第13話 耳オークション
目を通して頂きありがとうございます。
夜に再度ログインした。
サリーが既にログインしていたのでアイスタートル狩りへと誘う。
夜の早い時間だったからだろう、既にアイスタートル達は4匹全て戦闘中だった。
戦闘が終わりそうな所の周りで大人しく座って待つ。
「他の人から見える名前の表示を希望の文字に変える巻物って何処で売ってるかしらない?」秘話モードでサリーに聞いて見る。
「■私サリー宜しくね。」 うわあ、離席中だ。
「AIモードのマークを偽って入力する方法って聞いた事ない?」
「■うっせーなあ」
「犯罪者の集団に属して居たら犯罪者になると思う?」
「■あん?」
俺も離籍して翌朝様にナンを準備した。20分程で戻ってきたがやっと目の前のアイスタートルが倒された所だった。
”ずしーん”
重々しい地響きと共に氷と水晶で出来た大亀が地面に沈むと派手なエフェクトと共に盾が現れた。あれはアイスタートルの堅盾、お宝だ!
『マジかよ冷盾だしやがった。』
『畜生、一攫千金じゃねえか上手くやりやがって』
周りの会話が熱い。
『お立ち並びの諸君! 冷盾はギルド ”ハムスター軍団”の若手ホープ、この”腐乱犬スタイナー”がゲットした。突然だがここで耳オークションを始める、金額は8,000万ゴールドからだ!!』
えっ?安!?適正外価格の税金どうなるの?!
俺が掛け声を上げようとすると其れよりも早く周りから次々に声が上がった。
『9,000万!』
『1億!』
『1億2千万!』
『1億2千5百万よ!』
最後の女性はサリーだった。秘話モードで聞いて見る。
「なに参加してるの?サリーは魔導師だから盾使えないでしょう?」
「■ばーか!安く買えたら転売するに決まってるじゃん。」
えっ?AIなのーー?普段の行動どんだけなんだよっ!それに適正外税金が...
『1億3千万』 しかし俺も参加した。
金額は徐々に上がり2億5千万辺りで小刻みなった。
『3億!』 俺の渾身の一声、どうだ!
沈黙が耳に痛い。
『はい、3億が出たのでそこまでー。そちらのフルミスリル仕様の若旦那に決定ー!』
「ちょっとあんた、それだと適正価格そのままだから多分転売できないよ?」
戻って来たサリーからの忠告は聞くがこれは転売目的ではない。いざと言う時の為の保険である。
『お金持ちの若旦那、はいこれが商品だ。』
さっきから随分とお金持ちを連呼されるが何故?秘話モードのままサリーに聞いて見る。
「この盾って買う人少ないの?」
「少ないねー。買おうって人は普通みんな転売目的だと思う。2億5千万以上はそれ以上で売れる確証もないから皆手を引きかけていたでしょう?」
ふむふむ
「この盾防御力が凄いんだ。なぜ買う人が少ないか知らない?」
「それ修理費がバカ高くてコストパフォーマンスが悪いからよ!盾役って大概高い盾買ってビンボーが多いから修理費の安い方へ流れるの!」
がーん、修理費が高いのか!
ふと自分のニックネーム欄を見るとさっきのフラン氏から”ボンボン”というニックネームが付けられていた。くそっ!
また暫く話しながら待って1時間もすると皆立ち上がって武器を構え始める。
中には何もない地面をブスブス突き刺す槍使いも出だした。
恐らく空間に出現した瞬間を捉えようということなんだろう。
俺も真似して少し離れた所でハルバートを振り回す。
「あたしは魔法で誤射すると拙いからファーストアタック争奪戦には参加できない。馬ちゃん期待してるね?」
『出たぞ!』
何処かの魔導師が叫んだ。
振り向くと獣人と忍者の様な格好の人が向こうで一斉に飛び掛かっていた。
◇
こうして1回目の場所取りは失敗に終わった。
他の連中が8割がたぞろぞろと移動する。
移動した先は既に戦闘が終わった場所。戦闘を終えたPTが座って次を待っていた。
『よう、どうだい調子は?』
『向こうでハムスターのフランケンが冷盾を出して金持ちが2億6千万で落札したよ。』
『ひゅー、適正価格かい?金持ちだな、どこの盾役だ?』
戦闘を終えて座り待ち組と談笑するPTにカーソルを当てて見ると”光速剣スイング”,”魔道狼バン”,”アラクネフィール”,”炎上”,”守備キャッチャー”,”へんたいおじさん”,”七大罪”の七人PTだった。
「七大罪はサービス開始暫くの間は上位ランキングに乗った事もある有名人ね。ギルドトーナメントで1回試合をした事が有るわ。奴の使うガリアンソードは魔法をキャンセルする効果があって魔導師泣かせなの。暫く見なかったから引退したのかと思っていたけど復帰したのね。そうそう何人かは自称ニックネーム表示している見たい。アンタが聞いてた表示変更の巻物は街の南東にある古ぼけた”イッソス”ていう魔道具屋さんで買えるから。でも知ってるとは思うけどPT組むと本名も一緒に表示されちゃうよ?」
良い事を聞いた。ぜひ帰りに寄って見よう。
結局2時間粘ったが一度もファーストアタックを取る事は出来ずイソイソと帰って来た。
◇
翌日
『何だバトゥ、うちの運転手やる気になったのか?!』
ちょっと試しに消そうと思っていたニックネームと同じ名前で巻物を使ったのでこうなっている。
『なんだ、うちの付けたニックネーム気に入ってくれてたんだ。』
サリー、それは違う。このニックネームは用事が済んだら速やかに削除されるのだ。
スーパーさんが夜勤で居ないので模擬戦はせずに街へ出る。
地下道への入口が隠された粗末な小屋から地下道に入るとそこに何時もの黒ローブを発見する。
『こんにちは、今日はワインとパンを持ってきました。マスターにお渡し頂けますか?』
『マスターは今お眠りです。私からお渡しして於きます。』
俺の感では此奴がマスターと同一人物の可能性大だ。
「取り合えず勝手に侵入と言う線は難しそうだな。」 微レモン水を飲みながら呟く俺は考える。しかし直ぐに考えに詰まり思考は別方向へ。近所の激安スーパーで卵とプレーンヨーグルトを400円で購入しナンの製作に取り掛かる。
面倒なので大目に作って冷凍する。
イーストとぬるま湯を注ぎ1次発酵に2時間程放置する。その間にゲームに戻った。
◇
ギルドに戻るとカオス氏が居たので聞いて見た。
『カオスさん、今度のオークションでもランドミサイルは出店されますか?』
カオスさんは嬉しそうに『興味あるのかい?』と言った。
『アンタ!あれ50億もするのよ?そんな金が有ったらRMTで現金化しなよ?今相場が1億で5千円くらいだから1月遊んでくらせるよ?』
残念でした、余裕で3か月行けます。
『サリー、他は何でも有りのこのゲームでもリアルマネーとの取引は厳重に取り締まられていているのは知っているだろう? バレたら速攻でアカウントロックされる、ギルドメンバーに勧めるのはちょっと。』
おっ、カオスさんのGMらしい発言に珍しくサリーが素直に謝っている。
しかし1億ギールが5千円か...あれ?3億の盾って俺の1か月の食費か?
黙りこくる馬之助にカオスさんが優しく声をかける。
『バトゥ、本気で買う気ならオークションまでの3日間貸してあげるよ?システム上少しだけ費用が掛かってしまうけど安い買い物じゃないし、使って見て気に入った物を買った方がいいだろう?』
カオスさん良い人だー。
(つづく)
筆者はネットオークションとか目的の物を買えた事ないですね。何時も誰かに競り負けます。




