解決した暁にはクエスト達成報酬として聖剣と失われたゲーム通貨の補填を約束しよう!』
えっ?くれるの?やる! やるやるやる!
どこぞのおばちゃん見たいだって? いいじゃん、生きる為に少しでも貰える物は貰って置く、これは知恵だよ。
ゲーム内ではリアルの石油王近い身分であるPOJO氏とガッチリ握手をする一般ピーポー馬之助、傍らではカオス氏が羨ましそうにしていた。大丈夫、仲間はずれになんてしないから。
『捜査にこちらのカオスGMのご協力を仰ぎたいと思いますが、宜しいでしょうか?』
『勿論だとも、Mr.ケイオス。貴方はオセアニア地区のトッププレイヤーと伺っています(注:アジア地方の勘違いです。)ぜひゲーム存続の為ご協力下さい!』
カオスさんが感動でプルプル固まっているのを始めて見た。
あれだよな?憧れ何だろうな? そう言えば装備とか何つけているんだろう、世界一の人って? 流石に聞いちゃまずいかな?何て思っていたら熱烈なファンらしいカオス氏が勝手にPOJO氏の装備を褒め始めた。
『Mr.One(王者への敬称)、貴方の持つ聖剣シノマロムナは攻撃力1000越えの代わりに使い手を選び、下手なステータスでは持つ事も出来ないとか?』
『ケイオス君、その通りだ。これは特殊な武器なのだ。』
『世界にはその様なユニークな神具が沢山存在するのでしょうか?』
『うむ、聖の冠が付く装備は大陸の数の12倍だけある。私が持つのはこの剣のみだが、世の中には3つの神具を装備する強者もいる事は確かだ。』
‥‥基本〇戯王の極レアカード談義と何も変わらない気がするのだが、二人共楽しそうだからそっとしといてあげよう。
そーとフェイドアウトして部屋をでるとサリーが居た。他にも沢山POJO氏を一目見ようと集まっていたが、サリーだけは違って目的は俺の様であった。
『馬ちゃん、ちゃんと晩御飯食べた? 一人で寂しくて仕方が無かったら又行って作ってあげるよ。』
お前は何処のお節介女だ?
それを聞いた居並ぶギルドメンバーもざわざわと湧きたつ。
『もう、遅いんで落ちます。おやすみなさい。』
『あっちょっと待った。』
サリーに呼び止められた。
『ほいっ お休みの ちゅっ!』
あちゃー!何考えているんだこのババアは!このゲーム内でそんな無駄機能を使うのはコイツくらいである。そして男女関係に縁の薄いこのゲーム内でそのような一見リア充の行動を連ねるとどうなるか?
『おうおう、バトゥさんよう! 最近メキメキ腕を上げているようだが、ちょっとイチャイチャしすぎなんじゃないの?』
見知らぬギルメンだが恐らく隠れサリー親衛隊なのであろう、腰布一丁にメリケンサックと言ったネタ装備の筋肉禿がいちゃもんを付けて来た。
『ええっ! 私の為に争わないで!!』
うっさい!ババア、寧ろお前が原因だ!
◇
◇
逃げる様にログオフして、布団の中でPOJO氏の言った事を思い出していた。
『ゲーム存続の為に強力してくれないか?』
別にゲームが無くなっても痛手では無い、しかし仕事が無く世間から見放された感じの寒さを感じる今日、誰かに必要とされた事がすこしだけ嬉しかったのだ。
(つづく)




