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第7話「嗜虐心」
「それでは、夢の話を」
「不愉快な夢でした。私は椅子に麻縄で縛られて、尋問を受けさせられていました。一切、身に覚えがありませんでしたので、冤罪だと主張しました。しかし、憲兵は聞く耳を持ちません。端から、私が犯人であると決め付けていました。憲兵は、私の足にバターを塗って、それを犬に舐めさせてみたり、顔にミルクを掛けて、仔猫に、それを舐めさせてみたり、両手足の指の生爪二十枚をはがしてみたり、やっとこで上下左右の臼歯十二本を抜いてみたり、両手首、両足首を、力任せに脱臼させてみたり。まぁ、少ない脳味噌を絞って、思い付く限りの拷問を行いました。それでも私は、そんな野卑下劣な憲兵には、絶対に屈服しないという姿勢を貫きました。憲兵が望む偽りの自白をさせられるくらいなら、獄死したほうが何倍もマシですから。最後に、ガスマスクのようなものを付けて戻ってきた憲兵に、茶色のビンに入った液体を嗅がされて、意識が朦朧としたところで、目覚めました」
「そうですか。それでは、よい旅を」
「もっと愉快な話を、お聞かせ出来れば良かったのですが。ご機嫌よう」