第9話 上位ランカーの実力
『こんにちわ、スーパーさん。今日模擬戦しました?新しい武器を試したいので一度本気モードでお願いできませんか?』
『バトゥが5分持たない方にワニ串を1本掛けるよ?』
どうやら格下相手にも真面目に試合って頂けるらしい、彼は優しい紳士なのである。
フル装備で挑んで貰った試合は当然Lvが140もあって街のTOP集団であるスーパーさんに一方的に殴られる会になった。
というか、殴り合いにも成っておらず此方の攻撃は通らずダメージ表示は0~20、如何やら火属性攻撃が半分弱通っているだけの様子に加え、先方の攻撃は1撃当たると此方の体力をゴッソリ持って行く様な無理ゲームだった。馬之助は大楯を構え隙を見て攻撃すると言う消極的な試合にも関わらずスーパー氏の宣言通り5分持たずに倒されてしまったのだった。
因みに盾を使うと攻撃時に”盾を下げる”→”剣を振りかざす”→”攻撃”と2アクション多く必要で、その分避けられる可能性が増える。というか格上だと99%避けられるというデメリットしか残らなかった。
試合が終わり礼を言いながら装備の違いを聞いてみると親切にも全部教えてくれたでは無いか。
彼の防具は全てプラチナ製、色を見てそうだろうと予想していたのでやっぱりかと納得する。このゲーム内でのプラチナ素材の特性は硬くて火抵抗が高いという点である。勿論値段も目が飛び出るほど高いはずだし、そもそもこの街では売って居ないので入手不可能である。
彼は時々西の都へ行き競売に出されたプラチナ装備をコツコツと買い集めたそうで、艶消し表示をしても尚光り輝く彼の外装は貴金属の輝きだったのである。
驚いた事に彼の武器であるプラチナスピアーと馬之助が新調したミスリルの大型ハルバートは攻撃力が同じであった。(勿論手数に雲泥の差がでるが)
それでも被ダメージに大差が出た理由に関して、攻撃力-防御力の値が300より小さいとダメージが極端に少なくなるらしい。加えてレベル差と俊敏・運の差補正で此方の攻撃力は当たり補正がマイナスというか、攻撃力評価が8割ほどに抑えられる様で物理ダメージが殆ど通らなかったのだろうと解説された。
因みにフィールドでのボスキャラ戦場合は相手に1.5倍の攻撃補正が付くらしくて注意する様に教えて貰った。lv155のサソリボスの通常攻撃は大楯なら耐える事が出来たので、サソリボスの通常攻撃力はスーパー氏よりも可成り低いという事が予想された。
『聞いても仕方のない事なんですけど、因みに攻撃力表示って御幾らくらいですか?』
同じ攻撃力+70の武器で馬之助は攻撃力表示が700,一方スーパー氏は900越えだった。これはレベルと腕力の値の差に加え攻撃力増加が付与された指輪等アクセサリー装備の有り無しも関わって来る。
因みに火抵抗や攻撃力付与の指輪は人気の品で数多く出回っているのだが、その数値が1%変わるだけで価格が倍になっていくという噂を聞いた事が有る。低数値で良いから指10本用に指輪を購入する事を頭の中にメモする。
2回目の模擬戦もスーパーさんにお付き合い頂き、但し2回目は昨日迄と同じように防御力の低い装備で手加減して貰い勝利を獲得すると馬之助のlvは目出度く102に上がった。
このレベルに成るとフィールドボス以外では殆どlvが上がらなくなるのでギルドに入って本当に良かったと思う。
その頃になると副GMの破滅さんとサリーちゃんもログインして隣で模擬戦を始めたので、終わるのを待ってレベルの近いサリーちゃんをアイスタートル(ボスモンスター)狩りに誘って見た。
『きょほほっ デートのお誘いなら大歓迎。』
デートじゃ無く狩りなのだが其処は華麗に無視して二人でアイスタートル狩りへ出かける。
出かける前にちょっと露店回りにお付き合い頂き、低数値の火属性強化が付与された指輪を買いあさる。9個のトータルで火強化が12%となった。
『安いの買っても使わなくなるから結局勿体ないよ?』
とアドバイスされたのでキチンと肝に銘じておいた。
さて、アイスタートルの出没エリアは可成り遠い北にあるのだが、ギルドのテレポート機能の出口達とは全く離れた場所なので移動には時間が掛かった。帰りは一瞬で帰れるアイテムを持って来ているのだがフィールドへのテレポート機能は今の所実装されていないので近くの町まで有料でテレポート後、わざわざ犬ぞりを借りて走らせる。
いた!アイスタートルだ。予定より随分手前の針葉樹群に隠れていた。
その名の通り白っぽい氷の様な甲羅を持っていて皮膚にもクリスタルの結晶が引っ付いている。
『盾役お願いなのね!くらえ、ファイヤーランス!!』
馬之助が大楯で体ごと突っ込み敵の脚を止めるとそこへサリーが放った炎のが5本突き刺さる。
『あっぶねー、もう少しで俺に当たる所だった。』
妙な仕様だらけのこのゲームであるが実はフィールドで戦闘中に味方の攻撃を食らってもダメージを普通に受けてしまう。そういう意味で間違って味方を殺してしまって賞罰の”キラー”称号が付いてしまった可哀そうな人達も存在する。特に魔導師など高火力範囲職に多いと聞く。
そういう人は協会の懺悔室へ被害を受けた相手と一緒に入り、本人へ懺悔をする事で3回まではキラー称号が消せるという機能がある。
『私3キラ消しだからもうヤバいのよー!アンタ私と組むなら火抵抗150%装備にしなさい!』
来る前に言ってよー。
火抵抗-150%のアイスタートルは炎の槍を体に受けるとダメージ表示をポップさせる。
5つ共に500~600の間、良いダメージである。しかしHPゲージは未だ1%も減っていない。
魔物が怯んだ隙に馬之助も攻撃させて貰った。
打撃のダメージは10~15程、炎攻撃のダメージが100程で合計110~115程度のダメージだった。打撃が思ったより低いのは自分よりレベルの高いボス相手に補正でマイナスされているのだろう。
『これは長帳場になりそうね。』
『流石にF.F.Bは無いんですねよ?』
『あれは未だこの子には無理ー!』
アイスタートルの突進を大楯で受け止めた馬之助が吹き飛ばされてHPゲージを減らす。すかさず立ち上がり再度盾を翳して突進する。今度は旨く足止め出来た様だ、押し合いながらこっそりとHP回復薬を一口飲んだ。
5分も経過した頃、戦場近くに大柄な虎亜人と小柄なケットシーの凸凹コンビが現れた。
観戦かな?と思っているとサリーちゃんの方へ参戦申し込みが入ったらしい。
サ:「どうする?」
馬:「ご助力頂きましょう」
秘話モードで打ち合わせして彼らと共同で目の前のアイスタートルを倒す事にした。
(つづく)
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